『木造建築を見直す』
坂本功:『木造建築を見直す』、岩波新書、2000年初版
わが国における森林の保全を考える際には、やはり林業を見つめる必要がある。
木材価格が低迷する昨今にあって、「林業」を森林を活用した総合産業であるというように拡大解釈すべきであるとするむきもある。
しかし、やはり林業の本体は木材生産にある。木材は我々の生活の衣食住全てにわたる局面で驚くほど多様な利用をされてもいるが、やはり、質的にも量的にも、建築用材としての利用が中心である。
川場での森林づくり活動も人工林の管理・保全を目的とした活動を多く含んでいるので、木材の生産を常に視野に入れておく必要がある。自分たちが管理にたずさわった森林から生み出された木材がどのように流通し、利用に供されるのかを知っておくことは、森林づくりの方向性を決める上で極めて重要なことだ。
1995年1月17日に阪神・淡路地方をマグニチュード7.3という途方もない地震が襲った。死者6,434名、行方不明者3名、負傷者43,792名という甚大な被害をもたらすものであった。
そして、この震災は林業・木材界にも看過できない影を落とすことになった。「木造建築は震災に弱い」という風評被害とさえいえるイメージの流布である。
木造建築は本当に震災に弱いのであろうか。だとしたら、地震大国であるわが国になぜ木造建築が根付いたのであろうか。
本書では、木造建築の有利性・不利性を偏らずに説いたうえで、木造建築に明るい希望を提示している。
木造建築という文化について、もう一歩深く知るための好著である。
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