カテゴリー「虫と一緒に森林づくり」の27件の記事

2007年12月10日 (月)

ウスタビガの繭

20071210usutabiganomayu

枯れ葉色の景色の中で、ひときわ目をひくのはウスタビガの繭だ。
蛍光色のような鮮やかな緑色をしている。
ヒロイド原では、ケヤキやヤマボウシの細い枝に目立って着いていた。
秋には羽化しているから空の繭だが、山の木々が葉を落とした冬景色によく似合っている。

ウスタビガはクスサンなどと同じヤママユガの仲間だ。
この仲間の成虫は、餌をとる口さえなく次世代を生み出すためだけに存在する。
こうした生活史をもつ生物もいることを知ると、命とは何のために存在するのだろうかと、柄にもなく哲学的なことさえ思ってしまう。

目をひく色彩であるのに、けして下品ではなく、軽やかであるのに強靱なこの繭は、「山かます」と呼ばれている。

20071201 NIKON D80 70-300

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年12月 4日 (火)

カマキリの卵

20071204ookamakirinorannnou

冬の気配がようやく漂いだしたヒロイド原でオオカマキリの卵嚢を見つけた。
オオカマキリは10月頃に産卵シーズンを迎えるが、その年の積雪高ほどの高さに産み付けるという。
雪を避けるのであれば、はじめから高いところに産めば良いし、雪に埋まる方が都合がよいのであればいつでも低いところに産み付ければよいのに、不思議なことだ。
雪に埋めたくはないが、寒風に吹きっ晒しにはしたくないということなのだろうか?
それより何より、その年の積雪高をどうして知るのかということが不思議だ。

カマキリのような肉食の昆虫がいなければ森林(やま)は、草食性の昆虫によってあっという間に丸裸にされてしまうだろう。
お百姓さん達だって農業を続けることはできないだろう。

20071201 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2007年10月24日 (水)

トラマルハナバチ

20071023toramaruhanabati

10月の中旬に、夏の下刈りの成果を確認するために新植地に足を運んだ。
この時期に花を咲かせている草本も限られてきていたが、何種類かのアザミが紫色の花を咲かせていた。少しの間観察をしていると、コロコロとふとったハチがやってきた。
冷涼な気候によく適応し、世界に250種、わが国にも14種類が分布するハナバチのなかまでトラマルハナバチという種類のハチだ。ミツバチ同様、社会性のハナバチである。縫いぐるみの熊のような鮮やかな橙色の毛に覆われて、よく目立つ。攻撃性は極めて弱く刺されることは滅多にない。

春に女王蜂がモグラの巣穴等を利用して土中に営巣を開始し、夏から秋に大家族に発展、冬に解散という一年性の生活史を送る。巣は蜜蝋と草を混ぜ合わせたブドウの房状のもので、幼虫の育室の隣には餌となる花粉の貯蔵室をつくるなど、非常に発達している。巣の中では一匹の母親の女王蜂を中心にたくさんの働き蜂(雌蜂)からなる家族で生活する。

長い口吻で蜜を吸う際に全身の毛が花粉まみれになり、また別の花へと移動する際に花粉を媒介する。高い花粉媒介機能が果樹生産農家などにも注目されている。
近縁外来種のセイヨウマルハナバチは同様の目的で輸入され、ハウス栽培で利用されたが、温室から逃げ出した個体が定着し、北海道などでは在来種の生存を脅かし、問題にもなっている。

無雪期をとおして活発に飛び回るハチだが、開放地に多いため森林内で出逢うことは少ない。そのため下刈り以外の作業の時には目にとまりにくい。下刈りの時期を過ぎると、新植地からは足が遠のきがちだが、秋や冬の新植地に足を運び、ゆっくりと風景を楽しむことも楽しいものだ。

20061015 NIKON D80 60MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月 8日 (月)

キタテハ

20071008kitateha

10月にはいると気温も下がり、樹木は厳しい冬を乗り切る準備を始める。雑木林の落葉広葉樹は、春から夏に茂らせた葉を紅葉させてから順次落としていく。葉からの水分の蒸散が弱まるにつれて、根も大地から水分を吸収する勢いを弱めるので樹液流動も僅かなものになっていく。間伐や枝打ちなどの森林作業の適期である。

