カテゴリー「虫と一緒に森林づくり」の27件の記事

2007年12月10日 (月)

ウスタビガの繭

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枯れ葉色の景色の中で、ひときわ目をひくのはウスタビガの繭だ。
蛍光色のような鮮やかな緑色をしている。
ヒロイド原では、ケヤキやヤマボウシの細い枝に目立って着いていた。
秋には羽化しているから空の繭だが、山の木々が葉を落とした冬景色によく似合っている。

ウスタビガはクスサンなどと同じヤママユガの仲間だ。
この仲間の成虫は、餌をとる口さえなく次世代を生み出すためだけに存在する。
こうした生活史をもつ生物もいることを知ると、命とは何のために存在するのだろうかと、柄にもなく哲学的なことさえ思ってしまう。

目をひく色彩であるのに、けして下品ではなく、軽やかであるのに強靱なこの繭は、「山かます」と呼ばれている。

20071201 NIKON D80 70-300

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2007年12月 4日 (火)

カマキリの卵

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冬の気配がようやく漂いだしたヒロイド原でオオカマキリの卵嚢を見つけた。
オオカマキリは10月頃に産卵シーズンを迎えるが、その年の積雪高ほどの高さに産み付けるという。
雪を避けるのであれば、はじめから高いところに産めば良いし、雪に埋まる方が都合がよいのであればいつでも低いところに産み付ければよいのに、不思議なことだ。
雪に埋めたくはないが、寒風に吹きっ晒しにはしたくないということなのだろうか?
それより何より、その年の積雪高をどうして知るのかということが不思議だ。

カマキリのような肉食の昆虫がいなければ森林(やま)は、草食性の昆虫によってあっという間に丸裸にされてしまうだろう。
お百姓さん達だって農業を続けることはできないだろう。

20071201 NIKON D80 105MICRO

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2007年10月24日 (水)

トラマルハナバチ

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10月の中旬に、夏の下刈りの成果を確認するために新植地に足を運んだ。
この時期に花を咲かせている草本も限られてきていたが、何種類かのアザミが紫色の花を咲かせていた。少しの間観察をしていると、コロコロとふとったハチがやってきた。
冷涼な気候によく適応し、世界に250種、わが国にも14種類が分布するハナバチのなかまでトラマルハナバチという種類のハチだ。ミツバチ同様、社会性のハナバチである。縫いぐるみの熊のような鮮やかな橙色の毛に覆われて、よく目立つ。攻撃性は極めて弱く刺されることは滅多にない。

春に女王蜂がモグラの巣穴等を利用して土中に営巣を開始し、夏から秋に大家族に発展、冬に解散という一年性の生活史を送る。巣は蜜蝋と草を混ぜ合わせたブドウの房状のもので、幼虫の育室の隣には餌となる花粉の貯蔵室をつくるなど、非常に発達している。巣の中では一匹の母親の女王蜂を中心にたくさんの働き蜂(雌蜂)からなる家族で生活する。

長い口吻で蜜を吸う際に全身の毛が花粉まみれになり、また別の花へと移動する際に花粉を媒介する。高い花粉媒介機能が果樹生産農家などにも注目されている。
近縁外来種のセイヨウマルハナバチは同様の目的で輸入され、ハウス栽培で利用されたが、温室から逃げ出した個体が定着し、北海道などでは在来種の生存を脅かし、問題にもなっている。

無雪期をとおして活発に飛び回るハチだが、開放地に多いため森林内で出逢うことは少ない。そのため下刈り以外の作業の時には目にとまりにくい。下刈りの時期を過ぎると、新植地からは足が遠のきがちだが、秋や冬の新植地に足を運び、ゆっくりと風景を楽しむことも楽しいものだ。

20061015 NIKON D80 60MICRO

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2007年10月 8日 (月)

キタテハ

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10月にはいると気温も下がり、樹木は厳しい冬を乗り切る準備を始める。雑木林の落葉広葉樹は、春から夏に茂らせた葉を紅葉させてから順次落としていく。葉からの水分の蒸散が弱まるにつれて、根も大地から水分を吸収する勢いを弱めるので樹液流動も僅かなものになっていく。間伐や枝打ちなどの森林作業の適期である。

キタテハは樹液流動の盛んな夏期には雑木林に集まる。クヌギやコナラなどの樹幹にカミキリムシなどがつけた傷から流れ出す樹液に誘われるからだ。しかし、秋になり、木々から甘い樹液がほとんど滲み出さなくなってくると、花の蜜を吸いにキク科の植物に集まるようになる。写真のノコンギクは、太陽の光が木々の葉で遮られないような開放地に群生し、秋の里山を彩る植物だ。間伐などの作業を終えて林道を歩き、開けた明るい場所に出たところでキタテハに出逢うことが多い。

翅を閉じていると枯れ葉のようでまるで目立たない。しかも虫食いの枯れ葉に擬態していて、晩秋の風景に見事にとけ込んでいる。ところが、いったん翅を広げると赤味がかったオレンジ色の地に黒い豹紋が目に鮮やかだ。保護色と警戒色、翅の表裏に正反対の工夫を凝らした入念な生き残り戦術である。タテハチョウの仲間が蝶の中ではもっとも進化したグループだといわれる所以であろう。幼虫は、食草でもあるカナムグラの葉を糸で綴り、屋根状の巣を作って暮らしている。これもまた進化の成果だろう。

