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2010年5月の24件の記事

2010年5月31日 (月)

深山鶯神楽

20100531miyamauguisukagura

ミヤマウグイスカグラはスイカズラ科の落葉低木。
北海道から九州に至る、全国の里山で見られた我が国固有の樹木だが、最近では自生域を狭めている。
樹高は大きくなってもせいぜい4m程で、多くは人の背丈ほどに留まるようだ。

近縁種に“ウグイスカグラ”、“ヤマウグイスカグラ”があり、この3種は葉の形といい、花の様子といい殆ど見分けがつかないほどそっくりなのだ。

どこで見分けるのかというと、枝葉や花弁の毛に注目する。
“ウグイスカグラ”は無毛。
“ヤマウグイスカグラ”は細かい毛が密に生える。
そして“ミヤマウグイスカグラ”は、細かい毛が密に生えることは“ヤマウグイスカグラ”と同様なのだが、この毛が“腺毛”といって、毛先が丸い玉状になっているのだ。

20100531sennmou左の写真は、上の写真の花の基部を拡大したもの。
無理矢理拡大したので画像は悪いが、腺毛になっているのが見えるだろう。
花自体の大きさが、2~3cmほどの小さなものなので、この腺毛がいかに細かいものなのかお分かりいただけることと思う。
小さな棍棒が全体にびっしりと生えているようなものだ。

昔の人々は、よくぞこの細かいところに気が付き、別種として同定したものだ。

ミヤマウグイスカグラの花ももう散る頃だ。
この花が終わると初夏の香りが漂い出す。

20100509 ミヤマウグイスカグラ(小田川地区)
NIKON D300 105MICRO

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2010年5月30日 (日)

不可解な受粉戦略

20100530akebi2

先日は、近年種の“ミツバアケビ”を紹介したが、こちらは本家“アケビ”である。

蔓を細工物の材料としたり、実は秋の味覚として愉しまれるなど、日本人にとって馴染みの深い植物なのだが、雄花に形成される花粉をどのようにして雌花の柱頭に運ぶかという、植物の繁殖作戦(受粉生態)が未だに解明されていないという不思議な植物である。

虫が花粉を運ぶ“虫媒花”であることは確かなのだが、この花は蜜を出さないのだ。
雄花の蜜は、蜜を目当てにやってきた昆虫に花粉を付着させるための“餌”であるし、雌花の蜜は花粉にまみれた虫が、これまた蜜目当てに翔んできて花に潜り込む時に花粉を雌しべに付けさせる為の“餌”なのである。

それなのに蜜を出さない。
いかにも美味しい蜜がありそうなふうを装って、虫を騙しているのだろうか。
蜜の生産にもかなりのエネルギーを使うようなので、もしこれで上手くいっているとしたら、ちょっとばかりズルい省エネ戦略と云えるかもしれない。

20100530akebi1もっとも、雌しべの柱頭には甘みのある粘液が分泌されているそうなので、その甘さで虫を呼んでいるとも考えられるのだが、まず、雄花から花粉を渡されていなければ無駄になってしまうのだから、雄花か雌花かどちらかだけが蜜を出すのだとしたら、雄花が出す方が効き目がありそうなものだ。

今は紫色の柱頭が、受粉してしばらくすると緑色に変わり、次第に大きく育ち、それがまた色づいて、お馴染みのアケビの実となる。

20100516 アケビの花(ヒロイド原)
上:NIKON D90 70-300
下:RICOH GR DIGITALⅡ

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2010年5月29日 (土)

ゐのしし

20100529inosisi

既に紹介したように、“うぃっ、うぃ”と鳴く動物(=シシ)だから“うぃのシシ”。
転じて“ゐのしし”となったという説もある。

自動撮影装置に記録されたイノシシの群を見ていると、深夜のヒロイド原で何頭ものイノシシが“うぃっ、うぃ、うぃ”と鳴きながら、鼻先で地面を掘り返して、クズの根やユリの球根、ミミズやカブトムシの幼虫など、大好物を探し回っている姿が目に浮かぶようだ。

写真には4頭のイノシシが写っているが、昨年の7月に記録された“うり坊”たちかもしれない。
だとすると、ずいぶん大きくなったものだ。
来年には、子を成すだろうから可愛い“うり坊”に再び出逢うことができるかもしれない。

ところで、このブログでも度々紹介してきたことだが、川場村には10年ほど前まではイノシシはほとんど棲息していなかったと考えられている。いたとしてもごく僅かで、現在ほど多くはなかったことは確かである。

