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2007年8月15日 (水)

スミナガシ

20070815suminagasi

 下刈りの合間に昼食をとろうと日陰を求めてコナラの林に入った。握り飯を頬張っていると、地味だけれども存在感のある蝶が羽を開閉しながら樹幹にとまっているのに気がついた。タテハチョウの仲間のスミナガシだ。
 水面に墨をわずかに落とすと様々な模様を描く。小学校の低学年か幼稚園に通っていた頃だったと思う。それを半紙に写しとって不思議な模様を楽しんだ。「墨流し」といわれるこの遊びは、紙や墨が稀少であった時代には宮廷における極めて贅沢な遊びだったようだ。
 スミナガシという名はこの遊びから名付けられた。光線の具合によって青緑色の落ち着いた光沢が墨色の体を彩り、上等の絞り染めの模様のようなぼけ具合の白紋が墨を際立たせている。タテハチョウの仲間は羽の表裏に全く異なった模様・色彩を持つものが多いが、本種は表裏ともに落ち着いた色彩を持っている。いぶし銀のような体の中で、樹液を吸うためのストローのような口だけが唯一濃い緋色をしている。地味な装いの裏地にだけ洒落たあしらいをする粋人のようだ。
 もっぱら樹液を吸う蝶で、雑木林のなかを優雅に飛んでいる。草原の蝶は体温の過上昇を防ぐために明るい色彩をしているという説がある。逆に、地味な体色は太陽の熱を効果的に集める工夫だ。成虫の出現期は5月から8月と、気温が高く樹液流動の盛んな時期に限られる。スミナガシを眼にすると植林にはもう遅い。枝打ち・間伐はまだ待たなければならない。大鎌を振るう季節がもう少し続きそうだ。

20070809 NIKON D80 105MICRO

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