カテゴリー「森林づくりお薦めの新書2009」の15件の記事

2009年6月13日 (土)

『冬虫夏草ハンドブック』

20090613toutyuukasouhanndobukku 盛口満・安田守:『冬虫夏草ハンドブック 』、文一総合出版、(2009年初版)

文一からマニアックな一冊が出版された。

冬虫夏草(とうちゅうかそう)とは、漢方薬などで知る人ぞ知るところだが、虫に取り付いたキノコの菌(子嚢菌)が虫を殺し、その後ににょきにょきとキノコを生やすというもので、古い時代の中国では、動物から植物へ変身する不思議な生物であると考えられていたようだ。

わが国では、300種類を超す冬虫夏草の存在が確認されているが、本書ではそのうちの68種類が紹介されている。

冬虫夏草は、どこにでも存在する生物であるのに、その存在を知っていなければ野外で発見することはまず不可能だ。
森林(やま)には、こんな不思議な仲間もいることを認識したい。

安田氏の手による美しい写真と、盛口氏の軽妙な文章とイラストが、冬虫夏草の世界へと読者を案内してくれる。

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2009年6月 4日 (木)

『リンゴが教えてくれたこと』

20090604ringogaosietekuretakoto_2 木村秋則:『リンゴが教えてくれたこと 』、日経プレミアシリーズ、(2009年初版)

“リンゴは薬で作る”といわれるなか、著者が無施肥、無農薬でリンゴ生産に挑戦し、見事に成功した顛末は『奇跡のリンゴ』に紹介され、多くの生産者と消費者を瞠目させた。

本書は、木村さんが新たに書き下ろした半生記である。

氏が無農薬でのリンゴ生産を志してから11年目にして初めて、リンゴが実をつけた。その間、9年間もの無収入期間さえも経験した。

「自然を見る、それも長く観察するということは、百姓仕事にとって一番大事なことです。」
「今の農業は観察する力を失っています。」
氏が、“自然栽培”とよぶ生産方法(理念)は、徹底して自然を見つめることに要諦があるという。

「若い人は農業が嫌いではありません。これまでの農業に魅力を感じなかっただけです」と断言する氏の言葉はとても重く、様々なことを考えるきっかけをくれたように思う。

農業に、林業に、農村に、山村に、森林(やま)に関心を持つ人々に一読を勧めたい一冊だ。

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2009年5月18日 (月)

『オトシブミハンドブック』

20090518otosibumihanndobukku 安田守・沢田佳久:『オトシブミハンドブック 』、文一総合出版(2009年初版)

このブログでもリンクをさせていただいている写真家の安田守さんらの手による一冊。

オトシブミの仲間はどれも本当に憎めない。
あんなおとぼけ顔で飄々と森林(やま)のなかで生きている。

ウスアカオトシブミウスモンオトシブミは以前に紹介したが、川場村にはまだまだ沢山のオトシブミがいる。
様々な樹木に、それぞれに異なった揺籃が付いているし、初夏の林道には切り落とされた揺籃が散っている。

オトシブミ達には、積雪期を除いて、ほぼ一年中お目にかかることができるが、その最盛期は春から初夏にかけてである。
まさに、今この時期が面白い。

本書には、わが国に棲息するオトシブミの全種(30種)が掲載されているのだが、オトシブミそのものはもちろんのこと、それぞれにつくる揺籃からも、食草からも検索できるのが嬉しい。

しばらくはオトシブミ探しに夢中になってしまいそうだ。

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2009年4月16日 (木)

『朽ち木にあつまる虫ハンドブック』

20090416kutikiniatumarumusihanndobu 鈴木知之:『朽ち木にあつまる虫ハンドブック 』、文一総合出版、2009年初版

出れば買ってしまう文一のハンドブックシリーズに新たな一冊が加わった。

このブログでも度々書いてきたように、森林(やま)には様々な状態の樹が必要だ。
隆々と繁る元気な樹、枯れかけの樹、倒れた樹、土に還ろうとしている樹。
それぞれが役割をもっている。

まさに土に還ろうとしている樹が“朽ち木”だ。

本書では、朽ち木を餌としたり、住処としたりする様々な虫たちが紹介されている。

森林(やま)を総合的に観るためには、朽ち木の存在にも目を配ることが大切だ。

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2009年3月28日 (土)

