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2010年6月の20件の記事

2010年6月30日 (水)

『草花のふしぎ世界探検』

20100630kusabananohusigisekaitannke ピッキオ編著:『草花のふしぎ世界探検』、岩波ジュニア新書、(2005年初版)

学生たちの学外実習を行うために長野県の佐久・軽井沢方面に足を延ばしてきた。

この地方のカラマツを中心とした木材生産の現場や、集成材加工工場の見学に加えて、全国的にも名高いピッキオのネイチャーガイドも体験してきた。

私の関心事は、もっぱら「川場での自然体験プログラムに活かすことができる何かがあるか」ということだったのは云うまでもない。

参加者一人一人にきちんと目を配り、参加者の興味や関心を引き出しながら、軽井沢の自然を楽しく、そして丁寧にガイドする姿は川場村のスタッフにも大いに参考にして欲しいと強く感じた。

さてさて、それはともかく。
重度の活字中毒者でもあり、新書マニアでもあり、ご当地本蒐集家でもある私は、どこへ出かけても出来るだけ訪問地と縁の深い書籍を探すように心がけている。

ピッキオのビジターセンターで出逢ったのがこの本である。

日本野鳥の会の創設者でもある中西悟堂氏ゆかりの“野鳥の森”を拠点とするピッキオだけあって、さすがに地に足のついた観察をベースにした、他に類を見ない一冊だ。

アズマイチゲの蕾が開き、また閉じるまでを丹念に追っていったり、マムシグサが年によって性転換することを何年間にも渡る記録を元に検証したり、ツリフネソウの昆虫を利用した花粉媒介の仕組みをわかりやすく解説したりと、一所に拠点を置くメリットを最大限に活かした活動が、平明な文章と美しい写真で綴られている。

私のように、フィールドに“通う者”には手の届かない、フィールドに起居する者だけが目にすることが出来る植物の“ふしぎ”を紹介してくれる好著である。

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2010年6月28日 (月)

飯田裕子さんの写真展

20100628shasinntenn_2 川場村を撮り続けている飯田裕子さんの写真展が、中野地区の宮田果樹園さんの“ギャラリー蔵”で開催されます。

“ギャラリー蔵”は古くから大切にされてきた宮田家の土蔵を利用したとても落ちつく空間です。

飯田さんがここで写真展を開催するのは今回で5回目。
川場村にとっての“母なる山”である上州武尊山がメインテーマの写真展です。

開催期間は、7月7日から9月1日までの、ほぼ2ヶ月間。
長い期間の展示ですので、ぜひお出掛け下さい。

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2010年6月27日 (日)

ヨツボシトンボ

20100626yotubositonnbo

中野地区にある休耕田を利用してつくられた溜め池には、一昨年から頻繁に足を運んでいる。

川場村には、その名のとおり川は多いのだが、水の流れのない池はとても少ない。
そのため、流水域には棲息が難しい生物も少なく、あまり目にする機会がない。
そうした中で、この溜め池では、川場村のではなかなか遭うことができない生物に出逢うことができるのである。

写真のヨツボシトンボも、そうした生物の一種だ。

ヨツボシトンボの存在には、昨年の今頃になって初めて気が付いた。
ことしもいるはずだと思って溜め池を訪れると、やはりいてくれた。

トンボの仲間の幼虫(ヤゴ)は、いずれも純粋な肉食なので、トンボが棲息するということは、その餌となる水生昆虫やオタマジャクシ等が豊富な証明でもある。

多種多様な生物の存在が安定した自然環境を保ち、安定した自然環境が地域の生活を支える。

20100606 ヨツボシトンボ(中野地区)
NIKON D90 70-300

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2010年6月24日 (木)

二人静

20100624hutarisizuka

フタリシズカはセンリョウ科の多年草。
薄日が射すような初夏の林床を目立たずに彩る。

その名から推測できるように“ヒトリシズカ”と近い仲間(同属)である。
ヒトリシズカは、一人舞う静御前の舞姿に花穂(かすい)を見たてた名だと云われているが、こちらのフタリシズカもやはり静御前に因み、世阿弥の能楽“二人静”から名付けられている。

“二人静”には、源義経が愛した静御前の没後のエピソードが描かれている。
神事につかう若菜を摘みにでた女性に静御前の霊が乗りうつり、神職の者に弔いを求め舞ううちに、女性から静御前の霊が姿を現し二人で舞を舞うというあらすじである。

