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2009年1月10日 (土)

『森林と人間』

20090110sinnrinntoninngenn 石城謙吉:『森林と人間 ある都市近郊林の物語 』、岩波新書(2008年初版)

1973年4月下旬、北海道大学苫小牧地方演習林に若い林長が赴任した。

本来、自然の理解のための観察(モニタリング)と記録(インベントリー)を基調とする“自然誌(ナチュラルヒストリー)”と実験科学とを両輪として発展すべき科学が、あまりにも実験科学に偏ったものになりつつあることに危惧を感じていたこの林長は、演習林を自然誌を重視する“フィールド・サイエンス”の拠点として再生することを夢見て自ら進んでこの地に赴任した。

そのための努力を続ける一方で、地域住民がこの演習林をしばしば訪れ、それぞれの愉しみ方をしている姿を見たこの林長は、演習林のもう一つの重要な役割に気づく。
市民を積極的に受け入れ“休養林”として整備・開放することも、都市近郊に存在するこの演習林の大きな役割であるということだ。

そして、フィールド・サイエンスの場としての演習林と、市民の休養林としての演習林のあり方は決して矛盾するものではなく、両立が可能であるとして、以降の演習林の二本柱となってゆく。

この林長こそ、本書の著者である石城謙吉(いしがき・けんきち)氏だ。
本書は、動物生態学分野の研究を進める一方で、23年間にわたり演習林改革を実行し続けた石城氏が、自らの半生を振り返り纏めた一冊である。

当時、北海道大学のお荷物であった荒れ果てた演習林を再生した実績は、苫小牧地方演習林に留まらず、北大の有する広大な研究施設の改革へと拡大し、“北方生物圏フィールド科学センター”の設立という形で結実することになる。

私たちの“友好の森”には、科せられた3つの役割があると思っている。
一つは、森林の所有者や地域社会に向けた還元。
もう一つは、“友好の森”に生きるものたちの保護。
3つ目には、人々が安らぎ学ぶ機会と場の提供。
この3つの役割を、現状以上に発揮することができるように森林(やま)づくりを続けていきたいと思っている。

私たちの森林(やま)づくりに、強い刺激と大きな示唆を与えてくれる一冊に巡り会うことができた。

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