一般には、地球温暖化の影響で、イノシシの棲息範囲が拡大しつつあると説明されることが多いのだが、これについてはもう少し慎重な検討が必要だ。

地球温暖化による気候変動が、イノシシの棲息可能範囲を拡げたというように、直接的に作用していることも可能性としてはあろう。
けれども、動物・植物に留まらず、菌類にもおよぶ、凡そありとあらゆる世界に地球温暖化は影響を及ぼしているはずだ。
だとすると、「暖かくなったからイノシシが移り住むようになった」という単純明快なストーリーでは語り尽くせない現象である可能性もあるのだ。

ある地域の環境が変化したことで、ある種の細菌が増殖しイノシシの成育を阻害するようになり、川場村に移動してきたのかもしれない。
イノシシが好んで食べる植物が棲息範囲を拡大したことで、その植物を求めてイノシシも移住してきたのかもしれない。

可能性は無限にあるのだ。

そして、もしかしたら、在来所植物を駆逐してしまうような生物が川場に侵入しつつあって、その生物をイノシシが食べることで増殖を抑える働きをしているのかもしれないし、またあるいは、川場村に棲息していたある種の生物が、温暖化の影響で川場村を出て行ってしまい、その生物が生態上担っていた役割(ニッチ)をイノシシが肩代わりをしているのかもしれないのである。

イノシシが増えて農作物を食い荒らし始めた。
それは地球温暖化の影響であるし、昔は川場村にはイノシシはいなかった。
だから、全面的に駆除をしてもだいじょうぶ。

そんな短絡的な判断で対処できるほど単純な現象ではない。

森林(やま)づくりは単純な作業ではない。
だからこそ、面白いのである。

20100511 イノシシの群(ヒロイド原)
自動撮影装置

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2010年5月28日 (金)

新緑

20100528haru

“上を向いて歩こう”という記事を書いたのは、2007年の6月のことだった。
大切なことだと思ったので、時々同名の記事を書こうと思って“上を向いて歩こう(1)”などと題したのに、その後“(2)”を記事にすることを忘れていた。
いい加減なことこの上ない。

でも、やはり大事なことだし、楽しいことだ。
その時も書いたように、足場の悪い森林内では、ついつい足下ばかりを見て歩きがちなのだが、時々上を見上げると良い。

その森林(やま)を構成する樹種によって、実に様々な顔を見せてくれる。

どの季節も、それぞれに良い顔を見せてくれるのだが、新緑のこの時期もまた素晴らしい。

目には見えない土中の出来事なのに、木々の根が“ごくり、ごくり”と滋味豊かな水を吸い上げている音が聞こえてくるようだ。

遠目には靄がかかったようにもみえる、萌え始めの新芽が、春のやわらかな日を浴びてぐんぐんと生長する音や、冬の間眠っていた木々の内部を樹液が駆けめぐるサラサラという音までもが聞こえてきそうだ。

新緑がまぶしい季節を迎えると、下刈りの季節はもう目の前である。

20100515 芽生えの季節(友好の森)
RICOH GR DIGITALⅡ

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2010年5月27日 (木)

ミツバチとタンポポ

20100527nihonnmitubati

光さやけき春の野の光景。
のどかでもあり、生命の躍動感に満ちてもいる。

けれど、ちょっとだけ残念な光景なのだ。

黄色い花はセイヨウタンポポ。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、明治時代に日本に持ち込まれたと考えられている。
川場村で見られる在来タンポポは“カントウタンポポ”という種類で、セイヨウタンポポが、花を支えるように付く萼(総苞片)が反り返っているのに対して、在来種では花に沿うように付いていることで見分けがつく。

一方、花に取り付いて盛んに蜜を吸っているのは“ニホンミツバチ”。
その名のとおり、わが国在来種である。
こちらは、タンポポの例とは逆に、明治時代に“セイヨウミツバチ”が養蜂家によって導入されてからめっきり数を減じている。

一般に、動物・植物を問わず、生物は2対の染色体を複数組もっており、この組数は種によって異なるため“2n(nは組数)”と表されるのだが、わが国に蔓延るセイヨウタンポポの場合、何故か染色体数が3nであることが確かめられている。
そのため、きちんとした受粉がなされなくても、種子が形成されるので、爆発的にその数を増やしてきた。
さらに、無雪期を通して花を咲かせるので、繁殖スピードに拍車がかかっており、川場村もその例に漏れない。

