十二単
雪解け後から梅雨入り前までに、林道脇などの薄日が射すようなところで、目立たず静かに、それでいて高貴さを漂わせながら咲いている花がある。
シソ科キランソウ属のジュウニヒトエだ。
多くの花が重なり合うように咲く様を、平安時代の高貴な女性の衣装である“十二単”に見たてたのがその名の由来だとされるが、全草を覆う細かい毛に春のやわらかな光が反射し、靄がかかったように見えることも風雅な名を持つ所以なのではないだろうか。
わが国固有種であるとされており、乾燥後煎じたものは胃健薬として用いられていたようだ。
ジュウニヒトエの花は、雄しべも雌しべも併せもつ“両性花”なのだが、まず始めに花粉を包む葯(やく)が発達し、蜜を求めてやって来た虫に花粉を運ばせ、その後に雌しべ(柱頭)が生長し受粉可能となる。
つまり、雄花の時期(雄性期)があり、その後に雌花の時期(雌花期)を迎えることで、自家受粉を行わず、他の個体の遺伝子を取り込んで次世代をつくるという繁殖のための工夫を凝らしている花なのだ。
一つ一つは1cmにも満たない小さな花なのに、どのようにしてこんなにも巧妙な工夫を身につけたのだろうか。
20100508 ジュウニヒトエの花(後山)
NIKON D300 105MICRO
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コメント
yuriさん!
またまたこんにちは!
そうなんですよ!
名前って、ただの識別記号じゃつまらないですもんね!
投稿: くま | 2010年5月24日 (月) 14時42分
くまさん、こんにちは!
純日本風の名前のつけ方、いいですよね!
投稿: yuri | 2010年5月24日 (月) 10時44分
yuriさん!
こんばんは!
ジュウニヒトエ、川場村では決してめずらしい植物ではありませんが、全国的には数を減らしているようですね。
絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定している県も少なくないようです。残念なことですね。
人が森林(やま)を活用していること。
けれど、除草剤などを多用していないこと。
等々が大切なのです。
それにしても、ジュウニヒトエにヒトリシズカ、ムラサキシキブetc.と雅な名前の植物があること=命名者の教養ある遊び心が嬉しいですね!
投稿: くま | 2010年5月23日 (日) 21時05分
くまさん
こんにちは。
十二単という花、はじめて知りました。
川場村では、よく見かける花なのでしょうか。川場村の花々の豊富さにはいつも驚かされます。次回はどんな花を紹介してもらえるか、とても楽しみです!
投稿: yuri | 2010年5月23日 (日) 20時56分