『昆虫の集まる花ハンドブック』

20090328konnntyuunoatumaruhana 田中肇:『昆虫の集まる花ハンドブック 』、文一総合出版、(2009年初版)

最近の文一は、本当に元気がいい。
一昨年の『昆虫の食草・食樹ハンドブック』、昨年の野鳥と木の実ハンドブック』に続く好著が刊行された。

植物なら植物だけ、昆虫なら昆虫だけというハンドブック(図鑑)が多い中で、植物を利用する生物とのコンビネーションで紹介する一冊だ。

しかも、こうした書籍の刊行を企画する際には、「網羅性」がどうしても気になってしまうものだが、掲載種をごく少数に絞っている編集も潔く、度胸がある。

本書では、142種類の虫媒花に限定し、花の特徴と虫の関係を紹介している。

虫に花粉を運ばせるための植物たちの手練手管が面白い。
野にも畑にも、そして森林(やま)にも昆虫が必要なわけがストンと心に落ちてくる一冊だ。

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2009年3月13日 (金)

『自動車の社会的費用』

20090313jidoushanoshakaitekihiyou 宇沢弘文:『自動車の社会的費用 』、岩波新書、(1974年初版)

「地球温暖化」とか、「大気汚染」とか、「エネルギー危機」とか、そんなこんながすっかり解決していたとは、知らなかった…

高速道路利用料金の大幅値下げを含む、国の第二次補正予算が成立したそうだ。
ETC搭載の普通自動車に限定されるそうだが、首都高速などを除く全国の高速道路の利用料金が1000円を上限に改定されるらしい。

このニュースを聞いた時には「川場往復が安くなる!」と、うかつにも一瞬喜んでしまったが、よく考えてみると、頭の中に????が沢山浮かんできた。

「百年に一度の」とか、「未曾有の」とか言われる経済状況の中で「景気対策」の一環として政府与党が打ち出した政策だ。
即効性を求める「景気対策」なのだから、当然、この値下げによって高速道路の利用者が増えなければ意味はないはずだ。

マイカー旅行にバンバン出かけてもらって、いっぱいお金を使ってもらって、そんでもって景気回復!

本当にそうなるのだろうか?

寝たきり老人の紙おむつ代からも、赤ちゃんの粉ミルク代からも税金をとる必要があるほど、「環境問題」は深刻だったはずなのに、「ノーカーデイ」も「鉄道輸送の見直し」もどこかへ吹っ飛んでしまっても良くなったようだ。

補正予算が成立したということは、国会議員の過半数が賛成したということだ。
ということは、国会議員の過半数が「もう地球に優しくしなくてもいい」と判断したということなのだろう。

世界中から責められるんではないだろうか。
責めてももらえず、嘲笑されて相手にもしてもらえなくなるんではないだろうか。
その場合、責められるのではなく、攻められてしまうかもしれない。

高速道路利用料金の値下げに、一瞬でも喜んでしまったような人や、国会議員たちは、この本を読んで勉強した方がいい。

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2009年3月10日 (火)

『農村の幸せ、都会の幸せ』

20090310muranosiawase_2徳野貞雄:『農村の幸せ、都会の幸せ 』、生活人新書、(2007年初版)

ひと月程前に、本書の著者である徳野氏の講演を聴く機会に恵まれた。
徳野氏は、還暦を迎えたとはとても思えない迫力・毒舌・情熱で、窮乏する農村の現状と振興の方途について熱弁を振るい聴衆を圧倒していた。

実は、この日の講演は今回紹介する書籍の内容をトレースするものだったので、良い機会だと思い、本書を書架から引っ張り出して読み直してみた。

本書は、わが国を「稲作が作った国」とする著者の一貫したスタンスから編まれており、稲作を中心とする「農」の営みが崩壊しつつあることに警告を発している。

氏は熊本大学に籍を置く農村社会学者であるが、合鴨農法の普及に努めたり、「道の駅」を発想し、その命名者となるなど、柔軟な思考と豊富なアイデアで地域振興の現場を直視し続けてきた地域振興の実現者でもある。