ハルザキヤマガラシ、ムシトリナデシコ、ヒメオドリコソウ、オオハンゴンソウ、そしてこのセイヨウタンポポ。
川場村にも外来植物が数多く存在している。

地球は、絶えず緩やかに環境を変化させているので、それに見合ったスピードで生物種が入れ替わり、変化していくことは自然の成り行きとして捉えるべきなのだろうが、人間の勝手な都合で生物が他所から持ち込まれ、定着すると、地域の生態系を大きく崩すことになりかねない。

だから、この光景が残念なのだ。
短慮に因って生き物を違う土地から持ち込むことは避けなければならないと思う。

20100508 セイヨウタンポポで吸蜜するニホンミツバチ(川場湯原地区)
RICOH GR DIGITALⅡ

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2010年5月26日 (水)

くそ桜

20100526uwamizuzakura1

今年はウワミズザクラの当たり年だ。
昨年は、ほとんど花を着けず、一昨年は沢山の花を着けたので一年おきに花を多く着け、実を稔らせる“隔年結果”と云われる性質を持っているのかもしれない。

ウワミズザクラの実はクマも大好物で、木に登って、小さな小さな実を刮ぐようにして食べている。

20100526uwamizuzakura2ウワミズザクラは、写真にあるように、多数の小さな花をブラシ状に着ける樹木だが、名前のとおりサクラの一種である。
その証拠に、ブラシ状の花の一つ一つをよく観察すると、ソメイヨシノなどともよく似た形状を呈している。

イヌザクラなどとともに、原始的なサクラの一種だと考えられており、写真のような形態のものが、一輪一輪の花を華麗に進化させ、一般的にイメージされるような花を咲かせるに至ったようだ。

確かに、こんなにも花盛りであるにもかかわらず、多くの人々には開花すら気づかれもしない。

川場村では、何の役にも立たないとして“くそ桜”などという不名誉な呼び名で通っている。

20100515 ウワミズザクラ(友好の森)
NIKON D90 70-300

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2010年5月25日 (火)

スギタニルリシジミ

20100525sugitanirurisijimi

「あっ!」と思ってカメラを向けたのだが、撮れたのはこの一枚だけ。
構図もピントもあまいが、川場村では初確認。

シジミチョウの仲間の“スギタニルリシジミ”である。
山深くの渓流沿いに棲み、幼虫はトチノキの蕾を食べて育ち、蛹で越冬をする。

昨日紹介したミヤマセセリと同様に、年一化性の蝶で、この時期にしか出逢うことができないスプリング・エフェメラルである。

知り合いを案内して川場谷の奥へ足を延ばしたのだが、山腹から染み出す清水に浸った岩の上で、鳥の糞を吸っていた。

蝶の仲間は、鳥や獣の糞があると翔んできて一生懸命に吸い始めるものが多い。
これは、糞に含まれるミネラルを摂取するためだと考えられているのだが、幼虫時代には植物の葉を食べ、成虫になってからは蜜を吸うという食性で決定的に不足するのはミネラルなのであるから、この説明にも合点がいく。

草食性の哺乳動物がミネラルの補給を目的に“塩場”に集まるのと同じ行動と考えて良さそうだ。

所々に残雪が残る、春まだ浅い川場谷で春の使者とのようやくの出遭いとなった。

20100508 スギタニルリシジミ初認(川場谷)
NIKON D300 105MICRO

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2010年5月24日 (月)

ミヤマセセリは春の蝶

20100524miyamaseseri

ヒロイド原を散歩していると、カントウタンポポで地味な蝶が吸蜜していた。

ミヤマセセリは1年に一度だけ成虫が現れる蝶で、こうした蝶を“年1化性”という。
ちなみに、1年に何回か卵から成虫のサイクルを繰り返す蝶は“多化性”と呼ばれている。

1化性の蝶の中でも、このミヤマセセリは成虫の出現時期が短いのが特徴だ。
幼虫で冬を越し、雪解けとともに蛹となり、慌ただしく羽化をする。
そして、多くは5月中には産卵を終えてその一生を閉じるのだ。

コナラなどの葉を食べて幼虫が育つので、雑木林が無ければこのチョウが定着することはない。
けれど、この時期には木々はまだ樹液を出してはくれないので、早くから咲く野の花で吸蜜することになる。
つまり、雑木林と草原が接するような環境でなければ出逢うことができない蝶なのだ。

ところで、蝶も日光浴をすることをご存じだろうか。
蝶は変温動物であり、外気温に体温が大きく左右される。
そのため、朝早くなどは翅を拡げて胴体に陽の光を浴び、体温の上昇を待たなければ翔び立つことができないのである。
ところが、日中に翔んでいると、翅を動かす筋肉が熱を持ち体温が上がりすぎてしまう。
そのため、日中は葉陰などに身を潜めて、夕方近くになって行動を再開するものが多い。

