カテゴリー「川場の花図鑑2010」の48件の記事

2010年12月 7日 (火)

季節外れの華やぎ

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先月の半ばに、村内の萩室地区を散策していると、一畳ほどのスペースが、そこだけ華やいでいた。

稲刈りが済んだ田んぼは、水田特有の黒い土の色と枯れ草の色に染まりつつあったし、僅かに残る草の緑も、夏のそれとは違うくすんだ色を見せていた。
そんな光景の中に鮮やかな色彩が目を惹いていたのだった。

近づいてみると、ヒメオドリコソウが群落を形成しており、花を咲かせていた。

普通、ヒメオドリコソウの開花は雪解けの後なのである。

一株や二株が季節外れの花を咲かせることは、特段珍しいことではない。
“あだ花”などと呼ばれ、その不思議さや美しさを日本人は楽しんできた。
けれど、これだけまとまって花を着けているのは珍しい。

なにか特別な条件でも揃っているのかと思って辺りを見まわしたが、開花の理由は見つけられなかった。

確かに、温暖な気候の元では、長い開花時期をもつ植物ではあるのだが、不思議な光景だった。

(2010/11/14 萩室地区)
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2010年11月 3日 (水)

ナギナタコウジュ

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後山の山腹に走る林道沿いでナギナタコウジュが花を咲かせていた。
川場村では、9月の下旬から今ごろまでの季節に、そこかしこで見かける普通種である。

個々の花が密に集合し、あたかもそれで一輪の花のように見える塊を植物学では“花穂(かすい)”というのだが、この植物はどうした訳か、まるで歯ブラシのように、花穂の片側だけに花を咲かせる。

いうまでもなく、花という器官は、植物が子孫を残すために着ける器官で、じつに驚くべき多彩さで各種の植物がそれぞれに工夫を凝らした花を着けている。
そのなかで、本種のように、花穂の片側にだけ花を着けることにどのような戦略が秘められているのだろうか。

さて、このナギナタコウジュ、漢字では“薙刀香薷”と表記される。
片側にだけある花と、それによってやや湾曲した花穂の様子を薙刀(なぎなた)に見たて、シソとハッカを併せたような芳香が、中国の薬草である“香薷”に似ることからこの名が付けられたのだそうだ。

薬効成分も認められており、花の時期に刈り取ったものを乾燥し、煎じて服用すると解熱や発汗・利尿等の効果があるといわれている。

ナギナタコウジュの花が散ると、降霜・降雪の季節が近い。

(2010/10/16 後山)
NIKON D300 28-300

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2010年10月23日 (土)

秋の花

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リンドウは、秋を代表する山野草だ。
それなのに、私が川場村でリンドウの開花を見ることができたのは今回が初めてのことだった。

もちろん、私の目が曇っていることも大きな原因には違いないが、それだけではない。

本来、リンドウは人里の、それも、よく草刈りが施されたところに出現する植物なのだ。
だから、人々が森林(やま)の恵みを得るために道普請を行ったり、屋根を葺くために茅場を利用したり、そういった営みが少なくなるのと歩調を合わせて数を減らした植物なのだ。

今回は、後山(虚空蔵山)の道脇で出遭うことができたのだが、ここ数年間、村の施策として後山の整備に力が入れられ、村民を主体にしながら、村外者の協力も得て間伐や草刈りなどが熱心に行われた結果が、今年の開花となって現れたのだと思う。

かつて、あたりまえにあった風景に出遭えなくなりつつあることを憂う気持ちが、森林(やま)をまもる原動力なのだと思う。

いつでも傍に在る、身近な存在の価値に気づき、あたりまえの存在を大切にするというのは難しいものである。
いつも失ってから気づく。

後山で出遭うことができたリンドウも、後山の整備が一過性のものに過ぎなければ、再び静かに姿を消していくだろう。

森林(やま)を守り育てていくということは、なかなか難しいものであるようだ。

(2010/10/16 後山)
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2010年9月30日 (木)

ツリフネソウにマルハナバチ

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紫色のちょっと変わった花はツリフネソウ。
ツリフネソウ科ツリフネソウ属のツリフネソウなのだから、まさに正統派である。
花壇を彩るホウセンカやインパチェンスなどとも近縁で、熟れた実に触れるとパチンとタネを飛ばす。

このツリフネソウを見ていると、一匹のマルハナバチが羽音を立てながらやってきた。

ちゃんとマルハナバチのために着陸用の足場まで用意されている。
まずは、足場となる花弁に着地すると、滑るように袋状の花の中へ潜り込んでいった。
この花の蜜はは、一番奥のくるりと巻いた“距”にあるので、潜っていかなければ蜜にありつくことはできないのだ。

全身を花の中に潜り込ませて数秒すると、マルハナバチは後ずさりをしながら花から出てきた。
花の中は、くるりと向きを変えられるほど広くはないのだ。
実は、このサイズに秘密がある。

