カテゴリー「川場の花図鑑2009」の43件の記事

2009年11月25日 (水)

くるい咲き

20091125tatitubosumire

一週間ほど前にヒロイド原を散歩していると、すっかり枯れ葉色に染まった新植地で可愛らしい花を見つけた。

本来は春の花であるタチツボスミレだ。
辺りを見まわしても、この一株以外に花をつけている個体はない。
こうしたことは植物の世界にはままあることで“くるい咲き”といわれている。

ごくごく局所的な気候の変化を専門用語では“ミクロ・クリマ(微気候)”というが、気候の変化以外にも様々な偶然が重なって、このスミレは春が来たのだと勘違いをしたのだろう。

もしこれが、もっと広範囲にわたって、多くの個体がこの季節に花を咲かせるようならば注意が必要だ。
深刻な気候変動や異常気象の可能性を疑う必要があるからだ。

20091120 タチツボスミレのくるい咲き(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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2009年10月11日 (日)

ゲンノショウコの種子散布

20091011gennnoshoukoゲンノショウコはフウロソウ科の多年草。
わが国では、北海道から九州に至る全国の山野で見ることができる。

開花期は夏から秋遅くまでだが、秋にはいると種子を実らせる。

植物は、その自生域を拡大するために、種子や鞘、果実などに様々な工夫を凝らしている。

鳥や動物などに種子を運ばせるもの(動物散布)、雨滴や水流に運ばせるもの(水散布)、地球の重力を利用するもの(重力散布)など、実に多彩で巧妙な繁栄の戦略をもっている。

その中でも興味深いのが、本種をはじめとするフウロソウ科や、ツリフネソウ科、カタバミ科などの植物が編み出した“自動散布”とか“機械的散布”とか呼ばれる方法だ。

この“自動散布”という方法は、鞘の乾湿による形状変化などを利用して種子を弾き飛ばすというもので、いわば種子ロケットの発射台を備えているような方法である。

一番上の写真は、ゲンノショウコの受粉後の花であるが、この後に花弁が枯れ落ち、二番目の写真のようになる。
とがった褐色の部位が“発射台”であり、緑の萼の上に5つある卵形のものが種子である。
種子の成熟を待って、条件が揃うと“発射台”が勢いよく5つに裂け、その力で種子を2~3mも跳ね飛ばすのだ。

一番下の写真は、種子を跳ね飛ばした後の“発射台”。
一つ一つは、投石機と同じような形状と仕組みをもっていることが分かる。

可愛らしくガッツポーズをとっているようにも見えるこの姿を御輿の飾りに見たてて“御輿草(みこしぐさ)”という別名でも呼ばれている。

小指の爪ほどの小さな部位に精巧な仕組みが備わっていることには驚かされる。

20091011 ゲンノショウコの種子散布(中野地区)
NIKON D300 105MICRO

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2009年9月27日 (日)

ミゾカクシ

20090926mizokakusi

川場村では稲刈りが本格的に始まった。
冷夏や長雨で収穫が心配されたが、今年も黄金色の田んぼが美味しいお米を育ててくれたようで一安心。

リンゴも“つがる”などの早い品種は収穫が始まったようだし、秋蕎麦もそろそろだ。
いよいよ美味しい季節がやってくる。

写真は、今月初めの田んぼで見かけた花。
収穫を目前に、最後の草刈りだったのだろう。
とても手入れの行き届いた田んぼで、きれいに畦の草が刈られたばかりだった。

畦をのんびりと歩いていると、小さな小さな薄紫色の花が目にとまった。
キキョウ科の“ミゾカクシ”という多年生植物だ。
写真の右手奥に写っているのが稲の旱(茎)なので、この花の大きさも分かるだろう。
人の手の爪ほどの大きさしかない。

こんなに可愛らしい花を刈り取るのは気が咎めたのか、ミゾカクシが群生する一画だけは刈り残されていた。

ミゾカクシは、その名のとおり溝(用水路)を覆い隠すほど繁茂する水田雑草の一種なのだが、田んぼの持ち主が、この可憐な花に目を細めて刈り残したように思えた。

農業は雑草との“闘い”だというけれど、この花を見て草刈りの手を止めた農家のつくる米は美味しいに違いない。

20090904 ミゾカクシ(天神地区)
NIKON D300 105MICRO

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2009年9月13日 (日)

モビール2種

20090912turihunesou

森林(やま)のモビールを2種。
上が“ツリフネソウ”、下が“キツリフネ”。
どちらもツリフネソウ科の多年草で、ホウセンカなどに近い植物である。

どちらも、花の奥の“距”に蜜腺をもっていて、虫が蜜を求めて潜り込むと全身に花粉がまぶされるような構造になっている。

蜜を吸いに来る虫たちが飛び乗りやすいように、下側の花弁が幅広くなっており、幾重にも手の込んだ繁殖戦略を身につけた植物だ。
この手の込んだ自然の造形には、ただただ驚かされるばかりである。

川場村では、8月の中旬からツリフネソウが咲き始め、9月の声を聴く頃からキツリフネが追いかけるように咲く。
ツリフネソウが咲き始めると夏も終盤であることを、キツリフネの開花で秋を迎えたことを教えてもらえる。

写真上:20090902 ツリフネソウ
写真下:20090903 キツリフネ
NIKON D300 105MICRO

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2009年9月 9日 (水)

実りの秋

20090909soba

実りの秋、到来。

村内のそこかしこで、こんな風景が見られる季節を迎えた。

白く可憐な花が一面に咲き誇っている。
ソバの花だ。

以前にも紹介したが、川場村では多くの家庭で、ソバもうどんも打つ。
痩せた土地を好むソバと、比較的地味豊かな土地をこのむうどん(小麦)が同一地域で食されることは本来珍しいことなのだ。
川場村はちょうど移行帯に位置するということなのだろう。