キタテハは樹液流動の盛んな夏期には雑木林に集まる。クヌギやコナラなどの樹幹にカミキリムシなどがつけた傷から流れ出す樹液に誘われるからだ。しかし、秋になり、木々から甘い樹液がほとんど滲み出さなくなってくると、花の蜜を吸いにキク科の植物に集まるようになる。写真のノコンギクは、太陽の光が木々の葉で遮られないような開放地に群生し、秋の里山を彩る植物だ。間伐などの作業を終えて林道を歩き、開けた明るい場所に出たところでキタテハに出逢うことが多い。

翅を閉じていると枯れ葉のようでまるで目立たない。しかも虫食いの枯れ葉に擬態していて、晩秋の風景に見事にとけ込んでいる。ところが、いったん翅を広げると赤味がかったオレンジ色の地に黒い豹紋が目に鮮やかだ。保護色と警戒色、翅の表裏に正反対の工夫を凝らした入念な生き残り戦術である。タテハチョウの仲間が蝶の中ではもっとも進化したグループだといわれる所以であろう。幼虫は、食草でもあるカナムグラの葉を糸で綴り、屋根状の巣を作って暮らしている。これもまた進化の成果だろう。

花に集まるキタテハを目にするようになると、間伐や枝打ちの季節の到来だ。

20061015 NIKON D80 60MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年9月28日 (金)

クスサン

20070928kususann_3

わが国最大の蛾であるヨナクニサンの近縁種。開長が20㎝を超えるヨナクニサンに比べれば、本種は遙かに小振りだが、それでも羽を広げれば大人の手のひらほどの大型の蛾だ。

クスサンは「樟蚕」。幼虫がクスノキの葉を食べることからこの名が付いた。成虫は、幼虫の食草に産卵のために寄りつくので、昔の人々には成虫もクスノキを好むと思われたのかもしれないが、成虫は口が退化しており食べ物を摂ることはない。

クスノキはクスノキ科の常緑広葉樹で、柱などの建築構造用材から仏壇仏具、盆や菓子器などの刳りものにまで広く利用される。現在でこそ、石油化学製品におされ利用はほとんどなくなったが、かつては、幹・根・枝葉を蒸留精製して樟脳を採取し、セルロイド・火薬・医薬品・防虫剤などにも広く使用した。

「蓼食う虫も好き好き」という言葉があるが、クスサンはさらにその上をいっている。なにせ防虫成分をもつ葉を食べるのだから。この悪食の幼虫は、他にもクリ・クヌギ・コナラ・サクラ・イチョウなど、広範にわたる樹木の葉を食べる。8cmにも及ぶ大型のイモムシで、青みがかった白い体を白く長い毛で覆い「しらがたろう」と呼ばれる。
蛹の繭も特徴的だ。山繭蛾の仲間だけあって、浅黄色の絹糸で、民芸品店に並ぶランプシェードのような手の込んだ繭を作ることから「すかしだわら」と呼ばれる。幼虫・蛹・成虫と三世代にわたって、それぞれに名を持つ程になじみの深い昆虫だ。

20060922 NIKON D80 60MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年9月21日 (金)

エダナナフシ

20070920edananahusi

擬態をする生物は数多いが、エダナナフシはその筆頭だ。小枝のような体形でよほど注意しなければ見つけることはできない。
森林内には伸び始めの若枝から枯れかけの枝、完全に枯れてしまった枝など、様々な枝があるが、彼らの体色もそれらにあわせて、緑色、灰褐色、茶褐色と豊かなバリエーションを持っているから驚かされる。普段はあまり動かずにじっとしていることが多いが、いざ動くときにもゆらゆらと揺れながら動く。その動きはそよ風に揺れる小枝のようであり、たいした念の入れようだ。
都市部にも生息する珍しくない虫なのだが、見事な擬態が功を奏して人の目にもとまりにくい。

本種を含めてナナフシの仲間は謎多き生物である。ある種は雄が数匹しか発見されていなかったり、またある種は、地域によって雄ばかりだったり、別の地域では雌ばかりだったりする。雌だけで単為生殖を行うことも確認されているので、こうした雌雄の棲み分けも可能なのだが、そうした生理・生態のもつメリットは人間の想像の範囲を超えている。

指先で触れると、体をぴんと伸ばしたままポトリと落ちる。足だけをつまむと何の抵抗もなく足がポロリともげ落ちる。その様子も、枯れ枝が風に揺られて音もなく落ちる様子にとてもよく似ている。

