カテゴリー「虫と一緒に森林づくり2008」の37件の記事

2008年12月31日 (水)

ヤママユガの繭

20081230yamamayuga001

“なかのビレジ”の駐車場わきにあるコナラの木を遠目に見ると、2枚だけ葉を残しているように見えた。
その他の葉をすっかり落としきっているのに、何故この2枚だけ残っているのか不思議に思って近づいてみると、薄黄緑色の繭に繋がれていることが分かった。

この繭の正体は、ヤママユガ。
ウスタビガやクスサンなどと同じ“ヤママユガ科”に分類される大型の蛾の一種だ。

成虫は8月~9月頃に出現(羽化)し、まもなく産卵して、その一生を終える。
コナラなどの小枝に産み付けられた卵は、そのまま冬を越し、春の新葉の展開を待って孵化する。
孵化後は、旺盛な食欲で葉を食べ2ヶ月ほど経つと蛹になるという生活史をおくる。
つまり、写真の繭は、蛹が成虫になったあとの空繭なのだ。
繭の上部に見えるフワフワとした白い糸のところが、成虫が脱出したあとだ。

ヤママユガは“天蚕”ともよばれ、繭から得られる糸は“天蚕糸”といわれる。
天蚕糸は、一般的なカイコ(家蚕)から得られる絹糸(家蚕糸)よりも多くの点で勝る上等品として珍重されてきた。
飼育が困難なことと、繭一つあたりから得られる糸が少ないことが天蚕飼育が普及しなかった理由だとされているが、近年では、家蚕糸に天蚕糸を織り交ぜる利用法が増大しつつあると云われている。

動物・植物を問わず、すべての生物に対して、人間による過度の利用が極めて重大な圧力をかけている。
しかも、狩猟や採取を通じて直截に利用するのではなく、それらの輸出入の際に発生する環境負荷や、畜産や農業用地の開拓による環境破壊などが、より大きなインパクトとなっている。

そうしたことを考えると、家蚕糸に天蚕糸を混織するように、さまざまな野生生物を人間が再び利用する途を講じることが、森林(やま)を守り続けるためには必要なことのように思える。

20081229 ヤママユガの繭(中野地区なかのビレジ)
NIKON D80 70-300

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年10月19日 (日)

蝶?蛾?

20081019ikarimonnga

ヒロイド原を歩いていると、モンシロチョウほどの大きさの虫が翔んでいた。
タテハチョウの仲間のテングチョウかと思ってカメラを構えた。
川場村ではまだテングチョウにお目にかかれていないのでちょっとだけ緊張しながらレンズを向けるとどうも違うようだ。
図鑑で調べてみると、なんと蛾の一種の“イカリモンガ”であることが分かった。

蝶と蛾は、“鱗翅目(チョウ目)”という同一のグループに分類され、両者の間に生物学上の区別はない。
鱗翅目に分類される昆虫のうち、①夜に翔ぶ、②触角が太い、③翅を開いてとまる、等の特徴をもつものが“蛾”と呼ばれることが多いが、例外も沢山ある。

このイカリモンガは、昼間に翔び、棒状の細い触角をもち、翅を閉じてとまる。
つまり、まるで蝶の特徴をもっている。
それがどうして“蛾”と呼ばれるのだろうか、不思議なことだ。

イカリモンガは秋に羽化後、成虫で越冬し、春に次世代を残す。

20081011 イカリモンガ(ヒロイド原)
NIKON D300 70-300

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年10月 8日 (水)

ヒメクロホウジャク

20081008himekurohoujaku

もう終盤にさしかかったタイアザミの花を訪れたのは、スズメガの仲間のヒメクロホウジャク。
蛾の仲間は夜行性のものが多いが、本種は花の蜜を求めて昼間に飛び回る。

“ホウジャク”とカタカナで表記すると意味がとりにくいが、“ホウジャク”は“蜂雀”と書く。
一直線に猛スピードで翔んだかと思えば、空中で急停止したり、そのまま前後左右に平行移動したり。忙しく飛び回る様を蜂のようであり、雀のようでありと表したのだろう。
まるで、南米のハチドリを彷彿とさせる飛び方である。

日頃はくるくると巻いた長い口を伸ばして、壺状の花からも上手に吸蜜する。
ツリフネソウなど、昆虫を花粉まみれにするために花の形に工夫を凝らした植物でさえも蜜をただ飲みされてしまう。

北海道から沖縄に至る全国に分布する蛾で、幼虫はヘクソカズラを食草とする。

ヒメクロホウジャクの成虫を見かけなくなる頃、川場村は紅葉のシーズンを迎える。

20080927 タイアザミで吸蜜するヒメクロホウジャク
NIKON D80 70-300

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年9月26日 (金)

オオチャバネセセリ

20080925ootyabaneseseri

他のセセリチョウが、花の蜜ばかりではなく獣糞などにも集まるのに対して、このオオチャバネセセリは、花の蜜を特に好む。
そのため別名“ハナセセリ”とも呼ばれる。

セセリチョウの“せせり”とは、小刻みな動作をせわしなく繰り返すという意味があるらしい。
なるほど、セセリチョウは小さな体躯で花から花へとせわしなく飛び回っている。