写真の個体は、翅を半開きにしているが、陽光の具合との相談で半開きがちょうど良い塩梅だったのだろう。

20100515 吸蜜するミヤマセセリ(ヒロイド原)
NIKON D90 70-300

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2010年5月23日 (日)

十二単

20100523juunihitoe

雪解け後から梅雨入り前までに、林道脇などの薄日が射すようなところで、目立たず静かに、それでいて高貴さを漂わせながら咲いている花がある。
シソ科キランソウ属のジュウニヒトエだ。

多くの花が重なり合うように咲く様を、平安時代の高貴な女性の衣装である“十二単”に見たてたのがその名の由来だとされるが、全草を覆う細かい毛に春のやわらかな光が反射し、靄がかかったように見えることも風雅な名を持つ所以なのではないだろうか。

わが国固有種であるとされており、乾燥後煎じたものは胃健薬として用いられていたようだ。

ジュウニヒトエの花は、雄しべも雌しべも併せもつ“両性花”なのだが、まず始めに花粉を包む葯(やく)が発達し、蜜を求めてやって来た虫に花粉を運ばせ、その後に雌しべ(柱頭)が生長し受粉可能となる。
つまり、雄花の時期(雄性期)があり、その後に雌花の時期(雌花期)を迎えることで、自家受粉を行わず、他の個体の遺伝子を取り込んで次世代をつくるという繁殖のための工夫を凝らしている花なのだ。

一つ一つは1cmにも満たない小さな花なのに、どのようにしてこんなにも巧妙な工夫を身につけたのだろうか。

20100508 ジュウニヒトエの花(後山)
NIKON D300 105MICRO

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2010年5月21日 (金)

カモシカ健在

20100521kamosika

次々に咲き誇る春植物たちの可憐な花の紹介に忙しくて、動物たちの動向をお知らせするのがついつい後回しになっている。
けれど、頼れる相棒である自動撮影装置(センサーカメラ)はサボらずに記録を続けてくれているのである。

後山では、相変わらずニホンカモシカがコンスタントに記録されている。

アナグマやタヌキに疥癬症がやや目立つことから、その他の動物についても心配しているのだが、今のところカモシカたちは罹患していないようなのでホッとしている。

ところで、病気といえば口蹄疫が猛威を振るっているが、この病気は、偶蹄目の動物一般が罹る病気なので野生動物への感染も心配だ。
川場村に棲息する野生動物で偶蹄目に分類されるのは、ニホンカモシカ・ニホンジカ・イノシシの3種である。

感染速度こそ非常に速い伝染病なのだそうだが、致死率は低いようだし、偶蹄目以外の動物にはうつらないそうなので、不幸中の幸いではあるのだが、野生動物たちが罹患すると、キャリアー(ウィルスの伝播者)となり、家畜へとひろがる危険性も高い。
もし、野生動物から病原ウィルスが発見されると、現行の防疫制度に照らせば、おそらく殲滅作戦がとられることになるだろう。

川場村の森林(やま)から偶蹄目が姿を消すとなると、生態系への影響は計り知れないものがある。

20100501 ニホンカモシカ(後山)
自動撮影装置

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2010年5月20日 (木)

気がかりなこと

20100520dennenn

5月16日。
後山の山腹から生品(なましな)地区を見下ろすと、静かな景色がひろがっていた。
5月8日頃から始まった田植えもまだあまり進んでいない。
全体の4分の1ほどだろうか。

今年は春の訪れが遅く、この時期になっても田の水がなかなか温まない。

「本当は20日くらいまでは待ちたいんだよな。でも、リンゴの花摘みもあるし。」

農家の方も心配顔だった。
初期成長が悪い苗は、その後も種々心配を抱えることとなる。
いもち病にやられはしないか。
ちゃんと美味しいお米を実らせてくれるだろうか。

木々の新緑と早苗とリンゴの花。
「今が一番綺麗な季節かもしれないね。」
と話しかけると、すっかり顔なじみの農家の方が少しだけ顔を曇らせて、
「他所から来た人はそういうけどさ、リンゴの花を見ると頭が痛くなるよ。」
と、それでも笑いながら答えてくれた。

