『ナラ枯れと里山の健康』
黒田慶子:『ナラ枯れと里山の健康 』、全国林業改良普及協会、(2008年初版)
カビの仲間が引き起こす“ナラ枯れ”が全国的な問題となっている。
カシノナガキクイムシ(通称:カシナガ)が菌を媒介し、ミズナラやコナラなどを罹患させる。
この病気にかかると、夏だというのに、急に葉を赤くして枯れてしまう。
1980年代以前は、山形県などの限られた地域にしか認められなかったこの樹病が、このところ急速にその範囲を拡大している。
この樹木の病気は、大径木を中心に集団的な枯死をもたらすために、里山管理を実践するメンバーの中では大きな心配事となっている。
幸い、現在のところ関東地方からは発病報告はなされていないものの、福島・長野・新潟・愛知など、関東を取り巻く地域では発生が認められているため、対岸の火事として安閑としていることはできなさそうだ。
里山は、人間の生産と生活のなかで形成されてきた森林だ。
人間が利用することで、常に小中径木が優占し、再生が図られてきた。
そうした森林を人間が利用しなくなったために、被害が甚大化しているようだ。
川場村にも多くの里山が存在する。
私たちの森林(やま)づくりでも襲来が予想される状況に対処していきたい。
本書では、森林総合研究所を中心とする研究グループが、事の緊急性に鑑み、研究途上の情報まで含めて発信してくれている。
内容も、“ナラ枯れ”の発生機構から、里山管理の指針にまで至る実用性の高いものとなっている。
森林(やま)づくりに関わるメンバーには一読をお願いしたい一冊だ。
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