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2007年7月 4日 (水)

『山びとの記』

20070704yamabitonoki 宇江敏勝:『山びとの記―木の国 』、中公新書、1980年初版

木挽きの祖父と炭焼きの父を持つ著者もまた、植林、伐採を行う林業労働者である。

農村からは優れた農民文学の担い手が数多く輩出されたが、山村からは見受けられない。
こういったあたりにも、山村文化を考える糸口があるのかもしれない。

著者は山村が輩出した異色だが一流の物書きである。
自身の経験をもとに、そこに住む者にしか見いだすことのできないであろう森林(やま)の文化を綴っている。
気負いのない、実に淡々とした筆致で熊野の森林での生活が活写されている。

戦後わが国の林政は、林家(=山林所有者)を日本林業の担い手と措定し、種々の政策を展開してきた。そのこと自体には説得力のある説明も与えられるが、山林を所有しない林業労働者に関する無策は、やはり反省すべき点であろう。
近年になり、林業労働力の確保に関して泥縄的に取組が開始されはしたものの、遅きに失した感が拭えない。
こうしたなかで注目されるのが「森林ボランティア」であるから、どうしても胡散臭さを感じてしまう。

市民による森林づくりの本質はどこにあるのだろうか。
林業労働者の手による力みのない記録は、これからの活動を考えるうえで欠くことのできない価値観を我々のなかに芽生えさせてくれる。

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