今年の少し異常な天候のせいか、森林(やま)にも、野にも、虫が少ない。
虫が少なければ、木の実や実もの野菜や果樹がきちんと実るかどうかも心配になる。
森林(やま)の木々に実りが少なければ、動物たちが里に下りてきてしまうかもしれない。
それでも、農家がしなくてはならないことは山積みだ。

心が洗われるような景色に包まれながらも、気がかりなことが沢山だ。

20100516 生品地区の田んぼの風景
NIKON D90 70-300

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2010年5月19日 (水)

四色のイカリソウ

20100519ikarisou

今年は4月27日にイカリソウの開花を初めて確認できたのだが、まさに今が盛り。
村内のそこかしこで、その風変わりな花を楽しませてくれている。

川場村での経験によると、手入れの少し遅れたスギの人工林などの、林道に近いような所で群落をつくっていることが多いように感じている。
市販されている植物図鑑などでは“広葉樹林の明るい林床に自生する”というような説明がなされることが多いが、時折木洩れ日が射すような、ほの暗い林床で出逢うことが多い。

このイカリソウ、これまで川場村では、写真右上のような薄いピンクの花にしかお目にかかったことがなかったのだが、今年は新しい発見があった。

お馴染みの薄ピンクの花色に加えて、濃い青紫のもの(左上)、赤紫のもの(左下)、そして純白のもの(右下)と4色の花が迎えてくれたのだ。

他県の例では、地域によって花色に差異があるところもあると聞くが、この四色の花は、半径10m以内ほどの狭い範囲で咲いていた。
これだけ近いところで花色が異なるということは、アジサイのように土壌の酸性度によって花色を変えるということでもなさそうだが、何か理由があるのだろう。

また、薄ピンクのものが川場村で多く見られるということは、おそらく繁殖戦略上有利なのではないかとも考えられる。
とすると、ピンク以外の花色のものが、これから個体数を増やすということも無いように思われるのだが、この仮説が的を射たものであるかどうかは、これからの観察によってしか判断できない。

長年通い慣れた川場村で、出逢うことを毎年楽しみにしている植物が新しい顔を見せてくれた。

20100516 四色のイカリソウ(後山)
NIKON D90 70-300

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ナビゲーター講習会

20100518sennkakyousitu

5月15日から16日にかけて、“友好の森ナビゲーター講習会”を実施した。
この講習会は、森林(やま)づくり塾専科教室のひとつに位置づけられている。

“友好の森”は、川場村と世田谷区の交流活動を進めるために設置されている約80haの森林で、私たちの活動の拠点である。

この森林(やま)の楽しさ、大切さ、面白さを様々な人々に伝える活動を実施していただくための初級資格が“友好の森ナビゲーター”だ。

受講者には、一人一人独自のプログラムを作成しながら、そのために必要な様々なことがらを学んでいただいた。
フィールドガイドに必要な心構え、活動に際する安全の確保、プログラム作成の手順等々、多彩な項目を座学と実技を織り交ぜながらの講習を用意した。

五月晴れの冷涼な空気のなかで、身体も頭もフル回転の二日間であった。

20100515 友好の森ナビゲータ講習会(友好の森)
RICOH GR DIGITALⅡ 

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2010年5月16日 (日)

エゾエンゴサク

20100516ezoenngosaku

植物の分類は本当に難しい。
先日、ミヤマキケマンを紹介したときにも触れたが、ケマンソウの仲間はケシ科ケマンソウ属と分類されてきたが、最近では、ケマンソウ科を独立させ、ケマンソウ科キケマン属とするのが主流になってきたようである。

写真の植物は、ミヤマキケマンの近縁種でエゾエンゴサクという。
前述のような訳で、ケシ科あるいはケマンソウ科と云っておいた方がよいようだ。

ミヤマキケマンやムラサキケマンが有毒植物であるのに対して、こちらは無毒の植物で、漢方薬や山菜としても利用される。
そもそも、名の“延胡索(エンゴサク)”とは、鎮痛作用などを発揮する生薬で、漢方薬の“安中散”や“牛膝散”などに配合されているそうだ。
ちなみに、私がよくお世話になる“太田漢方胃腸薬”他にも配合されている。

広葉樹林の林床に自生するが、木々の葉が繁る頃には地上部は枯死し、翌春までを地中の根塊で過ごす“スプリング・エフェメラル(春植物)”である。

利根川の源流の一つである、川場谷の湿った林床を清楚に彩っていた。

20100508 エゾエンゴサク(川場谷)
NIKON D300 105MICRO

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2010年5月13日 (木)