花に集まるキタテハを目にするようになると、間伐や枝打ちの季節の到来だ。

20061015 NIKON D80 60MICRO

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2007年9月28日 (金)

クスサン

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わが国最大の蛾であるヨナクニサンの近縁種。開長が20㎝を超えるヨナクニサンに比べれば、本種は遙かに小振りだが、それでも羽を広げれば大人の手のひらほどの大型の蛾だ。

クスサンは「樟蚕」。幼虫がクスノキの葉を食べることからこの名が付いた。成虫は、幼虫の食草に産卵のために寄りつくので、昔の人々には成虫もクスノキを好むと思われたのかもしれないが、成虫は口が退化しており食べ物を摂ることはない。

クスノキはクスノキ科の常緑広葉樹で、柱などの建築構造用材から仏壇仏具、盆や菓子器などの刳りものにまで広く利用される。現在でこそ、石油化学製品におされ利用はほとんどなくなったが、かつては、幹・根・枝葉を蒸留精製して樟脳を採取し、セルロイド・火薬・医薬品・防虫剤などにも広く使用した。

「蓼食う虫も好き好き」という言葉があるが、クスサンはさらにその上をいっている。なにせ防虫成分をもつ葉を食べるのだから。この悪食の幼虫は、他にもクリ・クヌギ・コナラ・サクラ・イチョウなど、広範にわたる樹木の葉を食べる。8cmにも及ぶ大型のイモムシで、青みがかった白い体を白く長い毛で覆い「しらがたろう」と呼ばれる。
蛹の繭も特徴的だ。山繭蛾の仲間だけあって、浅黄色の絹糸で、民芸品店に並ぶランプシェードのような手の込んだ繭を作ることから「すかしだわら」と呼ばれる。幼虫・蛹・成虫と三世代にわたって、それぞれに名を持つ程になじみの深い昆虫だ。

20060922 NIKON D80 60MICRO

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2007年9月21日 (金)

エダナナフシ

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擬態をする生物は数多いが、エダナナフシはその筆頭だ。小枝のような体形でよほど注意しなければ見つけることはできない。
森林内には伸び始めの若枝から枯れかけの枝、完全に枯れてしまった枝など、様々な枝があるが、彼らの体色もそれらにあわせて、緑色、灰褐色、茶褐色と豊かなバリエーションを持っているから驚かされる。普段はあまり動かずにじっとしていることが多いが、いざ動くときにもゆらゆらと揺れながら動く。その動きはそよ風に揺れる小枝のようであり、たいした念の入れようだ。
都市部にも生息する珍しくない虫なのだが、見事な擬態が功を奏して人の目にもとまりにくい。

本種を含めてナナフシの仲間は謎多き生物である。ある種は雄が数匹しか発見されていなかったり、またある種は、地域によって雄ばかりだったり、別の地域では雌ばかりだったりする。雌だけで単為生殖を行うことも確認されているので、こうした雌雄の棲み分けも可能なのだが、そうした生理・生態のもつメリットは人間の想像の範囲を超えている。

指先で触れると、体をぴんと伸ばしたままポトリと落ちる。足だけをつまむと何の抵抗もなく足がポロリともげ落ちる。その様子も、枯れ枝が風に揺られて音もなく落ちる様子にとてもよく似ている。

明るい雑木林や、よく陽の射す林縁部に多く生息する生物なので、林内で彼らを見かけなくなったらそろそろ間伐を計画しなくてはならない。

20060808 NIKON D70 28-200

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2007年9月16日 (日)

トノサマバッタ

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日本のバッタの仲間では一番大きな体をもち、ダイミョウバッタとも呼ばれる。 
他のバッタに比べて高い飛翔力を持つうえに、人の気配に敏感で、そばに近よるのはなかなかむずかしい。図鑑やテレビでおなじみなので、子どもたちにも人気だが、実物を目の当たりにすると立派な体格にたじろぐ子どもも多い。

イネ科やカヤツリグサ科の植物の葉を好んで食べるが、餌が不足すると様々な植物の葉も食べる。普段の状態は「単生相」とよばれるが、個体密度が高くなると「群生相」と呼ばれる個体が発生する。
長距離飛行に適した長い羽、跳躍には不適な短い後足、頭や胸が大きいことの他、体色が暗褐色となることが「群生相」の特徴だ。大変な食欲で植物を食い尽くしながら大集団で長距離の移動をする。
本種をはじめ近縁種の「群生相」は、世界各地で時折猛威を振るう。中国やわが国でも「飛蝗」と呼ばれて恐れられている。

特定の生物が爆発的に増殖するケースはまま見られるが、要は自然界のバランスが崩れたときに見られる現象である。多様な生物が生息可能な環境を守ることが重要だ。
本来、空き地や河原など、開けた場所に生息するバッタなので、小石混じりの地面に生える草に似せた体色をしている。伐採跡地などで本種を頻繁に見かけるようだと、伐採面積が大きすぎて森林の生態を崩している可能性を疑う必要があるかもしれない。