イチモンジセセリととてもよく似ているが、後翅の白斑がジグザクに並ぶのが本種の特徴だ。イチモンジセセリは白斑が“一文字”に並ぶことが名の由来になっている。
また、イチモンジセセリに較べてやや緩慢な飛び方をすることなども違いである。

成虫は、オカトラノオやアザミの仲間でよく蜜を吸うが、幼虫の食草がススキ等のイネ科の植物であるため、開けた草原で出逢うことが多い。

屋根を葺いたり、畑に鋤き込んだり、家畜の飼料にしたりと、かつての農産では草本を多く利用した。
野に自生するものばかりではなく、茅場や入会草地などを整備して草本を日常生活の用に供した。
そうした環境下では、この蝶も現在よりも遙かにたくさん乱れ飛んでいたことだろう。

20080903 ノハラアザミで吸蜜するオオチャバネセセリ
NIKON D300 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年9月23日 (火)

ミドリヒョウモン

20080923midorihyoumonn

何らかの理由で森林(やま)の木が倒れると、樹木の枝葉に遮られていた陽光が地面にまで届き、長い間眠っていた陽の光が大好きな草花が一斉に芽生える。森林の中に、ぽっかりと空いたこうした空間を“ギャップ”という。

森林内は、草原などの開放空間に較べると、どうしても暗くなる。
そうすると、芽吹きや生長に多くの光を必要とする植物は更新を妨げられることとなる。
周りの木々が未だ小さかった頃に、その下層で実った種子もあるし、その後にも鳥や風によって様々な種子が運ばれてくる。
そうした種子のうち、光の少ない環境を好むものは成長を始めるが、多くの光を必要とする種子は、芽生えのタイミングをじっと待つことになる。
ギャップができると、こうした種子が待ってましたとばかりに成長を始めるのだ。

ギャップの生態は、周囲の樹種や立木の祖密度、ギャップ自身の大きさなどによって様相を異にするが、スギやヒノキなどの針葉樹林の中に生まれたギャップは、薄暗い中でそこにだけスポットライトをあてたステージのようでなかなか美しい景色を楽しませてくれることが多い。

写真は、こうしたギャップで花を咲かせたノダケに集まった“ミドリヒョウモン”。
川場村では、ヒョウモンチョウの仲間の中で最も普通に見られる種類だ。
8月くらいの盛夏を除けば、6~10月くらいの比較的長い期間目にすることができる。
遠目に見たときには、オレンジ色の大振りの花がスポットライトを浴びて咲き誇っているように見えた。

20080903 ノダケで吸蜜するミドリヒョウモン(後山)
NIKON D80 70-300

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年9月21日 (日)

ツバメシジミ

20080920tubamesijimi001

萩室地区の田んぼの畦を散歩していると、太陽の光を受けてコバルト色に輝く小さな蝶を見つけた。
シジミチョウの一種の“ツバメシジミ”だ。
後翅の先にある糸のような飾り(尾状突起)をもっているのが特徴だ。
草原性の蝶で、シロツメクサやオオイヌノフグリなどで好んで吸蜜する。
広げた翅の端から端までで約2㎝ほどの小さな蝶である。

灰白色の小さな蝶なので、よほど目を凝らしてみないとこの美しさに気づくことはできない。

一年間に4回ほど世代交代を繰り返すが、成虫の出現期は10月くらいまでなので、この可愛らしいの蝶に出逢うことができるのもあとわずかである。

ツバメシジミを目にしなくなると、川場村もいよいよ冬を迎える。

20080920tubamesijimi00220080903 ツバメシジミ(萩室地区)
上:NIKON D300 105MICRO
下:NIKON D80 70-300

| | コメント (0) | トラックバック (0)

オオカマキリ

20080920ookamakiri_2なかのビレジを出て少し歩くと、オトコエシの真っ白な花が目に入ってきた。
花には、ヒョウモンチョウの仲間や幾種類かのセセリチョウ、沢山のハナアブの仲間などが集まり、吸蜜に忙しそうだった。

そんな様子をしばらく眺めていると、次はどの花の蜜を吸おうかとホバリングをしながら物色中のハナアブが何かに吸い込まれるように移動し、そして動きを止めた。

吸い込まれるように見えたのは、巧妙な保護色で獲物を待ち伏せしていたオオカマキリが目にもとまらぬ早さでハナアブを狩った瞬間だったのだ。

カマキリはそのままの姿勢で、ムシャムシャとハナアブを食べ始めた。
もうじきやってくる繁殖のシーズンを目前に栄養補給に余念がない。

20080903 ハナアブを食べるオオカマキリ(友好の森)
NIKON D300 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年9月17日 (水)

