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2008年9月の22件の記事

2008年9月29日 (月)

川場村の哺乳動物(2)

20080929jidousatueisouti

9月8日から28日までの20日間で自動撮影装置がとらえた哺乳動物たち。
アナグマ(左上)、テン(右上)、ホンドギツネ(左下)、タヌキ(右下)。
この他にもイノシシやハクビシンなどが写っていた。

こうしてみると、多くの動物が同じ獣道を利用していることがよく分かる。
雑食のものを含めて、他の動物を餌とするものが多いが、彼らの存在が明らかになったということは、ネズミなどの被捕食者の存在も裏付けることになる。
しかし、そうした動物が未だに撮影されないということは、同じ獣道を利用していないのか、あるいは、小型の動物をセンサーが感知しないのか、今のところは結論を出すことはできないが、じきに明らかになっていくだろう。

多くの動物の生息を可能にする豊かな森林(やま)は、動物たちが里や農地に出て、人間との軋轢を生むことを防ぐ防波堤の役割を果たす。
人間と野生動物の不幸な接近遭遇を未然に防ぐことも森林(やま)づくりに期待されている。

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ニホンカモシカ

20080929nihonnkamosika002
20080929nihonnkamosika001

ヒロイド原から“なかのビレジ”に向かう途中で森のむらの方を見ると、何か灰色のものが目についた。
なんと、よく見るとニホンカモシカが2頭、こちらの方を凝視していた。
あわててカメラを取り出して、そろりそろりと近づいたが、こちらを気にはするが、草を食んだりもする。
何枚かシャッターを切りながら最終的には20m程の距離にまで近づくことができた。

あらためてじっくりと観てみると、一頭は未だ角がこぶ程度にしか生えていない幼獣であった。
ニホンカモシカは群をつくらず、単独で行動する動物なので、この2頭はおそらく母子なのだろう。
とすると、私たちの友好の森で繁殖した可能性が高い。

国の特別天然記念物に指定されている動物が暮らす森林(やま)が私たちのフィールドなのだと思うと、心が躍る。

20080928 ニホンカモシカの母子(友好の森)
NIKON D300 70-300

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2008年9月26日 (金)

オケラ

20080926okera

「やまで旨いはオケラにトトキ、里で旨いは瓜、ナスビ、嫁に食わすにゃ惜しゅうござる」と信州では詠われたほどの山菜だ。
雪融け間もない頃の新葉を和え物やお浸しにしたそうだ。
ちなみに“トトキ”とはツリガネニンジンのことである。

オケラの根茎には、健胃や風邪薬としての薬効も古くから認められていて、その薬効故に、蜜柑の皮や肉桂などとともに正月の屠蘇散の材料とされてきた。
また、乾燥させた根茎を焚き、蔵の防湿・防黴にも用いた記録もある。

キク科の多年草で、アザミに似たイガのような苞(ほう)に包まれた白い花を咲かせる。

これだけ、多用途に利用されてきた植物であるのに、用いられなくなったのはいつからなのだろうか。
どのような社会背景の中で、身近な自然との接点が失われたのかを知ることも森林(やま)づくりに必要なことである。

20080903 オケラの花(後山)
NIKON D300 105MICRO

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オオチャバネセセリ

20080925ootyabaneseseri

他のセセリチョウが、花の蜜ばかりではなく獣糞などにも集まるのに対して、このオオチャバネセセリは、花の蜜を特に好む。
そのため別名“ハナセセリ”とも呼ばれる。

セセリチョウの“せせり”とは、小刻みな動作をせわしなく繰り返すという意味があるらしい。
なるほど、セセリチョウは小さな体躯で花から花へとせわしなく飛び回っている。

イチモンジセセリととてもよく似ているが、後翅の白斑がジグザクに並ぶのが本種の特徴だ。イチモンジセセリは白斑が“一文字”に並ぶことが名の由来になっている。
また、イチモンジセセリに較べてやや緩慢な飛び方をすることなども違いである。

成虫は、オカトラノオやアザミの仲間でよく蜜を吸うが、幼虫の食草がススキ等のイネ科の植物であるため、開けた草原で出逢うことが多い。

屋根を葺いたり、畑に鋤き込んだり、家畜の飼料にしたりと、かつての農産では草本を多く利用した。
野に自生するものばかりではなく、茅場や入会草地などを整備して草本を日常生活の用に供した。
そうした環境下では、この蝶も現在よりも遙かにたくさん乱れ飛んでいたことだろう。