フタリシズカの二本の花穂を二人の舞姿に見たてたのである。

ヒトリシズカは、川場村では、4月の終わりくらいから5月中頃にかけて花を楽しませてくれるが、フタリシズカは一月ほど遅れて清楚な花を見せてくれる。
ヒトリシズカが春を告げ、その後にフタリシズカが初夏の訪れを報せてくれるのだ。

フタリシズカの花が咲く頃、森林(やま)の下刈りを始めなくてはならない。

20100606 フタリシズカ(後山)
NIKON D300 105MICRO 

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2010年6月23日 (水)

もちつもたれつ

20100623koaohanamuguri

キク科の花に取り付いて花粉をむさぼっているのは“コアオハナムグリ”。

花粉を食べにやってくるのに、躰は花粉が付きにくくなっていて、花粉媒介者(ポリネーター)としての役割はあまり果たさないちゃっかりものだ。

拙著では紹介したのだが、このハナムグリは、幼虫から成虫になるのに1年をかける個体と、2年をかける個体がいることが分かっている。
幼虫から蛹を経て成虫になったときに、気候が不順だったりして花が無い場合、一斉に孵化していたら地域的な全滅の危険性すらあるわけだが、こうした工夫が備わっているおかげでそれを回避することができるのである。
種としての保険をかけているようなものなのだ。

幼虫は、落ち葉などが土に還りかけているような“腐植”を食べて土をつくってくれている。

花にとってはちゃっかりものだが、土をつくることでお返しをしているようなものだ。

自然は本当に良くできているものだと思う。

20100606 コアオハナムグリ(ヒロイド原)
NIKON D300 105MICRO

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2010年6月20日 (日)

カモシカの体色

20100620kamosika

このところ、なんだかんだと本業(お給料をもらっているほう)が忙しくて、川場村(もらったお給料を使うほう)に脚を運ぶことができずにいる。

この時期の川場村は、まるで幼い子どもの成長のように、日々刻々と季節を進めていて目が離せない頃なのだ。
それなのに、季節の移ろいを自分の目と肌で確かめることができずにいる。
どうも精神衛生上よろしくない。

そこで、たまりに溜まっている自動撮影装置(センサーカメラ)のデータ整理をして気を紛らわすことにした。

そこで見つけたのが今日の2枚。

いずれも、後山に仕掛けたカメラが昨年の11月に記録した画像だが、ともにニホンカモシカが、同じような構図で収まってくれている。

これまでにも何度か話題にしてきたことなのだが、カモシカの体毛の色は地域ごとに似通っているのが一般的で、大別すると、西日本(南)では黒く、東日本(北)では白っぽいものが多いといわれている。
“深山の霊獣”などと云われたほど、山の奥深いところで、僅かな数の個体が棲息していたのだから、遺伝子の交流も限られていたのだろう。
だからこそ、ある地域で見られるカモシカは似たような体色だったに違いない。

それなのに川場村では、写真のように、ほぼ真っ黒な個体も、ほぼ真っ白な個体も確認することができるのである。
他にも、先日紹介したような褐色の個体もいる。

現在のところ、こうした状況を正確に分析するには至っていないが、おそらく、川場村が西日本と東日本の接するような環境にあることと、カモシカが個体数を増やしてきたことで、異なったタイプの遺伝子をもつ個体が混在するようになったことの双方が関係しているのではないかと推測している。

このような状況が、カモシカにとって吉と出るのか、凶と出るのか。
じっくりと観察を続けていかなければならない。

写真上:20091105
写真下:20091127
自動撮影装置

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2010年6月18日 (金)

カワバクロドリ

20100618karasu

小学生くらいの子ども達と森林(やま)を楽しむときに気を付けていることがある。

動物でも植物でも、すぐには名前(種名)を教えないようにしているのだ。
名前を知ると、それだけで満足してしまう子どもが多いからだ。

「あの鳥、なんていう鳥?」
と聞かれても、どの鳥を指しているのか分からないふりをすることもある。

「えっ?どこどこ?どんな鳥?」
と質問をする。
「羽がきれいでね、おっきい鳥」
などと答えが返ってきても「それじゃあ分かんないよ」
と、まだ意地悪をする。
「えーっ!あそこにいるじゃん!」
「えーっ?分からないよ」

