後山でイノシシ初記録
後山には何台もの自動撮影装置を仕掛けてあるのだが、データの回収に時間のかかる1台が、2ヶ月間もほったらかしになってしまっていた。
今回ようやく、このカメラのデータを回収することができたのだが、カモシカやノウサギ、タヌキやアナグマといったすっかりお馴染みになった動物たちに加えて、なんとイノシシが記録されていたのだ。
と、一人興奮していても、多くの方々には何のことやらさっぱりだろうが、これは、後山の動物7不思議の内の一つを覆す出来事なのである。
一つは、なぜかニホンジカが棲息していないこと。
そしてもう一つが、イノシシが棲息していないことだったのだ。
(もっとも、残りの5つの不思議は、現在探索中なのであるが)
もともと、ニホンジカとイノシシは積雪に弱い動物で、冬眠をして冬を乗り切るという機能も持ち合わせてはおらず、川場村では見かけない動物であった。
それが、近年の寡雪・暖冬傾向の中で数を増やし、この数年間では、村内の至るところで目撃され、それに連れて農業被害も増加している。
それなのに、なぜか後山では未確認だったのである。
後山に隣接する集落の住民に尋ねても、見たこともないという話しか聞いてこなかった。
それが、今から約2ヶ月前の10月26日の深夜に静かに記録されていたのだ。
その後は再び記録されないところをみると、気まぐれで迷い込んだ個体である可能性が高いのだが、それでも、後山における初記録である。
後山は、カモシカの生息密度が異様ともいえるほど高いことと何らかの関係があるのかもしれない。
丹念な記録から何かが見えてくるかもしれない。
20091026 イノシシ初記録(後山)
自動撮影装置
| 固定リンク
« 冬の味覚“春駒乃里” | トップページ | 密会 »
「川場のけものと鳥たち2009」カテゴリの記事
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
くらぶ・ひとりさん
コメントありがとうございます!
森林(やま)づくりを進めれば、必ず動物が増えます。
そして、動物が増えれば、農林業被害も出てきます。
これからの森林(やま)づくりのキーポイントは、野生鳥獣との共存を如何にはかるかというところにあるのではないかと考えています。
様々なケースの調査を実施したいと考えておりますので、ご協力いただければ幸いです。
投稿: くま | 2009年12月29日 (火) 22時47分
初めて投稿します。
くま先生、いのししの情報をありがとうございます。
川場村萩室地区には私たち(やまづくり・くらぶ)が森林組合の人から借りている畑があります。 今年(2009年)の8月中旬に、私がその畑に行ったときのことです。 畑をながめると、何か様子が変わっていました。 始めはいったい何が起きたのか、ピンとこなかったのですが、よく見ると、生え茂ったサツマイモの茎や葉はそのままに、マルチの下のイモだけきれいに食べられてしまっていました。 通常、ここのサツマイモ(赤いサツマイモと地元のほし芋用の白いサツマイモを植えています)は5月ころに植えて、10月か11月ころに収穫しています。 しかし、8月では、まだ、あまり大きくはなっていないだろうサツマイモが、みごとになくなっていました。 こんなことをするのは、イノシシしか考えられません。 実際、マルチの上には大きな足跡が残されていました。 その後、畑の借主の母上にこのことを報告したら、最近はこの近辺に、よくイノシシがあらわれているそうです。
私たちがこの畑を借りて10年がたちますが、このようなイノシシの被害にあったのは初めてです。 来年は、畑に柵をするなどの工作をこうじななければ、ならないようです。
しかし、来年のイノシシの被害に会う前に、おいしいしし鍋を食することができるようになることを、くま先生にお願いしたいです。
投稿: くらぶ・ひとり(後藤茂) | 2009年12月28日 (月) 23時10分
8940さん
書き方が分かりにくかったですね…
“内蔵”の話に加えて“学習”の成果の可能性もあるのではないだろうか。という意味でした。
それにしても、生き物を始めとする自然の現状って、まだまだ未解明ですよね。
自然に依拠する生産活動(=農業とか林業とか)にさいしても、自然をきちんと理解することから再出発しなくてはならないように感じています。
投稿: くま | 2009年12月24日 (木) 13時35分
そうですね“学習”“習熟”によって…は大いにありますね。でも「雪道を歩けるようになる南国の人」と「内蔵諸器官の変化」は違う部類のお話でしょうか?
後者はいわゆる無用の“定向進化”、マンモスやサーベルタイガーの牙・犬歯が発達しすぎで絶滅したのと同じような気がしますが、前者は自転車乗りやスキーの上達に似ています。人間本来の持つ特性を潜在から日常化にするパブロフ効果みたいです。
それにしても、やはり「少し厳しい」「少しツライ」が遺伝子バージョン維持、ないしは劣化を防ぐのですね。
投稿: 8940 | 2009年12月24日 (木) 12時19分
8940さん
こんにちは!
人間にも食の嗜好の変化があり、それに連れて内蔵諸器官にも少しずつ変化があるようですね。
野生の動物についても、ツキノワグマが肉食傾向を強めたりということも聞いています。
南国の人間が雪道を上手に歩けなくても、何年か暮らすうちに上手に歩けるようになりますよね。
遺伝子レベルの変化だけではなく“学習”“習熟”による変化も随分大きな変化を可能にしますからね。
谷本先生らがなさっているような調査が川場村でも実施できれば良いのですが、なかなか難しい側面もあります。
ローコストで精度の高いモニタリンク方法を考えたいと思っています。
投稿: くま | 2009年12月24日 (木) 11時55分
二度目の投稿となります。
早速ですが、ニホンジカ(とりわけホンシュウジカ)は、先生のおっしゃるとおり積雪に弱いと思われていました。ところが昨今、そうでもないデータが各地で得られているようです。
宇都宮大学の谷本丈夫名誉教授は、GPSで追いかけられる精度の高い発信器をつけて調査を行っています。どの場所でどれくらい休んだか、どこをどれくらいの時間をかけて移動しているのか、行動の記録を克明に機器の中にデータを蓄え、さらにそのデータの吸い取りは、発信器を付けた動物のおよそ1km圏内に入れば可能とのことで、たとえば1年ぐらいアクセスできなくてもデータは蓄えられ、繋がった瞬間にその個体の情報が吸い取れるっていう寸法のよう。
で、そこから分かったことは、足尾の個体が2月の積雪期に日光白根の山頂直下を巻いて日光や尾瀬方面(大清水)に移動しているということがわかり、それはこの地方では豪雪地帯でもあって、降雪回数も多い時期でもあります。
また、移動の範囲もこれまで考えていた以上に広く、足尾にいたかと思えば、日光にいたり利根郡に入ったり、そして赤城方面を経て足尾に戻ったりと、その広さは驚くものだそうです。
また夏期は、あきらかに「通勤」のような行動をとる個体群もいて、尾瀬のミツガシワを食べるために峠を行ったり来たりするのもいるそうです。途中にある他の植物には目もくれず…。
これも温暖化からくる発展途上の行動なのでしょうか!?
いずれにしても、こうやって見えてくると、その先々の対策の大切なデータにもなりますね…。
投稿: 8940 | 2009年12月24日 (木) 11時43分