袋状の花の天井部分に雄しべが用意されていて、蜜を求めてマルハナバチが入り込むと、背中に雄しべがくっついて花粉を背負わせる仕組みになっているのである。
中が広ければ、花粉が背中につかない可能性もある。
そのため、マルハナバチの体格に合わせたサイズの花を咲かせているのだ。

写真は、マルハナバチがツリフネソウの花から出てきたところ。
背中に何かを着けられてしまったのが分かるようで、脚で一生懸命に取ろうとしているようだ。

けれど、ほんの数回ポリポリと掻くと「気にはなるけど、まあいいや」とばかり飛び立って、次の花を探していた。

ツリフネソウとマルハナバチは、互いの存在を利用しながら進化してきたと云われているが、進化には気の遠くなるような時間が必要だ。
どれほどの時間を、この両者が相身互いでやってきたのか、想像するだけで愉しくなるではないか。

20100920 ツリフネソウとマルハナバチ(中野地区)
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2010年9月29日 (水)

サラシナショウマ

20100928sarasinashouma

突然秋がやってきた。
朝晩などは、涼しいのを通り越して、寒いとさえ感じる。

そうした秋の訪れをどのように察知しているのだろうか、サラシナショウマが花を咲かせ始めていた。

サラシナショウマは、キンポウゲ科の多年生草本。
漢字では“晒菜升麻”と書き表される。

“晒菜”は、花茎が立ち上がる前の若い葉を茹でた後、水で晒して食したことから付けられた。
清流に1~2日間も晒したというから、よほどのアクやえぐみがあるのだろう。
生きていくために先人達が為した工夫には、ただただ感服である。

“升麻”は、この植物から得られる生薬名で、秋に根茎を掘り採り、乾燥したものをいう。
解熱、解毒、強壮の効能をもち、他の生薬と配合し、様々な漢方薬に利用されている。

花自体はとても小さいが、多くの花がブラシのように集まる(穂状花序)ので、秋の森林(やま)を彩る存在である。

20100920 サラシナショウマ(谷地地区)
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2010年9月21日 (火)

秋はアケボノ

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ふじやまビレジから21世紀の森に向かう林道沿いで、今年もアケボノソウに出遭うことができた。

アケボノソウは秋の花だ。
川場村の短い秋の訪れをしらせてくれる。

以前にも紹介したように、花びらの模様を明け空の月と星に見立ててこの名が付いた。
一枚の花弁に2個ずつ並ぶ薄緑色の点は蜜線で、それでは心許ないのか、黒い斑点は、花粉をはこんでくれる虫を集めるための装飾なのだそうだ。

一輪一輪の花は、直径1cm半ほどだろうか、その存在を知らなければ足下にあっても通り過ぎてしまうだろう。
けれど、近づいてみるとこんなにも可憐で、美しい花なのだ。

この花が散る頃になると秋も深まり、木々も、虫たちも、動物たちも冬支度を急がなければならない。

20100920 アケボノソウ(天神地区)
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2010年9月16日 (木)

ママコナ

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今月の初めに、川場村と沼田市にまたがる“21世紀の森”まで足を延ばしてきた。
ここは、村内では珍しくブナの巨木が見られる地域で、ツキノワグマの痕跡もとても濃いところだ。

林道を歩いていると、法面に見慣れぬ、濃い紫色の花が咲いているのに気づいた。
私は初めて見る花だ。
写真に収めて帰り、植物の専門家に同定を依頼するとゴマノハグサ科の“ママコナ”という植物だと教えてくれた。

花や葉の形から、種までは分からないがシソ科に違いないと断じていたのだが、ゴマノハグサ科だというからすっかり自信を無くしてしまった。

そして、“ママコナ”という聞き慣れない名前についても勘違いをした。

タデ科の植物で“ママコノシリヌグイ”という植物があるのだが、漢字で書くと“継子の尻拭い”というなんとも怖ろしい名前が付いている。
川場村では未確認なのだが、怖ろしい名前が印象的で記憶に残っている。

その昔、紙が高級品だった頃は、葛などの植物の葉をトイレで使用していたそうである。
継母(ままはは)が自らの腹を痛めた子ではない継子(ままこ)に嫌がらせをするために、軟らかな葉と、この“ママコノシリヌグイ”をすり替えたのだというのが、この植物の名の由来なのだそうだ。
それほど、この“ママコノシリヌグイ”には鋭い棘が生えているのだ。
ちなみに、韓国では“嫁の尻拭き草”というのだそうだから、どこでも似たような怖ろしい発想をするものである。

さてさて、話は“ママコナ”である。

この名を聞いたときに真っ先に浮かんだのが、“ママコノシリヌグイ”だったので、“ママコナ”は“継子菜”のことで、とてつもなく不味いのだろうと早合点をした。
調べてみると大違いで、“ママコナ”は“飯子菜”であった。
“飯子”はご飯粒を意味する。

花弁(花唇)に白い楕円形の隆起が見られるが、これをご飯粒に見たてたというのが定説だが、別説では、種子がご飯粒に似ているからとも云われている。

全国の森林の、乾燥気味で痩せた土地に生育する半寄生植物である。
“半寄生”というのは、自らも光合成を行い、寄生しなくても生長するが、イネ科やカヤツリグサ科の植物が近くにあると、その根に寄生するという生態を指している。