20080903 ノハラアザミで吸蜜するオオチャバネセセリ
NIKON D300 105MICRO

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2008年9月25日 (木)

飯田裕子さんの写真展

20080925iidyuukoshasinntenn

川場村を撮り続けてくださっている飯田裕子さんの写真展が開催されます。

会場は川場村にある“ギャラリー蔵”。
りんごやさんの庭先にある素敵なギャラリーです。

飯田さんがこのギャラリーで写真展をしてくださるのは今回で4回目。
ご自身の写真展の他にも、川場小学校の小学生たちに写真の楽しみを伝える教室を開いてくださり、子ども達の作品で写真展を開催してくださったこともあります。
最近では、私たちの森林(やま)づくり活動の記録もお願いしています。

今回のテーマは“川場村の川”です。

9月28日から11月30日までのロングランですので、是非ご覧下さい。

川場を訪ねる楽しみがまた増えました。

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ヘクソカズラ

20080925hekusokazura

庭では厄介者のヘクソカズラも、クズやカナムグラの陰に隠れて森林(やま)ではほとんど気になることはない。
その蔓も、細く、それほど頑強ではないからだろう。
むしろ目立たぬ存在である。

“早乙女花(さおとめばな)”や“灸花(やいとばな)”の別名ももっている。
前者は、春に田植えをする女性のかぶる笠に花を見たてた名前だし、後者は、お灸の痕に花を見たてた名前だ。
小さく可憐な花をつけるこの植物を“早乙女花”と呼ぼうという運動もあるという。

正式和名である“ヘクソカズラ”は、漢字で書くと“屁糞葛”。
傷を付けたときに全草から臭う悪臭から付けられた名前だ。
万葉集にも詠われるこの植物だが、万葉の時代には“くそかずら”と呼ばれていた。
後に“屁”まで冠することになったのだ。
そこまで強調されるほどの悪臭ではないと思うのだが、命名者はよほどお気に召さなかったようだ。

ちなみに生物学上は、アカネ科ヤイトバナ属に分類されている。
属名を決めた学者と和名の名付け親は別人なのだろうか。
属名の決定者は、この和名をいくら何でもひどいと思ったのか。

20080902 ヘクソカズラ(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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2008年9月23日 (火)

ミドリヒョウモン

20080923midorihyoumonn

何らかの理由で森林(やま)の木が倒れると、樹木の枝葉に遮られていた陽光が地面にまで届き、長い間眠っていた陽の光が大好きな草花が一斉に芽生える。森林の中に、ぽっかりと空いたこうした空間を“ギャップ”という。

森林内は、草原などの開放空間に較べると、どうしても暗くなる。
そうすると、芽吹きや生長に多くの光を必要とする植物は更新を妨げられることとなる。
周りの木々が未だ小さかった頃に、その下層で実った種子もあるし、その後にも鳥や風によって様々な種子が運ばれてくる。
そうした種子のうち、光の少ない環境を好むものは成長を始めるが、多くの光を必要とする種子は、芽生えのタイミングをじっと待つことになる。
ギャップができると、こうした種子が待ってましたとばかりに成長を始めるのだ。

ギャップの生態は、周囲の樹種や立木の祖密度、ギャップ自身の大きさなどによって様相を異にするが、スギやヒノキなどの針葉樹林の中に生まれたギャップは、薄暗い中でそこにだけスポットライトをあてたステージのようでなかなか美しい景色を楽しませてくれることが多い。

写真は、こうしたギャップで花を咲かせたノダケに集まった“ミドリヒョウモン”。
川場村では、ヒョウモンチョウの仲間の中で最も普通に見られる種類だ。
8月くらいの盛夏を除けば、6~10月くらいの比較的長い期間目にすることができる。
遠目に見たときには、オレンジ色の大振りの花がスポットライトを浴びて咲き誇っているように見えた。

20080903 ノダケで吸蜜するミドリヒョウモン(後山)
NIKON D80 70-300

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ノダケ

20080922nodake 森林内の木漏れ日が射す空間に、ノダケの紫色の花が目立っていた。

山野に生えるセリ科の多年草で、霜の厳しくなる直前まで花を楽しませてくれる。
セリ科の植物は白い花を着けるものが多い中で、この花色は異彩を放っている。
草丈も、高いものでは150㎝にも及び、存在感のある植物だ。