明るい雑木林や、よく陽の射す林縁部に多く生息する生物なので、林内で彼らを見かけなくなったらそろそろ間伐を計画しなくてはならない。

20060808 NIKON D70 28-200

| | コメント (5) | トラックバック (1)

2007年9月16日 (日)

トノサマバッタ

20070916tonosamabatta_2

日本のバッタの仲間では一番大きな体をもち、ダイミョウバッタとも呼ばれる。 
他のバッタに比べて高い飛翔力を持つうえに、人の気配に敏感で、そばに近よるのはなかなかむずかしい。図鑑やテレビでおなじみなので、子どもたちにも人気だが、実物を目の当たりにすると立派な体格にたじろぐ子どもも多い。

イネ科やカヤツリグサ科の植物の葉を好んで食べるが、餌が不足すると様々な植物の葉も食べる。普段の状態は「単生相」とよばれるが、個体密度が高くなると「群生相」と呼ばれる個体が発生する。
長距離飛行に適した長い羽、跳躍には不適な短い後足、頭や胸が大きいことの他、体色が暗褐色となることが「群生相」の特徴だ。大変な食欲で植物を食い尽くしながら大集団で長距離の移動をする。
本種をはじめ近縁種の「群生相」は、世界各地で時折猛威を振るう。中国やわが国でも「飛蝗」と呼ばれて恐れられている。

特定の生物が爆発的に増殖するケースはまま見られるが、要は自然界のバランスが崩れたときに見られる現象である。多様な生物が生息可能な環境を守ることが重要だ。
本来、空き地や河原など、開けた場所に生息するバッタなので、小石混じりの地面に生える草に似せた体色をしている。伐採跡地などで本種を頻繁に見かけるようだと、伐採面積が大きすぎて森林の生態を崩している可能性を疑う必要があるかもしれない。

20060808 NIKON D70 28-200

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年9月11日 (火)

クマバチ

20070911kumabahci

クマンバチとクマバチ、たった一文字違いで紛らわしい。地域によっては入れ替わることもあったりしてよけいに混乱する。クマンバチはスズメバチの別名だ。スズメバチは人畜に対する攻撃性も強く、食性も他の昆虫を襲って食べる肉食性のハチである。
一方のクマバチは、一応針はもってはいるものの、まず人を刺すことはない。
蜜や花粉を食べる温和しい性質のハチだ。ミツバチやスズメバチのように群れをつくらず、単独で生活する。「熊」の名が示すとおり、ずんぐりとした体型で、体長の割には大きく見える。おいしい蜜を出す花を見定めているのか、羽音を立ててホバリングをしてから花にとりつく。
採餌は開放地で行い、営巣は樹林地で行うため、樹林地と草原がモザイク状に配された環境下でよくお目にかかる。立木の枯れ枝の中に穴を空けてトンネル状の細長い巣を作るため、林内には適度に枯れ枝が必要だ。

多様な生物を確保するためには、森林内だけをとってみても、生長盛んな若木、洞をもつような老木、未だ倒伏しない枯れ木、倒木等々、多様な環境が必要だ。多様な生物が取り持つ絶妙なバランスこそが、薬剤も、大きな労力も必要としない健全な自然環境を支えている。時に人間に害を為す生物も自然の中では何某かの役割を演じているし、様々な生物が拮抗することで甚大な被害が出ることも少ない。

無雪期を通して花から花へと飛び回るこのハチを目にしなくなると降雪も間近だ。

20060821 NIKON D70 60MICRO

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年9月 4日 (火)

ウマオイ

20070904umaoi

草原性の昆虫だが、林縁部の草原などに多くみられ、広大な開放地でみることは少ない。スイーチョン、スイーチョンと長鳴きをする「ハヤシノウマオイ」とシッチョン、シッチョンと短く鳴く「ハタケノウマオイ」に区別されることもある。夏から晩秋にかけて大きな澄んだ声で鳴く声が、馬子が馬を追う声に似ることからこの名が付く。体色は淡緑色で、頭部から前胸の背面に濃褐色の太いラインが走るのが特徴だ。

夜行性の昆虫だが、下刈りなどによって起こされて眠そうな足取りで顔を見せる。
性質はどう猛で幼虫時から他の昆虫を補食する。キリギリスの仲間は幼虫の時には花粉や花弁、草の葉等を食べ、成熟にしたがって肉食性を強めるものが多いが、本種は生まれついてのギャングである。