そうこうしているうちに、子ども達はいろいろと観察を始めてくれる。

羽にはどんな模様が付いていて、どれくらいの大きさで、群れているとかいないとか。
東京でも見たことがあるとか、生まれてはじめて見た鳥だとか。

その辺りまで来てようやく名前を告げるようにしている。

これが、子どもが知っている生き物だと、言葉にも出してくれないから難しい。

梢で「カアーッ」などと鳴いているカラスなどを見つけると、わざわざ「あれなんていう鳥?」と質問をしてみる。
たいがい「カラスだよ!」などと分かったような口を利く。
「うっそー、ちがうんじゃない?」
と、たたみ掛けても、「あんな黒い鳥は他にはいないよ!」「カアーッって鳴いてたじゃん!」と自信たっぷりだ。
でも、「カラスならカアーッって鳴くけど、あの鳥はアーッって鳴いてただろ、それにカラスよりももっと黒いんじゃない?」
などと真顔でいうと、ちょっと自信が無くなってくる。

「あれはね、川場村にしかいない鳥で“カワバクロドリ”っていうんだぜ」
「カラスはカアーッ、カワバクロドリはアーッ、よく聴くと鳴き声がちがうでしょ」
川場のくまさんは嘘つきなのだ。

子ども達の“知ってるつもり”を許してしまうと、観察力も思考も停止する。
単に、名前だけを知っていてもそれだけのことだ。
名前など知らなくとも、自分自身の目でじっくり観察をするほうが、よほど大切なことだし、楽しいことなのである。

20100525 ハシブトガラス(後山)
自動撮影装置

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2010年6月16日 (水)

ホソオビヒゲナガ

20100616hosoobihigenaga

V字型の白い糸くずがフワフワと風に乗って漂っていた。
糸くずの長さは10cmほど、ヘリウムガスがだいぶん抜けてしまった風船が上がるでもなく、下がるでもなく漂っているときの動きとよく似ている。

こうして写真で見ると、躰の方が目立つのだが、飛んでいるときには不思議なほどにヒゲしか見えない。

ヒゲナガガ科に分類される“ホソオビヒゲナガ”だ。

成虫には、初夏の日中にしかお目にかかることはできない。
夏も盛りにはいると、静かに姿を消してゆく。

体長は2cmほどしかないのに、その数倍もの長さのヒゲをもっている。
もっとも、これほどまでに長いヒゲは雄にしかなく、雌のヒゲは雄のものの半分もない。

雄はヒゲが長すぎて上手く翔ぶことができず、タンポポの綿毛のように、ヒゲに風をうけて漂っている。
この長いヒゲは雌の発するフェロモンをいち早く察知するための感覚器官だと考えられているのだが、フェロモンを発する雌を発見できても、雄の行動は風任せ。
雌の臭いは風に乗って風上から、雄自身は風に乗って風下へ。
こんな状態でよく子孫を残せるものである。

20100606 ホソオビヒゲナガ(後山)
NIKON D300 105MICRO

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2010年6月15日 (火)

おしい!

20100615sijuukara

後山の自動撮影装置に面白いものが写っていた。
画像を確認していて「おしい!」と、つい声に出して独り言をいってしまった。

被写体が近すぎて、ピンボケもいいところだが、シジュウカラである。

これで、もう少しでもピントが合っていて、フレームの真ん中に収まってくれていたら最高だったのに。

それにしても面白い。

野鳥に詳しい人ならば、おそらく百も承知のことだろうが、シジュウカラのトレードマークである胸のネクタイが尾羽の先まで続いていたとは知らなかった。

この場所は、常時水が浸みだしている数少ないポイントで、ニホンカモシカをはじめ、タヌキやハクビシン、ホンドリスなどが頻繁に水を飲みに来るポイントなのだが、こんなふうに小鳥が写ったのは初めての経験だ。

20100615 シジュウカラ(後山)
自動撮影装置

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2010年6月14日 (月)