冬には地上部が枯れるが、葉を落とした後にも、すくっと立ち上がった茎が残り、その姿が竹を連想させることから“野竹”の名が付けられたという。

全草に薬効成分が含まれ、刻んで入浴剤として用いると、冷え性やリュウマチ、腰痛などに効果があり、乾燥させた根に熱湯を注いで飲むと風邪の諸症状を緩和するほか、健胃、強壮、止血などに効果を現し“前胡(ぜんこ)”という生薬名で利用されてきた。

川場村の人々もこの草を利用してきたのだろうか。
実は、川場村は山菜やキノコ、野山の生薬などに関する知恵の蓄積が比較的少ない。
こうしたものを山野に求める必要が少ない、相対的には豊かな村だったようである。

20080903 ノダケの花(後山)
NIKON D300 105MICRO

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2008年9月22日 (月)

ワレモコウ

20080922waremokou

日当たりの良いところを好む多年生の草本。
沢山の花が花序を形成しているが花弁はなく、濃紫の小さな花弁に見えるのは萼である。

和名の由来については、実に様々な説があり、漢字表記も“我吾紅”“吾亦紅”“吾木香”“我毛紅”など様々に揺れている。
諸説ある中で、最も説得力のあるのは植物学者の前川文夫の説だ。
曰く、宮中の御簾の装飾具である帽額(もこう)を図案化した“木瓜紋(もっこうもん)”に花の形が似ており、さらに小さな一つ一つの花(萼)が4裂していることこから“割れ木瓜”の名が付いたという(湯浅浩史:『花おりおり』朝日新聞社より)。

遠目に見ると、すっと伸びた茎の先端に楕円形の玉が揺れていて、それはそれで可愛らしいのだが、こうして近づいてみて初めてこの花の美しさに気づく。

下刈りをしながらこの花が目に付くようになると、次の季節の作業、間伐や枝打ちの段取りを考えなければならない。

20080902 ワレモコウ(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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2008年9月21日 (日)

ツバメシジミ

20080920tubamesijimi001

萩室地区の田んぼの畦を散歩していると、太陽の光を受けてコバルト色に輝く小さな蝶を見つけた。
シジミチョウの一種の“ツバメシジミ”だ。
後翅の先にある糸のような飾り(尾状突起)をもっているのが特徴だ。
草原性の蝶で、シロツメクサやオオイヌノフグリなどで好んで吸蜜する。
広げた翅の端から端までで約2㎝ほどの小さな蝶である。

灰白色の小さな蝶なので、よほど目を凝らしてみないとこの美しさに気づくことはできない。

一年間に4回ほど世代交代を繰り返すが、成虫の出現期は10月くらいまでなので、この可愛らしいの蝶に出逢うことができるのもあとわずかである。

ツバメシジミを目にしなくなると、川場村もいよいよ冬を迎える。

20080920tubamesijimi00220080903 ツバメシジミ(萩室地区)
上:NIKON D300 105MICRO
下:NIKON D80 70-300

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オオカマキリ

20080920ookamakiri_2なかのビレジを出て少し歩くと、オトコエシの真っ白な花が目に入ってきた。
花には、ヒョウモンチョウの仲間や幾種類かのセセリチョウ、沢山のハナアブの仲間などが集まり、吸蜜に忙しそうだった。

そんな様子をしばらく眺めていると、次はどの花の蜜を吸おうかとホバリングをしながら物色中のハナアブが何かに吸い込まれるように移動し、そして動きを止めた。

吸い込まれるように見えたのは、巧妙な保護色で獲物を待ち伏せしていたオオカマキリが目にもとまらぬ早さでハナアブを狩った瞬間だったのだ。

カマキリはそのままの姿勢で、ムシャムシャとハナアブを食べ始めた。
もうじきやってくる繁殖のシーズンを目前に栄養補給に余念がない。

20080903 ハナアブを食べるオオカマキリ(友好の森)
NIKON D300 105MICRO

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2008年9月18日 (木)

ゲンノショウコ

20080918gennnoshouko

林縁の藪に埋もれるようにして、小指の爪ほどの可憐な花を咲かせているのはフウロソウ科の“ゲンノショウコ”。

漢方ではなく、日本の民間薬として“ドクダミ”や“センブリ”とならんで古くから用いられてきた。
根、茎、葉、花、と全草に薬効成分が含まれる。少し前に、随分と流行したポリフェノール(タンニン)が有効成分だ。
乾燥後、煎じて飲むと整腸作用があり、下痢止めや胃薬として広く利用されてきた。
飲み過ぎても便秘などを引き起こしたりしないことから、お茶代わりにも用いられるほど、優秀な民間生薬であった。