肉食性の昆虫の存在は、餌となる昆虫が豊富に生息していることの証明だ。針葉樹の人工林、雑木林、草原等がモザイク状に配置されることで多様な環境を生み、多くの生物の生息を可能にする。
湿潤温暖なわが国の気候は、一般に森林の成立に適しているため、刈り払いや火入れといった人為が作用しなければ単純な生物相へと移行する。また、肉食性の生物が存在しなければ、草食性の生物が爆発的に増加し、短時間に食草を食い尽くし自らの生息も不可能となる。

林業は自然の生態系と人為が織りなすコンビネーションプレーだ。収穫を目的とする樹種にのみ焦点を当てた保護・管理は短期的には収量の増大をもたらしても、長期的には尻すぼみとなる。

20060820 NIKON D70 60MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年9月 2日 (日)

ツマグロオオヨコバイ

20070902tumaguroooyokobai

盛夏の下刈りは暑さとの闘いだ。新植地には木陰など望むべくもないので、炎天下に大粒の汗が滝のように流れる。草いきれでむせかえる。作業をサボってわずかな日陰でしゃがんでいたって決して楽ではない。高度な技術を要求される作業でもないのに、「下刈りがきちんとできれば一人前」と云われることが身にしみてわかる。
だからといって気候が和らいでからでは下刈りの意味は半減する。苗木の生長を妨げる下草を直截に除去することだけが下刈りの目的ではないからだ。草木が種子を稔らせる前に刈り取ることで、次年の芽生えのための種子供給量を減らすことも重要な下刈りの目的だ。

ツマグロオオヨコバイは成虫で越冬し、5月頃に産卵期を迎える。生まれたての幼虫は透き通るように全身が白いが、次第に蛍光色のような黄色い身体になる。その後時間をかけて8月末ころに成虫になる。
成虫になったこの虫をたくさん見かけるようになると、その年の下刈りを急がなくてはならない。

様々な植物の汁を針のような口を使って吸う。食草を限定しない食性をもっているのでいろいろなところで目にすることができるが、人の気配を感じると葉の裏に素早く隠れてしまい見逃してしまう。ところが、子どもの視点からは葉の裏がよく見える。横歩きする動作のユニークさも人気の的だ。その体色から「バナナ虫」と呼んでなじみが深い。

20060922 NIKON D80 60MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月31日 (金)

オオカマキリ

20070831ookamakiri

下刈りをしているとじつにたくさんのカマキリに出逢う。なかでも体格の大きなオオカマキリは目立つ存在だ。全身緑色の個体から全身が茶褐色のもの、その中間のものなど、体色のバリエーションは豊かだが、前足(鎌)の内側にある斑紋と後ろ羽根が紫に近い褐色なのが特徴だ。

オオカマキリは山地から都市部まで、非常に広い範囲に生息するので、多くの人々にとって非常に馴染み深い存在だ。森林内での作業は多くの都市住民にとって非日常的な活動であり、そこで出逢う生物も日常の生活域ではお目にかかれないものが多いが、日常生活の場にも森林(やま)にも、共通して生息する生物がいることも興味深い。
新植地には、繁茂した下草を餌とする草食性の昆虫や、それらを補食する昆虫などが数多く生息し、オオカマキリは、それらを手当たり次第に捕食する。時には小型のカナヘビなども彼らの餌食となることがある。

家庭菜園などを耕した経験があるとわかるが、草食性昆虫は時に脅威となる。数と食欲にものをいわせて小さな畑などはあっという間に丸裸になってしまう。昆虫を補食するカマキリのような昆虫がいなければ森林もその姿を保つことはできない。
樹木を育てるだけが森林づくりではない。多様な生物が織りなす豊かな生態系をよく理解するためにもゆっくりと丁寧な森林づくりを進めたい。

