森の王者クマタカ
雪の中を散策していると、頭上に何かの気配があった。
仰ぎ見ると、幅広の翼をもち、細かい鷹斑をもった猛禽が悠然と旋回している。
両翼を拡げた翼開長は150cmほど、人間の大人が両腕を拡げたほどの大きさをもつ、わが国最大級の猛禽、クマタカである。
クマタカは国内の推定個体数も900~1000羽といわれ、国のレッドデータリストでは“絶滅危惧Ⅰ類”に、群馬県では“絶滅危惧ⅠB類”に指定されている希少種であり、国の天然記念物にも指定されている。
見通しの良くない森林を主な狩り場とするため、生態に関する詳細な情報もあまり無いようだが、東北地方では鷹狩りに用いられるなど、人間との関係の深い野鳥でもある。
ノウサギやムササビ、タヌキなどを狩る他、オオタカなどの他の猛禽類なども獲物とする。
観察例は多くはないようだが、ニホンザルまでも襲うそうだ。
クマタカは漢字で書くと“熊鷹”または“角鷹”。
“クマ”は、動植物を問わず、わが国では大型のものに冠される言葉なので、大型の鷹という、まさに名は体を表す命名である。
鷹と鷲の生物学上の明確な区別はなく、比較的小型のものを“鷹”、大型のものを“鷲”と呼ぶことが多く、その伝でいけば、本種はまさに鷲なのであるが、翼他に見られる斑紋を“鷹斑(たかふ)”といい、この鷹斑が明瞭であることから“鷹”の名を持つと考えられている。
本種のように、生態系の頂点に君臨する種を生物学では“アンブレラ種”と呼ぶが、逆に言えば、先述のような様々な生物の棲息があって初めてその存在が許される種なのである。
クマタカが見られる森林が、如何に豊かであるかという証明でもあるのだが、これからも彼らの存在を永く保証するためには、単発的・刹那的な自然保護ではなく、豊かな自然をまるごと護っていく必要がある。
20100221 悠然と飛ぶクマタカ
NIKON D300 70-300
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