あたりまえの大切さ

20100614monnkityou_2

ようやく萌えだした草木が枯れ葉色の野山を覆ってきた。

穏やかな日差しの中で、一頭のモンキチョウがヒメジョオンを訪れて吸蜜している。

どちらも希少種ではない。
川場村まで出かけなくとも、世田谷区でも当たり前に目にする光景だ。

“自然保護”とか“生物多様性”とか、そんな言葉を覚えたての頃は、珍しいものや風変わりなもの、とくに絶滅危惧種などにリストアップされているようなものに目が行きがちだ。
もちろん、そうした生物は観察の機会も少ないのだから、機会があればじっくり見ておくとよい。

けれど、忘れずにいたいことがある。

あたりまえのように、どこにでもいる生物が生態系を維持するうえでは重要な役割を任じているのだ。
なのに、普通種は写真に撮られることも少ないし、研究対象になることも、保護の対象となることも稀だ。

モンキチョウには、雪解け直後から次の降雪直前までの季節ならば、いつでも出遭うことができる。

20100606 モンキチョウ(ヒロイド原)
NIKON D90 70-300

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2010年6月13日 (日)

トド玉

20100613tododama

野生動物による農作物や生活への被害状況を調査するために、少しずつ川場村の農家を訪問させていただいている。

太郎地区のある農家を訪ねると、“サルが出るとトド玉を使うこともあるんだけれど逃げるのはその時だけだなあ”という話になった。
中野地区のリンゴ農家は、クマ対策に使うとも言っていた。

写真がその“トド玉”である。
北海道の花火業者である(株)小原商店が“轟音玉”の商品名で製造販売を行うもので、経済産業省への登録は“動物駆逐用煙火”となっている。
“トド玉”という呼称は、北海道の漁師たちが漁場を荒らす海獣のトドを追い払うために使うことから付けられ普及したようだ。

約4cmほどの球体の中に火薬が入っており、導火線の先のピンク色の部分に着火すると10秒ほどして火薬に引火し轟音を発する仕掛けになっている。
昨年、改良が施されたのだが、それ以前は持ち手(写真の赤いシール部分)が無く、球体を手に持って着火するようになっていた。
何故か、火は導火線の内部を伝って火薬に達する構造になっており、その間は煙もたたず、火も見えないために、着火に失敗したと思って球体を握ったままでいて手指を失ったり、火傷を負ったりといった事故が何件もあったようだ。

免許取得者でないと、使用ばかりではなく、譲渡することもできないという危険物なのである。
国の管轄は経済産業省原子力安全・保安院保安課だというから、なんとも恐ろしい。

野生動物との共存というのは、言葉では美しいが、口でいうほど簡単なものではない。
それでも見つけ出さなければならない途だと思っている。

20100606 トド玉
RICOH GR DIGITALⅡ

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2010年6月12日 (土)

落とし文の季節

20100612higgenagaotosibumi

春のものとも初夏のものとも感じられるそよ風が肌に心地よい。

林道をのんびり歩いていると、展葉をはじめたアブラチャンの葉裏で信じられないような重労働に勤しむ一匹の小さな昆虫を見つけた。

雌の“ヒゲナガオトシブミ”だ。

この後、葉に卵を一つ産み付けると、そこを中心に器用に巻いていく。
やがて、卵から孵った幼虫は、自分の周りにある葉を食べて生長するのである。
いわば、食材でできた揺りかごで“揺籃(ようらん)”と呼ばれている。

写真の個体は、葉の中央に走る、主脈と呼ばれる葉脈に噛み傷を付けて、葉に水分と養分が届かないようにしてから、葉を縦半分に折りたたもうとしているところだった。

1cmにも満たないこの昆虫にとって、一枚の木の葉をくるくると巻いていく作業というのは、どれほどの重労働なのだろうか。
葉の長さだけで、体長の10倍近いし、幅だって5倍程度はあろう。
葉の厚みにしても体長の10分の1はある。
仮に身長が150cmの人間の女性ならば、長さ15m、幅7.5m、厚み15cmのシートに、手脚と口(歯)だけで挑んでいるようなものだ。

躰の仕組みも、力を出す機構も、人間とは全く異なる生物なので、人間に例えることにあまり意味はないのだが、それでも驚嘆すべき大仕事である。

ヒゲナガオトシブミが揺籃をつくる時期もそろそろ終わりを迎える。
木々の葉が、次第に堅くなり、同時に昆虫にとって有害な物質を貯め込みはじめるから、幼虫の餌にはむかなくなるのだ。

こんな小さな虫たちも、森林(やま)の時の流れを教えてくれる。

※“落とし文”の名の由来は→こちらから

20100606 揺籃を巻くヒゲナガオトシブミ(友好の森)
NIKON D300 105MICRO

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2010年6月11日 (金)

おじい?