野の仏

20100513hotoke

谷地地区にある“遠堂の岩観音”は、凝灰岩をくりぬいて造立された磨崖仏群で、33体の観音像と1体の弁財天像で構成されている。

辺りの農村風景が上州武尊山を借景にゆったりとした時間と空間を醸していて、とても大好きな場所の一つである。

この岩観音の足下には、観音像・弁財天像以外にも数多くの仏様が祀られている。
写真の一体は、凝灰岩が自然に創った襞状の窪みの中にひっそりと鎮座していた。

よく見るとこの仏様、どうやら首と胴体が一致していないようだ。
何らかのことがこの仏様にあり、一体は胴体を失い、一体は首を無くしたのではないだろうか。
その二体の残された部分が併せられ、現在の姿になったようだ。

そのためか、正面を見据えた仏様が多い中で、この一体は顔がやや左上方に向いており、それがこの仏様に表情を与えている。

底抜けにやさしい爺様が、孫に小遣いをねだられ、ねだられたことも嬉しくて、既に小遣いをやることは決めているのに、一応「どうしようかなあ」などと思案顔をつくって見せている。
私には、そんな表情に見えた。

川場村は道祖神が非常に多いことでも有名な村である。
ゆっくり時間をつくって、のんびりと仏様達に会いに行くのも良さそうだ。

20100508 野の仏(谷地地区)
NIKON D90 70-300

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2010年5月11日 (火)

ベニシジミの恋

20100511benisijimi

川場村には、護岸工事が施されていない昔ながらの小川が残されている。
地形に沿ってゆったりと蛇行しながら雪解け水をサラサラと運び、田植えを待つ田んぼを潤している。

そんな小川を散歩していると、春の麗らかな陽射しの中で一頭のベニシジミがアブラナ科のハルザキヤマガラシに吸蜜にやってきた。
しばらく見ていると、もう一頭のベニシジミが翔んできて近くにとまると、翅を激しく、小刻みに振るわせ始めた。

先に来ていたのは雌のベニシジミで、後からやって来たのは雄蝶だ。
雌の気を惹こうと、求愛のダンスを始めたところだったのだ。

ベニシジミは、年に何度も羽化を繰り返す“多化性”の蝶で、川場村では4月の終わり頃から11月の中旬頃までの無雪期を通して出逢うことができる。
幼虫の姿で越冬し、雪解けとともに蛹となり、春の花が咲き始める頃に羽化するという生活史をもっている。

春に羽化する個体は“春型”と呼ばれ、“夏型”に較べると翅色が鮮やかだ。

この後、雌は、幼虫の食草であるスイバやギシギシのところへ翔び、卵を産み付けるのだろう。

ベニシジミが恋を謳歌し始めると、いよいよ春も本番だ。

20100508 ベニシジミ(生品地区)
NIKON D90 70-300

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2010年5月10日 (月)

ミツバアケビの花

20100510mitubaakebi_2雑木林の林縁にミツバアケビが花を着けていた。

小さく房状についている雄花と、その上につく大きな雌花。
雌花が雄花の上につくのは、近い花の花粉によって受粉するのを避ける工夫だといわれているのだが、本当のところはどうなのだろう。

同じ蔓にも沢山の花が咲いているので、あまり意味がないようにも思えるのだが、「少しでも」ということなのだろうか。

この写真からも分かるように、雄花と雌花が異なる“雌雄異花”であり、同時に“雌雄同株”の植物である。

この蔓には薬効成分が含まれ、“木通(もくつう)”という生薬名が付けられている。
木通には利尿作用や抗炎症作用が認められている。
紛らわしいことに、中国で“木通”と呼ばれる漢方薬は、わが国では“関木通(かんもくつう)”と呼ばれており、こちらには腎機能障害を起こす成分が含まれているので注意が必要である。

何れにしても、薬効成分を期待しての素人療法は避けた方が賢明だ。

ミツバアケビの花は、春も中盤を迎えたことを報せてくれる。

20100508 ミツバアケビの花(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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2010年5月 9日 (日)

田植えの季節

20100509tauenokisetu

川場村に田植えの季節がやってきた。

この1週間ほどはずいぶんと暖かい日が続いたものの、風は冬のそれにも似た清涼さを含み、田を潤す水もまだまだ冷たい。
今年は、春の訪れが例年よりものんびりしているようだ。
虫たちの動きもまだあまり活発にはなっておらず、野山を散歩しても、あまり姿を見かけない。

農家の方に聞くと、できることならば今月20日くらいまでは田植えを延ばしたいというのが本音なのだそうだが、リンゴの花の摘花も控えていて、そうも言っていられないとのことであった。

