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2007年12月13日 (木)

『里山を歩こう』

20071212satoyamawoarukou 今森光彦:『里山を歩こう 』、岩波ジュニア新書、2002年初版

ジュニア向けといって侮るなかれ。岩波のジュニア新書シリーズは名著揃いである。
本書もその例に漏れない。

著者の今森氏は、東南アジア諸国を中心に世界を撮り歩く写真家であるが、決して珍しい物好きの海外信奉者ではない。
わが国の自然と人々の暮らしの接点に暖かい目を向け続け、素晴らしい写真と文章で綴られた多くの著書を上梓している。

本書も、そうした氏の著作のうちの一冊である。

書名のとおり、「里山」をキーワードに全編が綴られているが、そのバランスが見事である。

滋賀県大津市の仰木という集落を舞台に、里山の生物のこと、棚田と里山のこと、集落の伝統と里山のこと、河川と里山のこと等々が充分にして簡潔に描かれている。
そして、最終章は、里山は懐かしい風景ではなく、未来の風景であるという提言で結ばれている。つまり単に、ノスタルジーの世界ではなく、里山と、その存在を支える人々の生活や生産の姿こそが目指すべき姿であることを強調している。

悲観的なだけの農林業論でもなく、徒な楽観論でもなく、きちんとした目線で捉えられた里山を描き得るのは、著者自身の生きる姿勢の賜物だろう。

近い将来、川場を舞台にしたこんな一冊を世に出したい。

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森林づくりお薦めの一冊(新書)」カテゴリの記事

コメント

こちらこそ、森作りを身をもって実践されている方に、色々ご教授いただきたいと常々思っていますので、是非そのような機会を持ちたいですね。

投稿: BigDipper | 2007年12月14日 (金) 17時49分

BigDipperさん

コメントを頂戴し感激しております。
私の雑駁かつ表面的な書評をがっしりと支えて戴きありがとうございました。

川場の、そして利根沼田の里山や農村風景も琵琶湖周辺に決して劣るものではありませんね!とても魅力的なフィールドだと感じています。

一度お目にかかり、様々お話をうかがえる機会をいただければ幸いです。

投稿: くま | 2007年12月13日 (木) 10時08分

私も同書を持っています。書籍の舞台となっている琵琶湖周辺、とりわけ湖北の農村部の美しさは見事ですね。

氏の海外経験の主たるものは若い頃のもので、昆虫少年だった少年時代と、先の海外放浪の経験から日本の里山へと導かれたようです。大きなテーマの中に関連して小さなテーマ..さしずめ小宇宙のような..をちりばめる手法は、故星野道夫氏と同じで、永くに渡ってフィールドで活動し、また根を下ろしたものでないと、テーマの持つ奥深さを表現するのが難しいものです。氏の写真を眺めていると、見たことがあるようでいて、実はそこまでは見てなかった..と思わせるものが多く、表現者として見習わなければならないと思っています。

余談ですが、私もこの10年、水が豊富で稲作の盛んな川場の里山と、それを支える武尊山麓の森をテーマに撮影を進めています。里山の一環として森が利用されてこそ、人と野生動物の共生または共殺が輪廻すると、明治以前の生活史がそれ証明しており、その辺りを何とか表現したいと常々考えています。

投稿: BigDipper | 2007年12月13日 (木) 08時34分

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