20100611kamosika

後山の麓のセンサーカメラ(自動撮影装置)に、いつものように一頭のニホンカモシカが記録された。

頬からあごにかけてたくわえた豊かな顎髭、けっして楽しいことばかりではなかった人生のはずなのに、それをおくびにも出さないやわらかな眼差し。
きちんと歳を重ねてきた老爺のようだというのが第一印象だった。

けれども、写真をじっと見ていると、どうも体つきがやさしい。
もしかしたらと思い、角の部分を拡大してみると角輪の間隔が不均等だ。

以前にも触れたように、ウシの仲間であるカモシカには、雄ばかりではなく雌にも角が生え、ニホンジカなどとは違って角が生え替わることなく伸び続ける。
そして、餌の豊富な夏は角の生長も良く、逆に餌が不足する冬には角の生長が遅くなる。
そのため、一年に一つの段々ができることになる。
この段々を“角輪(かくりん)”という。

さらに雌の場合、妊娠・出産という、膨大なエネルギーを必要とするイベントがあった年には、角の生長にもブレーキが掛かり、結果として不均等な間隔の角輪が形成されることになるのだ。

つぶらな瞳の好々爺然としたこのカモシカは、実は経産雌なのだった。

人間の女性を相手に、こんな間違いをしでかせば、こっぴどくとっちめられてしまいそうだが、カモシカは許してくれていると思いたい。

幻の霊獣はそんな些細なことでカリカリしないのだ。

20100529 ニホンカモシカ(後山)
自動撮影装置

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2010年6月 9日 (水)

袋角のニホンジカ

20100609hukuroduno

今月の初め、すっかり夏毛に装いを替えた雄鹿が記録された。
木洩れ日の中で目立たない保護色だ。

頭を見ると、枝分かれを始めた袋角が生えている。
昨年、袋角を生やした雄鹿を確認したのが5月29日のことなので、ほぼ例年どおりの生長と考えて良いだろう。
※昨年の様子と“袋角”の説明は→こちらから

この袋角には薬効が認められていて、漢方では“鹿茸(ろくじょう)”と呼ばれ、とても珍重されている。
目眩や耳鳴りの特効薬である他、男性の機能回復や強壮、自律神経失調症の改善や更年期障害の逓減など、様々な症状に顕著な効果があるという。

漢方では、もちろん中国やロシアなどに棲息する鹿から鹿茸を得るのだが、最近の研究では、北海道に棲息するニホンジカ(エゾシカ)の袋角にも同様の薬効が確認され、エゾシカの利用拡大に一役買ってもいる。

川場村でも、近年、ニホンジカ(ホンシュウジカ)による農作物被害がジワジワと拡がりを見せつつあるなかで、有効な対策を講じる必要性が高まってきており、適正な頭数管理の実施が望まれている。
エゾシカとホンシュウジカは、亜種レベルの違いしかないので、川場村でも袋角の利用を検討してみても良いのではないだろうか。

森林(やま)づくりの仲間であるニホンジカを絶滅の憂き目などに併せることなく、地域社会との共存をはかる為には、人間の利用に供することであると思っている。
もちろん、専門家によるきちんとした調査結果に基づいた行動が必要であることはいうまでもない。

20100603 袋角を生やしたニホンジカ(ヒロイド原)
自動撮影装置

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2010年6月 8日 (火)

ルリイトトンボ初認

20100608ruriitotonnbo

このところ、昆虫に関しては初認続きである。
初認といっても、私は川場村では初めて見た、という意味に過ぎないので、他の人にとってどうだかは定かではない。
それにしたって、年甲斐もなくちょっと興奮する。
興奮すると、顔面からの発汗が促されるようで、たちまちカメラのファインダーがくもり、写真がとりにくいことおびたたしい。

