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2010年12月14日 (火)

座鹿(くらしし)

20101214kamosika

先日、世田谷区民健康村なかのビレジのスタッフが綴るブログを見ていると、ニホンカモシカのことを、川場村の人々は“くらしし”と呼んでいたことが紹介されていた。

多くの方々に野生動物に関する話を聞いてまわっているのだが、全くもって初耳であった。

“しし”は肉用動物全般を指す言葉であることは分かっているので、残りは“くら”である。

気になって調べてみると、環境省の生物多様性センターが1987年に出している報告書の中で、カモシカの古名・地方名について整理されていた。

かもしし・あおしし・けらしし・にく・にくしし・いわしし・いぬしし…等々、多様に紹介されているなかに“くらしし”もあった。

ところがこの報告書では、名の由来までは触れられておらず、確かにカモシカのことを“くらしし”と呼んだ時代・地方が存在していたことは分かったものの、その由来についての記述はなく、謎のままなのだ。

そこで、別の資料・文献にあたってみると次のようなことが分かってきた。

“くらしし”の“くら”とは“座(くら)”または“鞍”と書き表すのが正解のようで、どちらも“座る場所=居場所”を指す言葉らしい。
かつてこのブログでも、カモシカの名の由来について、毛皮を敷物に利用した動物であることから名付けられたことをお伝えしたが、これにも通じるようだ。

また、“一の倉(くら)”などというように、山の名としても“くら”という音は多用されるし、山を数えるときに一座・二座と数えることからも明らかなように、“座(ざ)”という言葉も山を意味している。
推測の域をでないが、これは山を神の居場所として意識したことからきているのではないだろうか。

山地に棲むカモシカを、“しし”の前に“座(くら)=山”の音を冠し“くらしし”と呼んだというのも分かりやすい。

どちらも説得力ある説であるし、その根が同じところにありそうなことも、また面白い。

古名・地方名を温ねるのも、いにしえの人々がどのようにその生物を認識していたのかが分かり愉しいものである。

(2010/11/28 川場湯原地区太郎)
自動撮影装置

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川場のけものと鳥たち2010」カテゴリの記事

コメント

鹿対策に狼の導入 参照 http://japan-wolf.org/content/faq/

投稿: 名無し | 2013年1月30日 (水) 13時17分

くらししのクラは「岩嵓」(がんくら)のクラ、と戸川幸夫が『動物千一夜』にチラッと書いていましたので、一応書き込んでおきます。草々。

投稿: 輝 | 2012年4月15日 (日) 22時15分

むーらんさん!
こんにちは!

そうですか!
星にも地方名があるんですね。
言われてみれば納得ですが、思いもしませんでした。
学問の世界では、より多くの人々と情報の共有ができるように共通する名称を使いますが、地域地域の文化が地方名には生きていますので大切にしていきたいものですね。

投稿: くま | 2010年12月16日 (木) 12時38分

とても興味深く読ませていただきました!
いにしえの人々にとっては生活と直結するだけにその当時の生活観が地方名に現われていて本当におもしろいですね。

生物同様、星にもやはり地方名があってその土地の人々の生活と結びついていておもしろいです。

投稿: むーらん | 2010年12月15日 (水) 20時16分

waterさん!
こんばんは!

こういう話はなかなか決定打が出ないところがまた面白いですよね!
「生物の地方名と生活文化の関連」なんて面白い研究テーマになりそうですよね!

投稿: くま | 2010年12月14日 (火) 23時45分

“座”という意味から想像するに、昔、山形の朝日連邦でカモシカ調査を手伝ったことがあるけど、いつも岩の上に座っていて、しかもその岩に同化しているから見つけるのが大変だったよ。“いつも座っている”というイメージもあるのね。お口をモグモグさせながらね。

そう考えると“座りっぱなしのしし(肉)”じゃ、ここまで存えて来なかっただろうから、どうなんだろうねぇ…

投稿: water | 2010年12月14日 (火) 19時38分

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