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2007年11月 8日 (木)

『杉線香の話』

20071108sugisennkounohanasi 柏順子:『杉線香の話-片隅に残る伝統産業』、筑波書林、1980年初版

地方に出かけると、できるだけ小さな本屋を覗くようにしている。
大手の取り次ぎを通さないような小さな版元が出版した、地域限定の本が書架に並んでいることが多いからだ。書き手もまた地域の人であることが多いし、書かれた内容も地域限定で、ネット上を検索しても見つからない本が多い。
玉石混淆であることも確かだが、売れ線を狙わない丁寧なつくりの本が見つかるのもこうした中からだ。
本書も、まさにそういった一冊だ。

「杉線香」というのは、なにも特殊な線香ではない。仏前に供える、ごくごく一般的な線香のことである。
線香は杉の葉に香料などを混ぜてつくられる。

本書には、線香の製造方法から、製造業者の技術伝承の系譜、原材料である杉の葉の収集方法から加工方法、そして、この産業の将来展望に至る広範な内容が盛り込まれている。

わが国の木材産業の斜陽化には様々な背景があるが、均角の木材のみが市場性を保ち、それ以外の多様な利用方法が、代替材に圧されたことも大きな理由となっている。
身の回りを見渡すと、実に様々なところに樹木に由来する物が使用されているにもかかわらず、わが国の林業家の多くは柱材生産に固執する。

「バイオマス利用」などとわざわざ洒落た言葉を使う必要などない。
わが国では、もともと木を余すところなく使ってきたのだ。
森林(やま)づくりを進めるにあたって、古くから伝えられてきた森林のめぐみを利用する知恵から学ぶべきことは多い。

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