20100903 ママコナ(21世紀の森)
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2010年9月10日 (金)

古道のクリオネ

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川場湯原の太郎地区を抜け、木賊(とくさ)地区へ向かう道の途中に“千貫峠”の入口がある。

この古道は、1569年に、沼田万鬼斎顕泰が川場の合戦に敗れ、会津城主芦名盛重を頼って逃げ落ちる際に使った道だと伝えられている。
途中、峠に立つ立派な松を見て、「さても良き松かな、われ世にある時ならば千貫文の領地にも替え難し」と詠んだことに因んで、“千貫峠”の名が付けられたと云われる。

現在は、この峠道は草に覆われて、通行が困難になっているのだが、どこまで行けるものかと確かめに行ってきた。

峠の入口から30分も歩くと、道は徒手では通れないほどの草に覆われてしまっていて、仕方なく引き返すことにした。

20100909kariganesou2ちょうどその辺りの川沿いで、可愛らしい花を見つけた。

わが国の山野草には、あまりない薄紫色、雄しべと雌しべが長い弧を描いているのも不思議な造形だ。

クマツヅラ科の多年草で“カリガネソウ(雁草)”という。

今回が、川場村では初めての出遭いであった。

5枚の花弁に昆虫がとまると、その重さでしべが下方に降りてきて昆虫の背中につく仕掛けになっている。

花の季節だけのことだそうだが、全草からとても強い、ちょうどゴーヤの茎を手折った時のような臭いがする。
可愛らしい花に似つかわしくない臭いで、多くの人々が不快であると感じるようだ。

大分秋めいてきた風に揺れる姿は、まるで北海の妖精“クリオネ”のようでもあった。

20100902 カリガネソウ(千貫峠)
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2010年8月29日 (日)

ツリガネニンジンの花

20100829turiganeninnjinn「今年の川場は、本当に虫が少ない」と何度書いたことだろう。
本当に少ないのだ。

灯火に飛来したものや、農家の方々が拾い集めたものを除けば、カブトムシにもクワガタムシにも出遭えずに今日に至っている。

こんなことは、約20年間も川場村に通ってきて初めてのことである。

昆虫の発生を阻害するような環境は、その他の生物にも無関係であろうはずがない。
夏の花も例年と較べて、種数も個体数も極めて僅少である。

写真のツリガネニンジンも、例年では8月半ばを過ぎると、そこかしこで目にしてきた花なのだが、今年は村内をしばらく廻っても、ほんの数株しか開花を確認することができなかった。

この植物の川場村での開花のピークは、例年9月初旬頃なので、これからに期待したいところではあるが、現実的には難しいのではないかと予想している。

さて、「昆虫が少ない」のは、実は昨年もそうだった。
奇しくも昨年の今日(8月29日)の記事で「今年の川場村は本当に虫が少ない」と、全く同じことをつぶやいていた。
けれど、昨年の場合は冷夏と長雨に祟られた結果であった点が今年とは違うところだ。
現時点では推測の域を出るものではないが、昨年の異常気象がベースとなって、その上に酷暑の連続というストレスが川場村の自然を襲っていると考えてよさそうだ。

この連年の異常気象の弊害が、この先どれくらいの期間にわたって川場の森林(やま)に影響を与えるのだろうか。

20100824 やっと見つけたツリガネニンジンの花(後山)
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2010年8月18日 (水)

キツネノカミソリ

20100817kitunenokomisori1

後山の奥まで足を延ばすと、薄日の射す林床でオレンジ色の花が目についた。
遠目に見るとオニユリの様にも見えたのだが、少し違う印象を受けた。

近づいてみると、ヒガンバナ科の“キツネノカミソリ”だった。

キツネノカミソリは、ヒガンバナと同じように“葉見ず・花見ず”で、春先から葉を繁らせると夏までにはその葉をすっかり枯らしてしまい、その後に花を咲かせるという変わった生長特性をもっている。

“狐の剃刀”という名は、春先に出る葉の形からつけられたという説や、花弁の形が剃刀のようで、その色が狐色であるからだという説、葉の形が剃刀状であるというのは前説と同じで、葉が無く茎だけを伸ばして花をつける姿に狐の神秘性を重ね合わせて名付けられたという説など、様々云われているようだ。

20100817kitunenokomisori2 けれど、私は、洒落者の狐が、身だしなみを整えようと、鼻歌交じりでこの花を使って髭をあたっている姿を連想してしまう。
その方が、なんとも愉しいではないか。

ヒガンバナが秋の彼岸頃に花を見せるのに対して、本種は旧盆の頃に花を楽しませてくれる。

地下にある鱗茎は、アルカロイドを含み有毒で、誤食すると痙攣や吐き気などをもよおすので注意が必要だ。

20100816 キツネノカミソリ(後山)
NIKON D90 70-300

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