『農村の幸せ、都会の幸せ』
徳野貞雄:『農村の幸せ、都会の幸せ 』、生活人新書、(2007年初版)
ひと月程前に、本書の著者である徳野氏の講演を聴く機会に恵まれた。
徳野氏は、還暦を迎えたとはとても思えない迫力・毒舌・情熱で、窮乏する農村の現状と振興の方途について熱弁を振るい聴衆を圧倒していた。
実は、この日の講演は今回紹介する書籍の内容をトレースするものだったので、良い機会だと思い、本書を書架から引っ張り出して読み直してみた。
本書は、わが国を「稲作が作った国」とする著者の一貫したスタンスから編まれており、稲作を中心とする「農」の営みが崩壊しつつあることに警告を発している。
氏は熊本大学に籍を置く農村社会学者であるが、合鴨農法の普及に努めたり、「道の駅」を発想し、その命名者となるなど、柔軟な思考と豊富なアイデアで地域振興の現場を直視し続けてきた地域振興の実現者でもある。
農村に生きる人々の生老病死、性生活までを視野に入れた地域振興論は、氏が「インチキゲンチャー」とよぶエセ知識人を強烈に批判しながら展開し、農業者に対しても、消費者を意識できていないことを厳しく指摘している。
これまでも、このブログでは繰り返し述べてきたように、わが国の森林管理の担い手は農業者であった。
森林を守り育てるためには、農業の、農村の歴史と現状を冷静に見つめ、山積する課題を解決していくことが必要だ。
“森林(やま)づくり”に関わる者にとっての必読の一冊だ。
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