イラガの幼虫

20080917iraga

メイドインUSAのスニーカーの様でもあるし、海の生き物“ウミウシ”の様でもある。
ピカチューだという声も聞く。

正体は、イラガという蛾の幼虫。
森林(やま)づくりの仲間の中で、触れずにそっとしておいた方が良いグループの一員だ。

全身を覆う棘の先からヒスタミン系の毒を噴射して、触れたものを苦しめる。
まず刺されたときには飛び上がるほどの傷みが走り、数時間は激烈な痛みが残る。
そのあと数日間は痒みがひどい。
イラガの毒は酸ではないのでアンモニアなどは効かない。
刺された皮膚に残った棘を粘着テープなどで取り除いた後は、抗ヒスタミン系の薬を塗布することが必要だ。

厄介者は厄介者で馴染みが深く、地域地域で様々な名が付けられている。
“オコジョ”はやはり毒をもつ魚に見たてた呼び名だろう。
“デンキムシ”や“デンキケムシ”は刺されたときのショックをそのまま表している。
“ピーピームシ”は刺されて泣く様子からか。
“ヒリヒリガンガン”などと呼ぶ地域もある。
川場村ではなんと呼ぶのだろう。
こんど村の人に訊ねてまわろう。

イラガの蛹は卵の殻のような繭に入って冬を越す。
この繭が一つとして同じ模様がないから面白い。

20080903 イラガの終齢幼虫(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年9月16日 (火)

アサギマダラ

20080916asagimadara

後山の山頂付近では、ノダケやヒヨドリバナ、それにオトコエシなど秋の花が盛りを迎えていた。
それらの花には、幾種類ものセセリチョウやヒョウモンチョウなどが吸蜜に訪れていた。
そんな様子に見入っていると、ほとんど羽ばたくこともなく上手に風を捕まえながら一匹の蝶がひらりひらりと飛んできた。
アサギマダラだ。

この蝶は、タテハチョウ科マダラチョウ亜科に分類されているが、マダラチョウ亜科に分類される蝶は南方系の蝶で、この亜科の中で九州以北に生息するのは本種のみである。

極めて長距離を移動する蝶としても有名で、夏場には暖かいところから気温の低いところへ、秋には暖かいところへと移動する。種子島から福島県までの約1000kmもの移動が記録されているほどだ。
どうしてこのような長距離移動を追跡できたのかというと、この蝶は翅の鱗粉を退化させていて、翅にサインペンで目撃日時と場所を書き込むことができるのだ。
写真の個体には見られないが、書き込みをされたアサギマダラに出逢うことも多い。

ガガイモ科のイケマ等に産卵し、孵化した幼虫は、丸くパンチで穴を開けたような食痕を残しながら葉を食べる。

この日であった一匹はどこから川場村を訪れたのだろうか。
そして、どうして川場村を選んだのだろうか。
そんなことを考えながらの森林(やま)づくりも楽しいものだ。

20080906 オトコエシで吸蜜するアサギマダラ(後山)
NIKON D300 70-300

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年9月14日 (日)

ツマグロヒョウモン(成虫)

20080914tumagurohyoumon

8月27日の記事で、ツマグロヒョウモンの幼虫と蛹が見つかったことを紹介したが、今月の初めには羽化が始まったようで、羽の傷みもないきれいな個体が飛び交っていた。
存在感のあるとてもきれいな蝶だ。
ヒョウモンチョウの仲間は雌雄で翅の模様が異なるものが多いが、このツマグロヒョウモンも例に漏れない。
メスは前翅端を濃藍色に染め、この蝶の名の由来となっている(写真上)。一方のオスは、ヒョウモンチョウに一般に見られる模様を見せるが、後翅端には、わずかにメスと同様の模様がある(写真下)

園芸品種の蔓延や地球温暖化の影響で生息域を急速に拡大しているこの蝶が、川場村に定着してしまうのかどうかは冬越しの成否にかかっている。
来春の雪融けの頃にこの蝶が飛んでいるとなると、定着の可能性が高まる。

もともとその地域に生息していなかった野生生物の流入・侵出は、ほとんどの場合失敗に終わるが、いざ成功したとなると、地域の生態系を著しく攪乱することが多い。

川場村でも、植物ではオオハンゴンソウやヒメオドリコソウ、それにワルナスビなどの流入種が生息域を急速に拡大しつつあるし、哺乳動物でも、つい最近まで生息していなかったイノシシが個体数を増やし、ハクビシンも目につくようになってきた。
昆虫では、このツマグロヒョウモンやキボシカミキリなどが台頭してきている。

生物相が急激に変化すると、農業や林業の関係者達が培ってきた知恵も役に立たなくなる怖れもある。

自然環境を護るためにも、地域の生産を護るためにも、こうした流入種については注意深く観察を続ける必要がある。

上:20080903 ツマグロヒョウモンのメス(なかのビレジ外周)
NIKON D80 70-300
下:20080904 ツマグロヒョウモンのオス(ヒロイド原)
NIKON D300 70-300

| | コメント (2) | トラックバック (0)