20060820 NIKON D70 60MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月22日 (水)

アキアカネ

20070822akiakane

下刈りの最中に一息ついてふと空を見上げると、ふわりふわりと無数のトンボが飛んでいる。それも作業地の真上、手を伸ばせば届くような高さにあつまっている。多くの生物が人間との距離を置こうとするのに興味深い現象だ。不思議に思いながら何年か下刈りを繰り返すうちにトンボが集まる仕組みが見えてきた。
樹木が伐採されると、樹木の葉に遮られていた陽光が地面にまで達し、林床で眠っていた草本類の種子が一斉に芽吹き、草原が出現する。突然の草原の出現をどのようにして察知しているのか、様々な草食昆虫が集まってくる。
そうした草原を樹木の生育のために人間が刈り払うと、草陰に潜んで草の汁を吸っていた、ウンカやアブラムシ、ツノゼミやヨコバイ等々、「羽虫」と呼ばれるような小さな虫たちが住処を追われ、一斉に空中に舞い出す。
それらの虫たちの多くは体も小さく人間の目にはとまりにくい。羽音もしないから耳にもとまらない。辛いつらいと思いながらも不思議と熱中してしまうのが下刈りだからよけいに気がつかない。
草原から舞いだした羽虫をめざとく見つけ集まってくるトンボの代表がアキアカネだ。夏期には冷涼な山地で過ごし、秋になると、稲刈りの頃に里に下りてきて産卵するという生活史をもっている。

雄は秋を迎えると、木々の紅葉と歩みを揃えるように鮮やかな茜色に体を染める。

20060811 NIKON D70 28-200

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年8月20日 (月)

アカハネナガウンカ

20070820akahanenagaunnka

ちょうど一年前の今日、炎天下にコナラの植林地の下刈りをおこなった。植林後5年ほどたつが、樹高はせいぜい70~80㎝ほどで、目に見える成長を始めない。すぐ隣には天然更新による実生のコナラ群落があるが、同じ頃に芽生えたにもかかわらずそちらの方は成長たくましく、既に人の背丈を大きく超えている。「適地適木」という言葉があるが、やはりその地の環境に適した遺伝子を持っているのだろう。

拭ってもぬぐっても吹き出す汗を手ぬぐいに染ませながらひと休みしていると、林床を覆っていたクズの葉の上にある鮮やかな朱色の粒が目にとまった。大きさは3~4㎜ほど、目をこらしてみるとどうやら虫のようだ。遠目には見えなかったが透明な長い羽を持っている。

その日の下刈りを終えて宿に戻り、カメラに収めた写真を確認していて驚いた。なんと、小さな小さな眼は昆虫のそれとは思えないような、まるで人の眼のように白目の中に黒目があるではないか。おそらくカマキリ等にも見られる偽瞳孔と呼ばれるものだろうが、上目遣いのとぼけ顔で見つめられているような気になる。長い口吻も口をとがらせているようだし、脚にも膝までのハイソックスをはいている。なんとも憎めない風貌だ。
ススキなどイネ科の植物の汁を吸って生きている虫らしいが、どういう訳かこの日はクズの葉の上にばかりいた。

今年も出逢うことができるだろうか。

20060820 NIKON D70 60MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月15日 (水)

スミナガシ

20070815suminagasi

 下刈りの合間に昼食をとろうと日陰を求めてコナラの林に入った。握り飯を頬張っていると、地味だけれども存在感のある蝶が羽を開閉しながら樹幹にとまっているのに気がついた。タテハチョウの仲間のスミナガシだ。
 水面に墨をわずかに落とすと様々な模様を描く。小学校の低学年か幼稚園に通っていた頃だったと思う。それを半紙に写しとって不思議な模様を楽しんだ。「墨流し」といわれるこの遊びは、紙や墨が稀少であった時代には宮廷における極めて贅沢な遊びだったようだ。
 スミナガシという名はこの遊びから名付けられた。光線の具合によって青緑色の落ち着いた光沢が墨色の体を彩り、上等の絞り染めの模様のようなぼけ具合の白紋が墨を際立たせている。タテハチョウの仲間は羽の表裏に全く異なった模様・色彩を持つものが多いが、本種は表裏ともに落ち着いた色彩を持っている。いぶし銀のような体の中で、樹液を吸うためのストローのような口だけが唯一濃い緋色をしている。地味な装いの裏地にだけ洒落たあしらいをする粋人のようだ。
 もっぱら樹液を吸う蝶で、雑木林のなかを優雅に飛んでいる。草原の蝶は体温の過上昇を防ぐために明るい色彩をしているという説がある。逆に、地味な体色は太陽の熱を効果的に集める工夫だ。成虫の出現期は5月から8月と、気温が高く樹液流動の盛んな時期に限られる。スミナガシを眼にすると植林にはもう遅い。枝打ち・間伐はまだ待たなければならない。大鎌を振るう季節がもう少し続きそうだ。

