秋の花
リンドウは、秋を代表する山野草だ。
それなのに、私が川場村でリンドウの開花を見ることができたのは今回が初めてのことだった。
もちろん、私の目が曇っていることも大きな原因には違いないが、それだけではない。
本来、リンドウは人里の、それも、よく草刈りが施されたところに出現する植物なのだ。
だから、人々が森林(やま)の恵みを得るために道普請を行ったり、屋根を葺くために茅場を利用したり、そういった営みが少なくなるのと歩調を合わせて数を減らした植物なのだ。
今回は、後山(虚空蔵山)の道脇で出遭うことができたのだが、ここ数年間、村の施策として後山の整備に力が入れられ、村民を主体にしながら、村外者の協力も得て間伐や草刈りなどが熱心に行われた結果が、今年の開花となって現れたのだと思う。
かつて、あたりまえにあった風景に出遭えなくなりつつあることを憂う気持ちが、森林(やま)をまもる原動力なのだと思う。
いつでも傍に在る、身近な存在の価値に気づき、あたりまえの存在を大切にするというのは難しいものである。
いつも失ってから気づく。
後山で出遭うことができたリンドウも、後山の整備が一過性のものに過ぎなければ、再び静かに姿を消していくだろう。
森林(やま)を守り育てていくということは、なかなか難しいものであるようだ。
(2010/10/16 後山)
NIKON D300 28-300
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