艶めく秋のしくみ
一週間ほど前に、標高1,000mほどの川場谷ダムのほとりではコハウチワカエデが色づきはじめていた。
森林(やま)の木々は、厳しい冬を乗り切るための工夫を様々に凝らしている。
紅葉もその一つだ。
秋になると人々を楽しませてくれる植物は、日中と夜間の寒暖の差が大きくなると、自らの成長を止めるために葉を切り離す準備を始める。
葉と枝との間にコルク質の“離層”とよばれる組織をつくり、水分の補給を断絶するのだ。
植物は、水にとけ込んだ養分を利用しているので、水分が止まるということは同時に養分の補給も止まることを意味する。
水分と養分の供給を絶たれた葉は、間もなく落葉の時期を迎えるのだが、その僅かな間に見せてくれるのが秋の艶やかな色づきなのである。
葉を朱く染める紅葉は、光合成によって生成された糖分が離層の形成によって植物体に送られなくなり、そうして蓄積された糖分がアントシアニンという色素に変成することで起こる。
このアントシアニンの生成には、日中には20℃を超え、夜間には8℃を下回る寒暖の差、大気が澄み、葉が充分な陽光を受けられること、葉が乾燥しない湿度、といった条件が重なる必要がある。
一枚一枚の小さな葉ごとに営まれるこうした働きによって、森林(やま)は深紅に染め上げられる。
20091017 色づきはじめたコハウチワカエデ(川場谷)
NIKON D300 105MICRO
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コメント
イサさん!
面白いでしょ!
でも、こんなふうにしくみが見えちゃうと興ざめする人も沢山いるようですね。
私なんかは、しくみが分かることで面白さが倍増するタイプですが、しくみがみえない“神秘”にしておきたいというタイプのひとも居るんですよね。
むずかしいなあ~
投稿: くま | 2009年10月31日 (土) 21時01分
すご~い
紅葉にこんな奥深い仕組みがあったとは~
すんごく勉強になります。
紅葉も見に行けない私ですが~
今度公園でも散歩してみます
ありがとうございます。
投稿: イサ | 2009年10月31日 (土) 15時57分