20070809 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月13日 (月)

ムラサキシャチホコ

20070812murasakishatihoko

小学生たちと夜の自然観察に出かけた。
村内の萩室地区にある道の駅「田園プラザ」は閉店後も建物をライトアップしているので様々な昆虫が集まってくる。

写真に写っているのは枯れ葉ではない。翅を閉じて笹の葉にとまっているムラサキシャチホコという名の蛾だ。
擬態をする昆虫は数多くいるが、ここまでの見事な擬態は国内外を問わずトップクラスだろう。
翅が立体的に丸まっているのではなく、このような模様なのだからさらに驚かされる。

自らの姿を映す鏡も写真もない自然界に、このような造形が見られることこそが神の存在を証明するとするむきもあるが、頷きたくなってしまう。

自然の不思議さに触れると、もっともっと自然を知りたくなる。
森林(やま)づくりに欠かせない驚きを小学生たちは覚えてくれただろうか。

20070807 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月18日 (水)

ミヤマクワガタ

20070717miyamakuwagata

この数年、ヒロイド原のカブトの森の間伐作業を行ってきた。
伐倒したコナラは、意識して林内に積み重ねておいた。
カミキリムシやクワガタ、カブトムシ等を呼び寄せるためだ。
その成果か、今年は多くのクワガタの姿を見かける。

樹木が何らかの原因で枯死すると、それまでは樹木の持つ生きる力によって侵入を阻まれていた様々な生物が取り付く。
キノコをつくる木材腐朽菌はその代表選手だ。
栄養を得るために菌糸を延ばしながら木材の分解を始める。
木材腐朽菌の侵入によって、堅牢だった枯れ木が次第に軟らかさを増していく。

クワガタの仲間は、そうした時期の樹木に卵を産み付ける。孵化した幼虫は、分解の始まった枯れ木を菌糸もろとも食べ進み蛹となる。カブトムシの幼虫は、さらに分解が進んだものでないと食べることができない。クワガタの幼虫は枯れ木を早く土に返す仕事をしていることになる。

成虫は樹液を吸うが、同じく樹液に集まるカブトムシとのケンカは分が悪いので、カブトムシよりは早く、6月中旬頃に羽化する。

20070714 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2007年7月12日 (木)

ヨツボシヒラタシデムシ

20070711yotubosihiratasidemusi

オオモミジの枝にヨツボシヒラタシデムシを見つけた。胸の外殻が透明で美しい。
蛾の幼虫などを食べる虫だ。

森林内には樹木の葉を餌とする虫も多い。本種のような食性の虫がいなければ森林はすぐに丸裸になってしまうだろう。
農林業の分野ではこうした虫を「益虫」と呼ぶ。
「害虫」を捕食し人間に益するからこう呼ばれる。
多様な生物がいて森林の生態系は成り立っている。
「害虫」とは人間の都合によってのみ存在する概念にすぎない。
自然界では不要な存在はない。つまり「益虫」もまた自然界には存在しない。

20070512 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月11日 (水)

ニワハンミョウ

20070711niwahannmyou

友好の森では数種類のハンミョウに出逢うことができる。
ハンミョウの仲間は地面を這うように飛び回りながら餌となる昆虫を探し回る。
人が歩く先々を飛ぶので「道教え」などとも呼ばれる。

幼虫はイモムシ型で地面に穴を掘り、穴の傍を他の昆虫が通るのを待ちかまえている。エノコログサなどの茎をさし入れると、幼虫が噛みついてくるので、静かに引き上げると釣り上げることができる。

本種は、以前に紹介したハンミョウに比べるとやや小型で色彩も地味だ。

20070513 NIKON D80 70-300VR

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年6月30日 (土)

カブトムシ

20070630kabutomusi

子どもたちに大人気の虫だ。いや、子どもばかりではない、カブトムシを見つけると、子どもにかこつけてはいるが、黒光りする体躯、立派な角に大人だって目を輝かせる。

成虫は7月頃に羽化すると、まもなくパートナーを見つけ、堆肥や林内の腐植土に産卵する。8月から9月にかけて孵化、翌年の5~6月頃まで幼虫になり、その後、蛹になるという生活史を過ごす。雄の成虫は2~3週間、雌でも4週間ほどで命を終える。彼らがその一生の殆どを幼虫として過ごすことに意識が及ぶことは少ない。