稲の苗は、田の植物と同様に、植え付け後の初期成長が悪いと、後々まで影響が出る可能性も高く、この気候下での田植えはリスキーなことなのである。

昨日までに、“くろぬり”と呼ばれる畦の成形・修復作業が済まされ、水が引き入れられた田んぼに、本日の早朝、いよいよ苗箱が準備された。
田植えを待つ田には集落と森林(やま)が映されている。

リンゴの摘果作業も控え、農家の多忙な季節がやってきた。

20100509 田植えを待つ田んぼ(中野地区)
RICOH GR DIGITALⅡ

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2010年5月 7日 (金)

ミヤマキケマン

20100507miyamakikemann2

春真っ盛りの川場村では、そこかしこにさまざまな花が咲き乱れている。
カタクリアズマイチゲキクザキイチゲなどの“春植物”が姿を隠し始める頃になると、入れ替わるように姿を見せてくれるのがミヤマキケマンだ。

ミヤマキケマンがとても複雑な由来の名をもつ植物であることは以前に紹介したが、この植物の分類についてもいまだに揺れていて、ケシ科に分類されることもあれば、研究者によってはケマンソウ科と独立した科とすることを主張するむきもある。

20100507miyamakikemann1川場村では、やや湿り気があり、日当たりの良い場所で普通に見られる植物だが、全国的には近畿地方以北に生育する植物で、九州や四国では出会うことができない。

例年に較べると、今年は開花が少し遅かったようだが、花の終いはどうなのだろう。

20100427 ミヤマキケマンの開花(小田川地区)
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2010年5月 6日 (木)

クロモジ

20100506kuromoji

クロモジはクスノキ科の落葉低木だ。

古くから、楊枝の材料として親しまれてきた。
お客さんの手土産でしか戴かないような高級和菓子に付いている皮付きの楊枝の原材料がクロモジである。

落語を聞いていると、“おい、ちょっとそこのクロモジをとってくんな”などという台詞を耳にするが、ここで言われる“クロモジ”は楊枝のこと。
現在に至っては、楊枝の名称が先か、樹木名が先なのか、どちらが先か分からないほど、どちらも古くから言われ続けている。

クスノキといえば樟脳を思い浮かべるが、なるほどクスノキ科の植物には芳香を漂わせるものが少なくない。
本種も、枝や幹を手折って香りを嗅げば、レモンのようなライムのようなすがすがしい香りが鼻腔を満たす。

20100427 クロモジの花(小田川地区)
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2010年5月 5日 (水)

麗人の毒

20100505sirobanaennreisou1

コナラが優占する雑木林とスギの人工林との境界付近で凜と咲く花に目が吸い寄せられた。

ユリ科の多年草で“シロバナエンレイソウ”という。
北海道大学の校章にも用いられているこの花だが、なるほど実に整った姿をしている。

ところで、この植物。春の訪れをいち早く察知し、枯れ葉色の林床で大きな葉を拡げ、そして花を咲かすのだが、この植物の開花期に葉を繁らせている植物はそう多くはない。
厳しい冬を乗り切った動物たちは腹を空かせていて、どん欲なまでに食べ物を漁る時期なので、食べられるものであれば彼らの餌となっているはずなのに、この植物の葉や花に欠損(食痕)があるのを不思議なほどに見かけない。

このことに気付いたのは一昨年の春で、このブログでも触れたのだが、ようやくそのわけがわかった。
※その時の記事は→こちらから

この植物は、毒草だったのだ。
トリリンやサポニンといった物質を全草に含み、嘔吐や心臓麻痺を引き起こし、時には死に至ることもあるほどの毒性を持っているらしい。
もっとも、苦みが強く口に入れてもすぐに吐き出してしまうので、致死量を摂取することは少ないようだが、川場村では“うりっぱ”と呼ばれるギボウシの新芽と、このシロバナエンレイソウの新芽がよく似ていることから誤食事故もあったようだ。

20100505sirobanaennreisou2毒性を知ってのことなのか、苦みが食欲を抑えるのか、彼らに聞いてみないことには分からないが、カモシカやイノシシなどが闊歩する林内で綺麗な姿を見せてくれるのには、それだなりの意味があったわけだ。

20100505 シロバナエンレイソウ(後山)
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2010年5月 4日 (火)

