『社会的共通資本』
宇沢弘文:『社会的共通資本』、岩波新書、2000年初版
著名な経済学者である著書は、都市・金融・自動車・教育・農業・地球環境等々に共通点を見いだしている。
これらは、手を触れることのできる存在であったり、眼に見ることのできない制度であったり、人間の営みであったりと一様ではない。森林や林業もこれらと共通点を持つ。
その共通点とは社会を存立させる基盤として機能している何かであるという点だ。こうした存在を著者は「社会的共通資本」として認識することの重要性を説いている。
わが国を含む多くの国々が自由経済を基本とする資本主義体制の国家であり、それゆえに様々な恩恵をわれわれは享受してきた。一方で、現在の社会は様々な矛盾や問題点を抱え込んでいる。福祉・教育・健康・自然環境などを軽視することで生まれる荒廃や混乱である。これらはいずれも経済行為になじまない諸々である。
こうした現代社会が抱える多くの問題の解決のためには、経済行為になじむものにも、なじまぬものにも、価値を認める社会が求められる。
森林はなぜ守らなくてはならないのだろう。
農林業はなぜ必要なのだろう。
そんな問いに対する解答を提示してくれる一冊だ。
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