農村に生きる人々の生老病死、性生活までを視野に入れた地域振興論は、氏が「インチキゲンチャー」とよぶエセ知識人を強烈に批判しながら展開し、農業者に対しても、消費者を意識できていないことを厳しく指摘している。

これまでも、このブログでは繰り返し述べてきたように、わが国の森林管理の担い手は農業者であった。
森林を守り育てるためには、農業の、農村の歴史と現状を冷静に見つめ、山積する課題を解決していくことが必要だ。
“森林(やま)づくり”に関わる者にとっての必読の一冊だ。

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2009年2月26日 (木)

『サクラハンドブック』

20090226sakura 大原隆明:『サクラハンドブック 』、文一総合出版、(2009年初版)

文一がまたまたユニークなハンドブックを新書版で出版してくれた。
もうじき迎える桜の季節を前に嬉しい一冊だ。

わが国には、野生種・園芸品種を含め、約300種類以上ものサクラが存在し、種数が多いが故に同定は困難を極める。

本書では、比較的身近に見ることができる63種を厳選し、種毎の花や葉の特徴、似た品種との見分け方のポイントなどを美しい写真と平明な文章で説明してくれている。

ポケットにねじ込んで桜ウォッチングに出かけたい。

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2009年2月14日 (土)

『毒草を食べてみた』

20090214dokusouwotabetemita 植松黎:『毒草を食べてみた 』、文春新書、(2001年初版)

なんともインパクトのある書名の本だ。

著者が全てを食べたということではないらしいが、行間に滲むところからすると、結構な割合で自らも口にしているようだ。

全世界の毒草のうち、44種が本書で取り上げられており、そのうち、わが国に自生するものが約半数を占めている。
それらについての、事故事例や歴史的な事柄などが軽妙な文章で紹介されている。

川場村では、ちょうど今、可愛らしい花を咲かせているフクジュソウについても触れられている。

フクジュソウはキンポウゲ科の植物で、別名の“元日草”という呼び名が示すように、冬季に花を咲かせる。
このフクジュソウの根は、強烈な心臓毒を含んでいて、根を煎じたものを茶碗一杯飲んだだけで致死量に達するという。

それにもかかわらず、10年ほど前には、民放テレビが「山菜の宝庫・高尾山」と銘打って、食べられる山菜としてフクジュソウの写真を放映したこともあったというし、煎じて茶碗一杯を飲んだ方も、「心臓の薬」であると聞いた記憶を頼りに飲んでしまったのだという。

森林(やま)は爽快であったり、楽しかったりするばかりの環境ではない。
不快なことも、危険なことも沢山ある。
生半可な知識で関わろうとすると、手痛いしっぺ返しを食うことになる。

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2009年1月28日 (水)

『手に職。』

20090127tenishoku

森まゆみ:『手に職。 』、ちくまプリマー新書、(2008年初版)

川場村ファンの日向さんから一冊の新書を紹介してもらった。

タウン誌ブームの火付け役になった森まゆみさんの手による一冊だ。
『谷中・根津・千駄木』は、東京のある一地域のあるがままの姿を、けれど卓越した観察力(面白がる能力)で活き活きと紹介する地域限定出版物だった。
およそ、その地域に生活する者にとってのみ有用な情報だけしか盛り込まれていない地域限定出版物であるのに、全国にファンをつくった。

本書は、大都市東京に仕事場をもつ職人にフォーカスをあて、その人となりから、仕事の風景、人生観までを切りとった珠玉の一冊である。

鮨、大工、三味線、江戸和竿等々、江戸そして東京の生活を彩る20名の職人に対する聞き書きは、人口の8割をサラリーマンとその家族が占めるようになったわが国において、珍聞・奇聞に類するものとして感じられるのかもしれない。

モノを作るということの不器用さ。
モノを作るということの面白さ。
モノを作るということの正直さ。

そんなことを、真っ直ぐに伝えてくれる一冊だ。

農業や林業の大切さは、単に生活に必要な物資を生産することに留まらない。
もちろん、「環境」をまもるなどということに集約され、十把一絡げに語られるべきものでもない。
人が生きていく上で、貴賤上下の区別なく、必要とするモノを作る人々の営みの眩しさを再確認させてくれる一冊である。

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