“医者いらず”や“たちまち草”などと呼ぶ地域もある。
和名の“ゲンノショウコ”もその薬効から付けられたといわれている。
「そんな草が効くんかい?」
「現の証拠にもう効いてきた!」
そんな会話が聞こえてきそうな名前である。

20080901 ゲンノショウコ(友好の森)
NIKON D300 105MICRO

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2008年9月17日 (水)

イラガの幼虫

20080917iraga

メイドインUSAのスニーカーの様でもあるし、海の生き物“ウミウシ”の様でもある。
ピカチューだという声も聞く。

正体は、イラガという蛾の幼虫。
森林(やま)づくりの仲間の中で、触れずにそっとしておいた方が良いグループの一員だ。

全身を覆う棘の先からヒスタミン系の毒を噴射して、触れたものを苦しめる。
まず刺されたときには飛び上がるほどの傷みが走り、数時間は激烈な痛みが残る。
そのあと数日間は痒みがひどい。
イラガの毒は酸ではないのでアンモニアなどは効かない。
刺された皮膚に残った棘を粘着テープなどで取り除いた後は、抗ヒスタミン系の薬を塗布することが必要だ。

厄介者は厄介者で馴染みが深く、地域地域で様々な名が付けられている。
“オコジョ”はやはり毒をもつ魚に見たてた呼び名だろう。
“デンキムシ”や“デンキケムシ”は刺されたときのショックをそのまま表している。
“ピーピームシ”は刺されて泣く様子からか。
“ヒリヒリガンガン”などと呼ぶ地域もある。
川場村ではなんと呼ぶのだろう。
こんど村の人に訊ねてまわろう。

イラガの蛹は卵の殻のような繭に入って冬を越す。
この繭が一つとして同じ模様がないから面白い。

20080903 イラガの終齢幼虫(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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2008年9月16日 (火)

アサギマダラ

20080916asagimadara

後山の山頂付近では、ノダケやヒヨドリバナ、それにオトコエシなど秋の花が盛りを迎えていた。
それらの花には、幾種類ものセセリチョウやヒョウモンチョウなどが吸蜜に訪れていた。
そんな様子に見入っていると、ほとんど羽ばたくこともなく上手に風を捕まえながら一匹の蝶がひらりひらりと飛んできた。
アサギマダラだ。

この蝶は、タテハチョウ科マダラチョウ亜科に分類されているが、マダラチョウ亜科に分類される蝶は南方系の蝶で、この亜科の中で九州以北に生息するのは本種のみである。

極めて長距離を移動する蝶としても有名で、夏場には暖かいところから気温の低いところへ、秋には暖かいところへと移動する。種子島から福島県までの約1000kmもの移動が記録されているほどだ。
どうしてこのような長距離移動を追跡できたのかというと、この蝶は翅の鱗粉を退化させていて、翅にサインペンで目撃日時と場所を書き込むことができるのだ。
写真の個体には見られないが、書き込みをされたアサギマダラに出逢うことも多い。

ガガイモ科のイケマ等に産卵し、孵化した幼虫は、丸くパンチで穴を開けたような食痕を残しながら葉を食べる。

この日であった一匹はどこから川場村を訪れたのだろうか。
そして、どうして川場村を選んだのだろうか。
そんなことを考えながらの森林(やま)づくりも楽しいものだ。

20080906 オトコエシで吸蜜するアサギマダラ(後山)
NIKON D300 70-300

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2008年9月15日 (月)

シュレーゲルアオガエル

20080915shuregeru

雨上がりの林道を歩いていると、葛の葉の上に一匹のカエルを見つけた。
アマガエルかと思ったが、よく見るとアマガエルよりも体色がコバルトブルーに近いし、鼻先から目にかけて走る黒線もない。
日本固有種のシュレーゲルアオガエルだ。

日本固有種に付けられる和名であるのに“シュレーゲル”とは違和感を覚えるが、かのシーボルトが採取した個体を、ドイツの生物学者であるヘルマン・シュレーゲルが学名を命名し、その学名を直訳して和名が付けられたのだそうだ。

このカエルは春先から初夏にかけて、田の畦や小川の土手などに穴を掘り、泡で包んだ200~300個ほどの卵を産む。
北海道を除く広い範囲に生息するカエルだが、餌となる昆虫類の減少や、河川改修工事などによる産卵場所の減少などによって、その数を減らしている。