20060808 NIKON D70 28-200

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2007年9月11日 (火)

クマバチ

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クマンバチとクマバチ、たった一文字違いで紛らわしい。地域によっては入れ替わることもあったりしてよけいに混乱する。クマンバチはスズメバチの別名だ。スズメバチは人畜に対する攻撃性も強く、食性も他の昆虫を襲って食べる肉食性のハチである。
一方のクマバチは、一応針はもってはいるものの、まず人を刺すことはない。
蜜や花粉を食べる温和しい性質のハチだ。ミツバチやスズメバチのように群れをつくらず、単独で生活する。「熊」の名が示すとおり、ずんぐりとした体型で、体長の割には大きく見える。おいしい蜜を出す花を見定めているのか、羽音を立ててホバリングをしてから花にとりつく。
採餌は開放地で行い、営巣は樹林地で行うため、樹林地と草原がモザイク状に配された環境下でよくお目にかかる。立木の枯れ枝の中に穴を空けてトンネル状の細長い巣を作るため、林内には適度に枯れ枝が必要だ。

多様な生物を確保するためには、森林内だけをとってみても、生長盛んな若木、洞をもつような老木、未だ倒伏しない枯れ木、倒木等々、多様な環境が必要だ。多様な生物が取り持つ絶妙なバランスこそが、薬剤も、大きな労力も必要としない健全な自然環境を支えている。時に人間に害を為す生物も自然の中では何某かの役割を演じているし、様々な生物が拮抗することで甚大な被害が出ることも少ない。

無雪期を通して花から花へと飛び回るこのハチを目にしなくなると降雪も間近だ。

20060821 NIKON D70 60MICRO

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2007年9月 4日 (火)

ウマオイ

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草原性の昆虫だが、林縁部の草原などに多くみられ、広大な開放地でみることは少ない。スイーチョン、スイーチョンと長鳴きをする「ハヤシノウマオイ」とシッチョン、シッチョンと短く鳴く「ハタケノウマオイ」に区別されることもある。夏から晩秋にかけて大きな澄んだ声で鳴く声が、馬子が馬を追う声に似ることからこの名が付く。体色は淡緑色で、頭部から前胸の背面に濃褐色の太いラインが走るのが特徴だ。

夜行性の昆虫だが、下刈りなどによって起こされて眠そうな足取りで顔を見せる。
性質はどう猛で幼虫時から他の昆虫を補食する。キリギリスの仲間は幼虫の時には花粉や花弁、草の葉等を食べ、成熟にしたがって肉食性を強めるものが多いが、本種は生まれついてのギャングである。

肉食性の昆虫の存在は、餌となる昆虫が豊富に生息していることの証明だ。針葉樹の人工林、雑木林、草原等がモザイク状に配置されることで多様な環境を生み、多くの生物の生息を可能にする。
湿潤温暖なわが国の気候は、一般に森林の成立に適しているため、刈り払いや火入れといった人為が作用しなければ単純な生物相へと移行する。また、肉食性の生物が存在しなければ、草食性の生物が爆発的に増加し、短時間に食草を食い尽くし自らの生息も不可能となる。

林業は自然の生態系と人為が織りなすコンビネーションプレーだ。収穫を目的とする樹種にのみ焦点を当てた保護・管理は短期的には収量の増大をもたらしても、長期的には尻すぼみとなる。

20060820 NIKON D70 60MICRO

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2007年9月 2日 (日)

ツマグロオオヨコバイ

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盛夏の下刈りは暑さとの闘いだ。新植地には木陰など望むべくもないので、炎天下に大粒の汗が滝のように流れる。草いきれでむせかえる。作業をサボってわずかな日陰でしゃがんでいたって決して楽ではない。高度な技術を要求される作業でもないのに、「下刈りがきちんとできれば一人前」と云われることが身にしみてわかる。
だからといって気候が和らいでからでは下刈りの意味は半減する。苗木の生長を妨げる下草を直截に除去することだけが下刈りの目的ではないからだ。草木が種子を稔らせる前に刈り取ることで、次年の芽生えのための種子供給量を減らすことも重要な下刈りの目的だ。

ツマグロオオヨコバイは成虫で越冬し、5月頃に産卵期を迎える。生まれたての幼虫は透き通るように全身が白いが、次第に蛍光色のような黄色い身体になる。その後時間をかけて8月末ころに成虫になる。
成虫になったこの虫をたくさん見かけるようになると、その年の下刈りを急がなくてはならない。

様々な植物の汁を針のような口を使って吸う。食草を限定しない食性をもっているのでいろいろなところで目にすることができるが、人の気配を感じると葉の裏に素早く隠れてしまい見逃してしまう。ところが、子どもの視点からは葉の裏がよく見える。横歩きする動作のユニークさも人気の的だ。その体色から「バナナ虫」と呼んでなじみが深い。

20060922 NIKON D80 60MICRO

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