麗人の毒
コナラが優占する雑木林とスギの人工林との境界付近で凜と咲く花に目が吸い寄せられた。
ユリ科の多年草で“シロバナエンレイソウ”という。
北海道大学の校章にも用いられているこの花だが、なるほど実に整った姿をしている。
ところで、この植物。春の訪れをいち早く察知し、枯れ葉色の林床で大きな葉を拡げ、そして花を咲かすのだが、この植物の開花期に葉を繁らせている植物はそう多くはない。
厳しい冬を乗り切った動物たちは腹を空かせていて、どん欲なまでに食べ物を漁る時期なので、食べられるものであれば彼らの餌となっているはずなのに、この植物の葉や花に欠損(食痕)があるのを不思議なほどに見かけない。
このことに気付いたのは一昨年の春で、このブログでも触れたのだが、ようやくそのわけがわかった。
※その時の記事は→こちらから
この植物は、毒草だったのだ。
トリリンやサポニンといった物質を全草に含み、嘔吐や心臓麻痺を引き起こし、時には死に至ることもあるほどの毒性を持っているらしい。
もっとも、苦みが強く口に入れてもすぐに吐き出してしまうので、致死量を摂取することは少ないようだが、川場村では“うりっぱ”と呼ばれるギボウシの新芽と、このシロバナエンレイソウの新芽がよく似ていることから誤食事故もあったようだ。
毒性を知ってのことなのか、苦みが食欲を抑えるのか、彼らに聞いてみないことには分からないが、カモシカやイノシシなどが闊歩する林内で綺麗な姿を見せてくれるのには、それだなりの意味があったわけだ。
20100505 シロバナエンレイソウ(後山)
NIKON D300 105MICRO
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