というわけで、今日紹介するのも初認のルリイトトンボである。

名前のとおり瑠璃色を基調とした美しいイトトンボで、眼球の後ろにも瑠璃色の斑があること、胸部に黒線が入ることなどが同定の目安だ。

とまっているクローバーとの比較でもお分かりいただけることと思うが、目の先から尾の先までの体調は3.5cmほどで、イトトンボの仲間の中でも比較的小型の種である。
けれど、鮮やかな色彩のためか、一回りも二回りも大きく見え、存在感のあるトンボだ。

池の縁に生える植物の茎などに捉まって蛹になり越冬する。
その後5月下旬から羽化するようだが、成虫になった個体はしばらく森林の中で暮らし、その後、6月初旬に池の傍に戻ってきてパートナーを探し、産卵するという生活史をもっている。

このトンボも、やはり森林(やま)なしには生きていくことができないトンボであるようだ。

20100606 シロツメクサで休むルリイトトンボ
NIKON D90 70-300

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2010年6月 7日 (月)

トラフシジミ初認

20100607torahusijimi

今年は春の訪れが遅く、農作業にも多くの不安を残したまま農繁期に突入したのだが、6月6日は、汗ばむほどの陽気の中で、虫たちも一斉に活動を始めたようだった。

昨年の今頃の時期にヨツボシトンボを見つけた溜め池に足を運んだ。
池の上には、様々な種類のトンボが飛び交い、水中では数え切れないほどのオタマジャクシが絡まり合うように泳いでいる。

ふと、池之端に群生する蕗の葉の上に目が吸い寄せられた。

はじめは、ウラナミシジミかと思ったのだが、カメラのレンズ越しによく見ると模様がはっきりとしている。
次に、アカシジミまたはムモンアカシジミかとも考えたのだが、色合いがだいぶん違う。
頭の中で、昆虫図鑑のシジミチョウの頁を急いでめくってもなかなか辿り着かない。

そのうちに、ひらめいた。
“トラフシジミ”だ。
帰宅して、急いで図鑑やネット上の情報をたよりに調べると、やはりそうだ。

後端にひょろりと出ている“尾状突起”、その傍のオレンジ色に囲まれた四つの黒点。
何よりも“虎斑”の名の由来となっている、翅裏の縞模様。

この蝶もまた、私にとっては川場村初認である。

翅表の、光沢ある瑠璃色の輝きは見ることができなかったが、翔びたつ前に何枚かの写真に収めることができた。

全国に分布するのだそうだが、何故か個体数が非常に少なく、目にできたのはとても幸運なことだったようだ。

幼虫は、クズやフジ、ウツギなどの花・蕾・実を食べて育ち、蛹で越冬をする。

20100606 春型のトラフシジミ(中野地区)
NIKON D90 70-300

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2010年6月 6日 (日)

☆3周年!☆

20100606sannshuunenn

自分でもびっくりしています。

川場村での森林(やま)づくりを進める中で、面白かったことや、大切だなと思ったことなどを多くの方々にお伝えしたくて開設したこのブログが、なんと3周年を迎えました。

実は、他人様に何かをお伝えしようなどと云うことが、おこがましく、図々しい考えであることが、記事を重ねるごとに身にしみてきました。

このブログを開設したことで、本当に沢山の方々とお知り合いになることができました。
動物のこと、植物のこと、民俗や文化のこと等々、これまで知らなかったような多くのことを知るきっかけもこのブログがプレゼントしてくれました。

結局、このブログは、私自身のために在ったようです。

いつ、ネタが尽きるかとヒヤヒヤもしながら毎回の記事をアップしてきましたが、それも杞憂であるようです。
なぜなら、川場村も、川場村の森林(やま)も生きているからです。
生きて変化を続けていますので、ネタがなくなることなどなさそうです。
もし、記事が続かなくなるとすれば、物事を“面白い”と思える、私の感性や体力がなくなったときなのだと思います。

本日、6月6日の川場村は、春と夏が同時にやって来たような快晴で汗ばむような天候の一日でした。

これからも、川場村の森林(やま)を愉しませていただきたいと思っています!