自然の豊かさが食文化の豊かさをも支えている。

ソバ畑では、ハナアブやニホンミツバチ、様々な蝶などが忙しそうに翔びまわっていた。

20090906 ソバの花(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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2009年9月 4日 (金)

アケボノソウ

20090904akebonosou_2

川場村にいよいよ秋がやってきた。

アケボノソウはリンドウ科の2年草。
9~10月頃に特徴的な花をつける。

1年目には地面に這いつくばった葉(ロゼット葉)だけをつけ、2年目になってようやく茎をのばし花を咲かせる。

山地の沢沿いや湿原付近など、湿った環境を好む植物だ。

一輪の花は、5枚の花弁で構成されるが、真っ白な地色の花弁の先端近くには黒い点、中央付近には二つの黄緑色の点という変わったデザインが特徴である。

この黄緑色の点は蜜腺で、ここから蜜を出して虫を集める。

アケボノソウの名は、これらの点を明け方の星と月に見たてた名だそうだ。

20090903 アケボノソウ(谷地地区)
NIKON D300 105MICRO

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2009年8月27日 (木)

ツリガネニンジン

20090827turiganeninnjinn

以前、キク科のオケラについて「ヤマで旨いはオケラにトトキ…」と詠われる、ということを紹介したが、本種がそのもう一方のトトキである。

トトキとは、ツリガネニンジンの古称である。
花が鐘楼の釣鐘に似ていて、根が朝鮮人参に似ることから現在の和名が用いられるようになった。

春先に出る若い葉をお浸しにしたり、ヨモギの葉とともに胡麻和えにするなどして食用に供される他、汁の具、卵焼き、油炒めなどにもする。
また、根も、きんぴら、和え物、粕漬け等に用いられる。
これほど、全国津々浦々で食卓を飾るものは珍しいといわれるほどの山菜だ。

また、根にはサポニンやイヌリンを含み、“沙参(しゃじん)”という名の生薬としても有名だ。
内服薬としては、咳を鎮め、痰をきるなどの他、外用薬としても疥癬症などに用いられてきた。

キキョウ科の多年草で、林縁などの比較的明るいところで可憐な花を楽しませてくれる。
ツリガネニンジンの花は、もう秋の入口に入ったことを教えてくれる。

20090819 ツリガネニンジン(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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2009年8月17日 (月)

まんじゅう草

20090817katabami

小さな黄色い花を着けているのは、カタバミ科のカタバミだ。
3枚の葉(三出複葉)がクローバーに似ていることから混同されることも多いが全くの別種である。

茎にシュウ酸やクエン酸、酒石酸などを含むため噛むと酸っぱい味がする。
そのため“酸物草(すいものぐさ)”などという別名ももっている。
川場村では、女の子達のままごと遊びに使われ、“まんじゅう草”と呼ばれていたそうだ。

初夏から秋にかけて、道端や田んぼの畔などに5弁の花を咲かせている。

明日から、大学生達の学外実習で川場村を訪れる。
地元の方々との交流や森林(やま)の下刈りが目的だ。

20090804 カタバミ(友好の森)
NIKON D300 105MICRO

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2009年8月16日 (日)

たーまやー!

20090816sisiudo

ひゅるひゅるひゅる どーん!
川場の森林(やま)に大玉の花火が一輪。

夏の野山を彩るセリ科の多年草でシシウドという。
株が大きく成長しないと花を咲かせない植物で、花を咲かせるまでには4~5年かかる。
花が終わると枯死してしまう儚さも花火のようだ。

本種をはじめ同属の植物には顕著な薬効成分が認められるものが多く、属(シシウド属)をあらわす学名は“Angelica”。
その薬効を天使の力に見たてた学名だと言われている。

シシウドの根を秋に掘り取り、割って陰干しにしたものは“独活(どっかつ)”という生薬名で古くから利用されていたようだ。

美味しい蜜を出す花のようで、ハチ、アブ、蝶、ハナカミキリ等々、多彩な昆虫が訪れる花でもある。

20090807 シシウドの花(富士山地区)
RICOH GR DIGITALⅡ

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2009年8月 2日 (日)

ヤマジノホトトギス

20090802yamajinohototogisu

薄暗い林縁でヤマジノホトトギスが静かに咲いていた。

エキゾチックな雰囲気さえ見せる特徴的な花だ。
わが国にもこんなに風変わりな花が自生しているのかと驚かされる。

ヤマジノホトトギスはユリ科の多年草。
山野の樹下や林縁部などの、あまり陽の射さないような環境に育つ植物だ。

カッコウなどと同じ仲間のホトトギスという野鳥がいるが、この鳥の胸部の模様に似た斑が花にみられることから“ホトトギス”の名が付けれられている。
ホトトギスの仲間は、日本、台湾、朝鮮半島などの東アジアに19種が分布するが、このうちの13種がわが国に自生している。

写真の個体には7月31日に出遭ったのだが、私が川場村で確認した中では最も早い開花だった。
これまでは、早くとも8月中旬にならなければこの花にお目にかかることはなかった。
この日も、開花前の株は近辺に多くみられたのだが、開花しているのはこの一株のみであった。

明日、8月3日~7日まで、世田谷区と川場村の子ども達を参加者に迎えた森林(やま)づくりの教室を開催する。
森林(やま)が好きで、森林(やま)を大事に思うことができ、なおかつ、確かな知識と技術をもった子ども達を育てることに、少しでも役に立てればと思う。

20090802 ヤマジノホトトギス(後山)
NIKON D300 70-300

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