ゐのしし
既に紹介したように、“うぃっ、うぃ”と鳴く動物(=シシ)だから“うぃのシシ”。
転じて“ゐのしし”となったという説もある。
自動撮影装置に記録されたイノシシの群を見ていると、深夜のヒロイド原で何頭ものイノシシが“うぃっ、うぃ、うぃ”と鳴きながら、鼻先で地面を掘り返して、クズの根やユリの球根、ミミズやカブトムシの幼虫など、大好物を探し回っている姿が目に浮かぶようだ。
写真には4頭のイノシシが写っているが、昨年の7月に記録された“うり坊”たちかもしれない。
だとすると、ずいぶん大きくなったものだ。
来年には、子を成すだろうから可愛い“うり坊”に再び出逢うことができるかもしれない。
ところで、このブログでも度々紹介してきたことだが、川場村には10年ほど前まではイノシシはほとんど棲息していなかったと考えられている。いたとしてもごく僅かで、現在ほど多くはなかったことは確かである。
一般には、地球温暖化の影響で、イノシシの棲息範囲が拡大しつつあると説明されることが多いのだが、これについてはもう少し慎重な検討が必要だ。
地球温暖化による気候変動が、イノシシの棲息可能範囲を拡げたというように、直接的に作用していることも可能性としてはあろう。
けれども、動物・植物に留まらず、菌類にもおよぶ、凡そありとあらゆる世界に地球温暖化は影響を及ぼしているはずだ。
だとすると、「暖かくなったからイノシシが移り住むようになった」という単純明快なストーリーでは語り尽くせない現象である可能性もあるのだ。
ある地域の環境が変化したことで、ある種の細菌が増殖しイノシシの成育を阻害するようになり、川場村に移動してきたのかもしれない。
イノシシが好んで食べる植物が棲息範囲を拡大したことで、その植物を求めてイノシシも移住してきたのかもしれない。
可能性は無限にあるのだ。
そして、もしかしたら、在来所植物を駆逐してしまうような生物が川場に侵入しつつあって、その生物をイノシシが食べることで増殖を抑える働きをしているのかもしれないし、またあるいは、川場村に棲息していたある種の生物が、温暖化の影響で川場村を出て行ってしまい、その生物が生態上担っていた役割(ニッチ)をイノシシが肩代わりをしているのかもしれないのである。
イノシシが増えて農作物を食い荒らし始めた。
それは地球温暖化の影響であるし、昔は川場村にはイノシシはいなかった。
だから、全面的に駆除をしてもだいじょうぶ。
そんな短絡的な判断で対処できるほど単純な現象ではない。
森林(やま)づくりは単純な作業ではない。
だからこそ、面白いのである。
20100511 イノシシの群(ヒロイド原)
自動撮影装置
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コメント
ピッコロさん!
お邪魔だなんてとんでもありません!
拙いブログで恐縮ですが、これからもよろしくお願いいたします。
投稿: くま | 2010年6月 6日 (日) 22時05分
人としての生活を重視するのは当然ですが、地球には人だけが住んでる訳じゃないので、よく考える必要がありますね。
群馬の自然について知るいい機会のなので、今後もBLOG拝見させていただきますね。
急におジャマしてすみませんでした。
投稿: ピッコロ | 2010年6月 6日 (日) 18時18分
ピッコロさん!
はじめまして!
野生動物と人間のつきあい方については、様々な問題が山積みですが、なんとかより良い途を探っていきたいと考えています!
投稿: くま | 2010年6月 5日 (土) 15時28分
仙台、それもわたしの住んでいる北部にはまだイノシシの影響はありません。
自然界は少しずつでも絶えず変化しているので、なんでもかんでも駆除というのは、ちょっとおかしいとわたしも思ってます。
投稿: ピッコロ | 2010年6月 5日 (土) 15時03分