疥癬症の再流行

20100504kaisennshou

一時なりを潜めていたかに思えた疥癬症が再び流行りだしたようだ。

写真は、後山の山裾に仕掛けた自動撮影装置のものだが、村内他所でも疥癬症と思われる個体が記録されるようになった。

疥癬症は別名“ひぜん”ともよばれ、その名が示すように、ヒゼンダニ科のダニが皮下に寄生することによってひきおこされる皮膚感染症である。
ヒゼンダニにも数種有り、イヌやキツネ、タヌキなどに疥癬症を引き起こすのは“センコウヒゼンダニ”、ネコ、アライグマ、ハクビシンなどのものは“ショウセンコウヒゼンダニ”という種類なのだそうだ。

もちろん人間にも疥癬症は存在し、科名と同じ“ヒゼンダニ”がその症状を引き起こす。
寄生するダニは宿主を選ぶために、野生動物から人への感染は無いといわれている。

宿主に取り付いたダニは、皮下に潜り、角質下に“疥癬トンネル”と呼ばれる穴を掘りながら活動するのだが、このときに激しい痒みを感じさせる。

健康な個体には感染せず、弱った個体に感染、発症させるというのだが、時には死に至ることもあるという。
痒みによって死に至るというのは、どれほど苦しいことだろう。

疥癬症が沈静化することを期待したい。

上:20100410 疥癬症のアナグマ(後山)
下:20100420 同じくタヌキ(後山)
自動撮影装置

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2010年5月 3日 (月)

生き物たちの時計合わせ

20100503usubasaisinn1カタクリの群生地に、人の目を惹かない地味な花を咲かせている植物をみつけた。
よく見ると、そこかしこにある。

ウマノスズクサ科のウスバサイシンだ。

ウスバサイシンは、ヒメギフチョウという可愛らしい蝶の幼虫が食草としている。
ヒメギフチョウは、川場村では一度しか確認ができていないが、以前に比べると、ウスバサイシンの株数が増えているようなので、これから次第に戻ってきてくれることを期待している。

ヒメギフチョウは、その名のとおりギフチョウの近縁種なのであるが、ギフチョウとヒメギフチョウは地域的に綺麗に棲み分けており、その棲み分けの境界線は、ギフチョウ・ヒメギフチョウの学名から“ルードルフィア・ライン”と呼ばれている。

川場村は、このうちのヒメギフチョウ生息域に入っている。

ヒメギフチョウは、年1化性の蝶で、一年のうちカタクリに代表されるような“春植物(スプリング・エフェメラル)”と呼ばれるような植物の出現時期にしか、その姿を見ることはできない。
ギフチョウやヒメギフチョウがカタクリの花を訪れ吸蜜している姿は、春の生態写真の定番になっているが、ごく自然なことなのである。

そして、このウスバサイシンが葉を繁らせる時期が重ならなければ、ヒメギフチョウの幼虫が成育することはできなくなる。

ウスバサイシン自身は、ヒメギフチョウに花粉を運ばせる植物ではなく、ハエを花粉運搬者に選んでいるので、一方的に食草にされてしまっているのだが、カタクリが花を着ける時期にウスバサイシンも成長を始める、そしてその時期にヒメギフチョウが羽化をする。
まるで、お互いが協定を結んでいるかのようなこの関係が成立していることがとても面白い。

それぞれに春の訪れを感知する仕組みは違うはずだし、春の訪れ自体は、日の長さや気温や地温の上昇によって知ることができるとしても、それ以前に準備を始めていなければ、蝶は羽化を迎えることはできないし、花は開花することはできないのだから、なかなかに難しいタイミング合わせなのである。

時計もカレンダーも持ち合わせない生き物たちが、どのようにして季節の移ろいを計っているのか、とても不思議なことである。

20100503usubasaisinn2

20100426 ウスバサイシン
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2010年5月 1日 (土)

グリーンスネーク?

20100501katakuri

長い舌をちろちろさせながら、一匹の蛇が辺りを窺っている。
蛇の中でも、躰は細く、そして猛毒の持ち主…

そんなことをつい想像してしまう光景に出遭った。

この“毒蛇”の正体はカタクリである。
カタクリの花弁が散った後、雌しべを残して子房がふくらみ始めている状態だ。
このあと、子房の中で種子が成長し、5月中旬には弾けて新しい個体としての成長を始めることだろう。

20100501katakuri2_2まだ綺麗な花を咲かせている株も若干残ってはいたが、多くの株は花期を終えようとしていた。

カタクリの花が散ると、いよいよ川場村の春も深まり、新緑のシーズンを迎える。

虫たちも一斉に活発さを取り戻し、賑やかな季節がやってくる。

20100427 カタクリの子房
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