20100606 快晴の生品地区にて
RICOH GR DIGITALⅡ

※3年間の記事数:770件 アクセス数:111895件

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2010年6月 3日 (木)

てんとうむし

20100603tenntoumusi

現在の正式和名は“ナミテントウ”。
かつては“テントウムシ”とそのまま呼ばれた時期もある。

七つの斑紋をもつ“ナナホシテントウ”とともにテントウムシの仲間の代表格だ。

テントウムシの名は、太陽に向かって飛翔する姿から名付けられたと云われていて、太陽を神格化して呼ぶときに“お天道様”というが、まさにこの名が付けられた。
個人的には、この虫は、ひらがなで“てんとうむし”というのがお似合いだと思っている。

よく知られているように、成虫も幼虫も、アブラムシを補食することから農業分野では“益虫”と呼ばれている。

翅の斑紋にはとても多くのバリエーションが見られ、ナナホシテントウのようなものから、無地のもの、カメノコテントウと見まがうようなものまで実に多様性に富んでいる。
同じ種類の昆虫で、こんなにもバリエーションが豊かなものもめずらしいのではないだろうか。

自然界には、害虫も益虫もなく、それぞれの生物が、それぞれの役割を持って生きているのであるが、もしこの小さな虫がいなかったら地域の生態系は成り立たず、心潤してくれる景観も成立していなかったに違いない。
それほど大量のアブラムシを食べてくれているのだ。

彼らもまた森林(やま)の担い手である。

20100515 交尾中のナミテントウ(ヒロイド原)
RICOH GR DIGITALⅡ(トリミング)

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2010年6月 2日 (水)

謎多き動物

20100602hakubisinn2

後山の麓に設置してある自動撮影装置に、ある動物の尻尾が写し留められた。

この尻尾の持ち主は、スイカを刳りぬくようにしてきれいに中身を食べたり、リンゴやブドウの木に登ってなっている実を食べてしまうというような、農業被害を引き起こす動物である。

また、人家の屋根裏などに知らぬ間に巣を作り、糞尿などで天井板にシミと強烈な臭いを付けてしまうような生活被害をもたらす動物でもある。

写真に見られるような太くて棒状の尾、短い手脚、鼻筋に走る白いライン。

もうお分かりだろう。ハクビシンである。

20100602hakubisinn1わが国に棲息する哺乳動物のうちで、唯一のジャコウネコ科の動物で、古い時代の文献記載がないことや、化石が発見されていないことから外来生物ではないかとも云われているが、真相のはっきりしない謎の生物である。

川場村でも、村内の至るところに棲息しており、夜に車を走らせていたりするとヘッドライトの中に彼らの姿を認めることもしばしばである。

最近になって、村内の様々な方々に、野生動物被害の状況を伺ってまわっているのだが、どうやらこのハクビシンが最も多くの被害を出している動物のようだ。

高気密の冬でも暖かい家屋が増えたことなども、ハクビシンの個体数を増やし、結果として被害を増大させているようなのだが、地域の人々に温かい家に住むなということもできはしないし、どのようにこの動物と付き合っていったらよいのだろう。

上:20100513 下:20100504 ハクビシン(生品地区)
自動撮影装置

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2010年6月 1日 (火)

金襴草

20100601kirannsou1

シソ科のキランソウ。
先日紹介したジュウニヒトエと近い種で、両種ともにキランソウ属に分類されている。
外国産の近縁種は、“セイヨウキランソウ”や学名の一部をとって“アジュガ”等の商品名で園芸品種としても出回っている。

キランソウは、漢字では“金襴草”と表記されることが多い。
“金襴”とは金の平箔や金糸で紋様を織りだした布地のことで、地を這うようにひろがる本種をこの布に見たてた名であるといわれている。

また、このキランソウには、薬効も認められていて、“筋骨草”という生薬名も与えられている。
開花期の全草に、高血圧・鎮咳・去痰・解熱・健胃・下痢止めなどの効果がある。
この薬効から、地獄の窯(=入口)に蓋をして死者を出さないという意味の“地獄の釜の蓋”という別名で呼ばれることもある。

20100601kirannsou2ジュウニヒトエの花茎が地際から立ち上がるのに対して、本種は這うように花や葉を展開するという違いがあるが、一つ一つの花を見ると、なるほど同属に分類されだけあってとてもよく似た形状をしている。

両者は雑種をつくることもあり、この雑種は“ジュウニキランソウ”という名を与えられている。

川場村では、雪解け直後から初夏までの比較的長い間、花を咲かせているが、地を這う形状からか存在に気づかない人も多い。

20100516 キランソウの花(後山)
RICOH GR DIGITALⅡ

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