光合成を行う植物は、太陽の光を利用して無機物から有機物を生み出し、あらゆる生物に供給する。そのため自然の生態系の中では「生産者」と呼ばれる。そして、植物が利用する無機物は、様々なものに由来するが、その多くは、生物の死体や排泄物などの有機物である。これらの有機物を、植物が利用可能な無機物にまで分解する過程にも多くの生物が関与する。

カブトムシの幼虫も「分解者」だ。飼育下の観察例では、一匹の幼虫が蛹になるまでにどんぶり三杯以上の腐植を食べ、大量の糞をする。土をつくるという重要な役割を果たしていることになる。
一般には針葉樹の腐植は幼虫の成育に向かないとされているが、川場村ではスギのバーク(樹皮)堆肥に大量に発生している。

20070630 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月24日 (日)

シラフオナガヒメバチ

20070624sirahuonagahimebati

将来、カブトムシやクワガタが沢山やってくるような雑木林を再現しようと思い、ヒロイド原の一画にコナラを中心とした広葉樹の林を作り始めた。密かに「カブトの森」と呼んでいる。
その林が植林後14年目を迎え、思惑どおりカブトムシをはじめとする様々な虫たちがやってくるようになった。
まだまだ若い木ばかりなので、これからも生物相は豊かに変化していくことだろう。

写真は今年の5月にカブトの森で出逢ったシラフオナガヒメバチというオナガバチの仲間だ。
体長は2cmほど、長いシッポまで入れて5cmほどのスレンダーなハチだ。

キバチという、成育中の樹木の内部を幼虫が食べるハチがいるが、オナガバチは長いシッポを樹木に射し込み、キバチの幼虫に卵を産み付ける。孵った幼虫はキバチの幼虫を食べて育つ。
キバチのような虫がいて、土ができる。土があるから樹木は生育できる。
けれども、キバチが大増殖すると樹木が無くなる。
オナガバチがキバチの頭数コントロールをしていることになる。

森林づくりの目標は人が力を貸すことなしに、生態系がうまく機能することにあると思っている。
様々な生物の存在がそれを可能にする。

20070513 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月21日 (木)

ヤブキリ

20070620yabukiri

一ヶ月ほど前のヒロイド原にはカントウタンポポが咲き誇っていた。
昨年まではこれほど多くのタンポポをみることはなかったように思う。
多くの人々が森林づくりのためにヒロイド原を訪れた結果だろうか。
人間の行動は良くも悪くも地域の生態系に影響を与える。
そして、生態系の変化は景観の違いとなってわれわれの目に映る。
こうした変化を攪乱と捉えるべきなのか、あるいはゆっくりとした人為の影響は良しと考えるべきなのか。悩むところである。

写真は5月12日。ヤブキリの幼虫が様々な花に取り付いて花粉や花弁を食べていた。
ヤブキリは成虫になると主な住処を樹上に移し、それとともに食性も変化させ他の昆虫を食べるようになる。
樹林地と草原がモザイク状に配された環境で出逢う昆虫だ。

食べる端から糞をしているが、花粉と同じ色の糞をしている。よほど燃費が悪いのか。

20070512 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月19日 (火)

ヒメアシナガコガネ

20070619himeasinagakogane_1

梅雨入り直前のヒロイド原は、春から夏へと徐々に衣替えを始めていた。
植林してから13年ほどになるコナラの林も新緑に覆われていた。
ひと月ほど前には、やっと新葉を展開し始めたコナラもずいぶんとしっかりした葉を茂らせ始めた。根からも活発に水分を吸い上げ始めているようで、樹液を吸う春ゼミの声がうるさいほどであった。

明るい林床に目をやると、草の葉に小さなコガネムシがとまっていた。
後足の爪が長く、遠目に見ると足全体が長いように見えることから、ヒメアシナガコガネという名が付いている。8月頃の夏の盛りには成虫は姿を消す。春から夏へと移ろう季節の虫だ。
成虫は花粉を、幼虫は植物の根を食べる。

20070613 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月17日 (日)

ミヤマセセリ

20070617miyamaseseri

ミヤマセセリは春の蝶だ。
成虫は雪解け後早々に姿を現し、梅雨前には姿を消す。
写真の個体には5月12日にヒロイド原で出逢った。
外敵に襲われたのか、雌を争って他の個体と戦ったのか、羽が傷ついている。
短い一生をそろそろ終える時期にさしかかっている。