産卵期以外には、随分と水辺から離れたところでも見かけることがある。

20080903 葛の葉に隠れるシュレーゲルアオガエル(富士山地区)
NIKON D300 105MICRO

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2008年9月14日 (日)

ツマグロヒョウモン(成虫)

20080914tumagurohyoumon

8月27日の記事で、ツマグロヒョウモンの幼虫と蛹が見つかったことを紹介したが、今月の初めには羽化が始まったようで、羽の傷みもないきれいな個体が飛び交っていた。
存在感のあるとてもきれいな蝶だ。
ヒョウモンチョウの仲間は雌雄で翅の模様が異なるものが多いが、このツマグロヒョウモンも例に漏れない。
メスは前翅端を濃藍色に染め、この蝶の名の由来となっている(写真上)。一方のオスは、ヒョウモンチョウに一般に見られる模様を見せるが、後翅端には、わずかにメスと同様の模様がある(写真下)

園芸品種の蔓延や地球温暖化の影響で生息域を急速に拡大しているこの蝶が、川場村に定着してしまうのかどうかは冬越しの成否にかかっている。
来春の雪融けの頃にこの蝶が飛んでいるとなると、定着の可能性が高まる。

もともとその地域に生息していなかった野生生物の流入・侵出は、ほとんどの場合失敗に終わるが、いざ成功したとなると、地域の生態系を著しく攪乱することが多い。

川場村でも、植物ではオオハンゴンソウやヒメオドリコソウ、それにワルナスビなどの流入種が生息域を急速に拡大しつつあるし、哺乳動物でも、つい最近まで生息していなかったイノシシが個体数を増やし、ハクビシンも目につくようになってきた。
昆虫では、このツマグロヒョウモンやキボシカミキリなどが台頭してきている。

生物相が急激に変化すると、農業や林業の関係者達が培ってきた知恵も役に立たなくなる怖れもある。

自然環境を護るためにも、地域の生産を護るためにも、こうした流入種については注意深く観察を続ける必要がある。

上:20080903 ツマグロヒョウモンのメス(なかのビレジ外周)
NIKON D80 70-300
下:20080904 ツマグロヒョウモンのオス(ヒロイド原)
NIKON D300 70-300

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2008年9月13日 (土)

ちょっと気むずかしい仲間

20080913mamusi002

大学生達との下刈りの最中に、ちょっと気むずかしい生き物に出遭った。
マムシである。正式和名は“ニホンマムシ”という。
他のヘビに較べて、やや三角ばった頭部と、銭形の模様が特徴だ。

わが国の毒蛇の代表で、毒性はハブよりも強いといわれているが、毒自体が少ないことや、咬みついても毒の注入に失敗することも多い。
全国で年間に3,000人ほどがマムシに咬まれる事故に遭っているが、死に至るのはそのうち約10名程度であり、咬傷による死亡率は低い。

攻撃的なイメージが強いが、元来が臆病なヘビなので見つけてもそっとしておけば積極的に攻撃を受けることはない。

20080913mamusi001_2けれども油断は禁物。
草むらや、倒木の下などをよく確かめもせずに手を差し入れたりしたときに攻撃に遭うことが多いようだ。

長袖長ズボン、手袋の着用など、森林(やま)での基本的な装備・服装を守り、実行すること。

もし咬まれた場合には、素人治療は行わず専門の医療機関に直行することが大切だ。

20080902 マムシ(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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2008年9月11日 (木)

ウスアカオトシブミ

20080911usuakaotosibumi

以前にも紹介したように、オトシブミの仲間は木々の葉を巻いて“揺籃”と呼ばれる揺りかごをつくることで有名だ。
種類によっては揺籃を切り落とすものもいて、樹上に残された揺籃よりも、林道などに落とされた揺籃の方がよく目につくことから、“落とし文”の名が付けれらた。
文(手紙)というよりは、短い葉巻のように見えてしまうのだが、イメージされたのは、封筒に入れられた手紙ではない。
電話もメールもない時代に、想い人に気持ちを伝えるためにしたためた手紙を堅く巻き、相手の目に触れるところに落としたのだそうだ。

ウスアカオトシブミは、北海道から九州までの広い範囲の山地で出逢うことができる昆虫だ。
オトシブミの仲間は、食草を特定の植物に限定したものが多いのだが、このウスアカオトシブミは、リョウブやミズキを筆頭に様々な植物を利用する。
春と秋の二度、成虫が発生することも本種の特徴だ。

