秋景色の中で
農山村では、取り立てて珍しくない秋の風景。
柿の木を彩る実が美しい。
柿渋を採って漁具を染めたり、干し柿を冬の蓄えとしたり、様々に利用したため、かつてはどの家の庭にも植えられていた。
けれど、若者は都会で就職し、残された者は高齢化し、用に供されなくなって、たわわに実った柿の実がそのままに冬を迎えることも多くなった。
このところ連日のようにツキノワグマ出没のニュースが伝えられている。
たしかに、躰も大きく、力も強いツキノワグマは、地域の生活者にとっては怖ろしい存在でもあるし、苦労をして育てた農作物を荒らされれば心穏やかではいられない。
日中にも出没するということになれば、子ども達に「おもてで遊べ」というのにも躊躇せざるを得ない。
クマが棲む地域に住む者の心情は、クマの棲まない地域に住む者にはなかなか理解できないことなのだ。
採りきれない柿や栗の実が放置されていれば、クマが寄り付くことは、農山村の住民で知らない者はいないだろう。
それでも、実を採っておくことも、樹を切り倒してしまうこともできない現実がある。
クマがでてから猟友会を頼むことも、慌てて電気柵で畑を囲うことも、否定はできないが、そうした行為は、熱が出たから解熱剤を服用するのと同じ“対症療法”である。
本来は、熱など出さずにすむように、まず予防的な行為に気遣い、そして発熱時には、その原因を探り“根治的療法”を行わなければ、いつまでたっても同じことの繰り返しとなる。
野生鳥獣の保護と安心できる地域生活の両立を図るためには、静かな農山村の風景の中に柿の実が鮮やかなことを愛でるばかりではなく、柿もぎで賑やかな風景を取り戻さなければいけないのだと思う。
(2010/10/16 生品地区)
NIKON D300 28-300
| 固定リンク
「川場のけものと鳥たち2010」カテゴリの記事
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
ryuji_s1さん
はじめまして。
コメントありがとうございます。
今は未だ良いのですが、雪景色の中で、柿やリンゴの実が目立つようだと、それは美しくも寂しい風景なのです。
投稿: くま | 2010年10月25日 (月) 13時28分
柿の実がいっぱい
秋の風物詩ですね
素敵な風景ですね
投稿: ryuji_s1 | 2010年10月25日 (月) 08時48分