ヒロイド原にコナラの植栽を始めてから10年以上の歳月が流れ、それとともに生物相が豊かになってきたように思う。
近年になって、これまでに見ることがなかった虫や花を目にすることが増えてきた。

本種も、幼虫時代にはコナラなどの葉を食草としているので、ヒロイド原に定着しつつあるのだろう。

20070512 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ウスモンオトシブミ

20070616usumonnotosibumi

森林づくりに大切なことがある。作業適期を選ぶということだ。
植林、下刈り、枝打ち、伐採、それぞれに適期がある。
もちろん、作業を行うのは人間だから、人間の都合も作業時期を決めるうえでは大切な要素だが、生き物である樹木の生理を無視しては何もできない。
そして、作業適期は全国一律に、何月になったら間伐可能、などという単純なものではない。その土地土地で適期は異なるし、作業の対象となる樹種によっても異なる。
では、物言わぬ樹木の生理をどのようにして見抜くのかというと、周辺の環境変化に注目することだ。虫の活動や草木の開花などが良い指標となる。

オトシブミの仲間は、木の葉を巻いて幼虫のゆりかごを作る。小さな体で、自分の何十倍もの大きさの葉を器用に巻く。夏が近づくにつれて葉は堅くなり、おそらくオトシブミには巻くことができなくなってしまうのだろう。春に芽生えたまだ柔らかな葉がゆりかごづくりに使われる。

常緑広葉樹の植栽は夏期が良いとされるが、オトシブミが葉を巻く季節は、樹木も盛んに新しい根を伸ばす時期なので、避けた方がよい。常緑広葉樹の植栽は梅雨入りを待った方がよい。

20070513 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月10日 (日)

ベニシジミ

20070610benisijimi

かつてヒロイド原は家畜のための採草地や養蚕のための桑畑として利用されてきた。
「友好の森」が設置されてからはコナラなどの植林を行い、雑木林の生態系と景観を取り戻そうとしてきた。
「友好の森」が設置されたのが、今から15年前の1992年のことだから、まだまだ樹木の背も低い。そのため、現在は草原とまだ若い雑木林が入り組んだような景色が広がっている。

写真は5月12日。
現在のヒロイド原はお花畑のようだが、一ヶ月前はまだ枯れ葉色の草原だった。
わずかに咲くヒメオドリコソウやホトケノザなどの花の間を鮮烈なオレンジ色の蝶が飛び回っていた。
ベニシジミが飛び始めると、いよいよ春本番だ。

20070512 NIKON D80 28-200

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2007年6月 9日 (土)

ハンミョウ

20070609hannmyou_1

川場村での森林づくりは、「友好の森」と名付けられた約80haの森林を中心に行われてきた。この友好の森の中心部に「森の村」という宿泊施設がある。
「森の村」は森林づくりに訪れる人々が宿泊をしたり、地元の人々との交流をはかったりするために建設された施設だ。

不思議なことにこの「森の村」付近にハンミョウが多い。
ハンミョウは純肉食のどう猛な甲虫だ。
大きなあごで他の昆虫を捕獲する。
獲物となる昆虫にはその存在をなるべく知られない方が都合が良さそうなものだが、写真のような派手なまだら模様をしている。
まだら模様で猫のように狩りがうまいことから「斑猫」という名が付いた。

写真は交尾中の雌雄だが、雄は強大な大あごで雌をがっちりと捕まえている。

20070512 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月 8日 (金)

コアオハナムグリ

20070608koaohanamuguri

川場村での森林づくりの拠点になっている宿泊施設「なかのビレジ」から緩やかな坂道をのんびりと10分ほど上っていくと「ヒロイド原」に出る。
村の古い文献などを見るとどこを掘っても水が出るということから「広い井戸」という名が付いたのが地名の由来のようだ。

5月のヒロイド原はまるで花畑のようになっている。
ヒメジョオンやカントウタンポポ、オオイヌノフグリやヒメオドリコソウ。
さまざまな花が咲き乱れている。

ふと見るとずいぶんと多くの花にコアオハナムグリがとりついて盛んに花粉を食べていた。

20070513 NIKON D80 105MICRO

| | コメント (0) | トラックバック (0)