揺籃をつくるためには軟らかな葉が必要だ。
植物の多くは盛夏には成長の度合いを弛め、酷暑を乗り切った後に再度新葉を展開するものが多い。
この虫は、秋の新葉を利用する戦略を立てているのだろう。

ウスアカオトシブミは秋の訪れを報せてくれる。

それにしても、こんなおとぼけ顔の生き物がいると思うだけで楽しくなってくる。

20080903 ウスアカオトシブミ(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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秋の気配

20080910mizunara

9月に入って川場村にも秋の気配が漂い始めた。
田んぼでは稲穂が頭を垂れ始め、津軽やさんさといったリンゴの収穫が始まった。

ヒロイド原のミズナラのドングリも、後は褐色に熟すのを待つばかりの大きさにまで育ってきた。

川場村では、標高800m程のヒロイド原あたりには、ミズナラの自生は見られないのだが、試験的に植栽をしている。
ナラ類は、近縁種と交雑することも多く、なかなか同定が難しいのだが、このミズナラに実ったドングリは純粋なミズナラだろうか。それともコナラとの間にできた一代雑種なのだろうか。
来春の芽吹きが始まれば判明するが、はたしてその時を迎えることができるのだろうか。
ネズミやリス、カケスにイノシシなどの胃袋に納まるものが多い中で、無事生き残る強運が備わっているかどうか。

20080902 ミズナラのドングリ(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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2008年9月 9日 (火)

川場村の哺乳動物

20080909jidousatuei

自動撮影装置を設置してからほぼ一ヶ月が経過した。
その間にカメラの前に姿を現してくれた動物は3種類。
最も頻繁に姿を見せたのはタヌキ(右上)。次いでイノシシ(左上・右下)。
一度だけ姿を見せたのはハクビシン(左下)だ。

彼らは、いずれもとても臆病な動物なので目視する機会はほとんどない。
足跡などから、その生息は推測していたが、無人の撮影装置のおかげで姿を捉えることができた。

森林(やま)は、様々な生物の生息を可能にしている。
そして、様々な生物のおかげで森林が創られ、護られていく。

多くの生き物が、安定して暮らす森林(やま)をつくっていきたい。
どのような生物が、そのような環境下で生きているのかを知ることは、森林を守り育てる上でとても重要かつ不可欠なことだ。

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2008年9月 8日 (月)

土田本店

20080908tutidahonntenn001

川場村が誇る銘酒“譽國光”の醸造元である“土田本店”を訪ねた。
このブログでもリンクをさせていただいている、六代目が笑顔で迎えてくれた。

明治40年に沼田市で創業した同社が川場村に居を移してから20年ほどになる。
川場村は、他市町村から流れ込む川が一本もなく、村内に流れる河川の全てがその源流を村内(武尊山)にもつという、その名の示すとおり川に、水に恵まれた村である。
人口4000人に満たない、小さな村であるにもかかわらず、村内に二つもの酒蔵を有することも、質量ともに水が豊かであることを証明している。

20080908tutidahonntenn002豊かな森林が支える仕事がここにもあった。

酒米を蒸す蒸籠も敢えて大型のものを用いず、手間暇を惜しまず小型のものを用いるなど、丹誠を込めた仕事ぶりがとびきりの美酒を醸していた。

もう一月あまりで新種の仕込みが始まるという。

20080906 上:麹室 下:櫂棒(川場湯原地区)
RICOH GR DIGITALⅡ

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オオゾウムシ

20080908oozoumusi

“カブトの森”で大型のゾウムシに出逢った。
おそらく雌雄のつがいだったのだろう。
二匹が寄り添うようにコナラの木にいた。

名前が体格をそのまま表しているようにわが国最大級のゾウムシである。
体長は、1~3cm程と非常にばらつきが大きいものの、何れにしてもゾウムシの仲間の中では大きい。
10年ほど前に外来種の“ヤシオオオサゾウムシ”が流入する前は、最大種であった。
もっとも、ヤシオオオサゾウムシは生息地が限られているので、川場村で出逢うことはない。

成虫は樹液を吸うが、幼虫時代には倒木などに穿孔して材部を食べる習性をもっている。
そのため、伐倒した木材を椪積みしている間に食害されることもある。
“椪(はい)”とは移送を待つ丸太が積まれたものをいう。

林業生産者からは少しだけ厄介者扱いされるこの虫も、倒伏した樹木や切り株を分解し、次の世代の樹木を育てる土壌を造っているのだから、林業生産の基盤を整備していることになる。

20080901 オオゾウムシ(カブトの森)
RICOH GR DIGITALⅡ

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