『里山を歩こう』
今森光彦:『里山を歩こう 』、岩波ジュニア新書、2002年初版
ジュニア向けといって侮るなかれ。岩波のジュニア新書シリーズは名著揃いである。
本書もその例に漏れない。
著者の今森氏は、東南アジア諸国を中心に世界を撮り歩く写真家であるが、決して珍しい物好きの海外信奉者ではない。
わが国の自然と人々の暮らしの接点に暖かい目を向け続け、素晴らしい写真と文章で綴られた多くの著書を上梓している。
本書も、そうした氏の著作のうちの一冊である。
書名のとおり、「里山」をキーワードに全編が綴られているが、そのバランスが見事である。
滋賀県大津市の仰木という集落を舞台に、里山の生物のこと、棚田と里山のこと、集落の伝統と里山のこと、河川と里山のこと等々が充分にして簡潔に描かれている。
そして、最終章は、里山は懐かしい風景ではなく、未来の風景であるという提言で結ばれている。つまり単に、ノスタルジーの世界ではなく、里山と、その存在を支える人々の生活や生産の姿こそが目指すべき姿であることを強調している。
悲観的なだけの農林業論でもなく、徒な楽観論でもなく、きちんとした目線で捉えられた里山を描き得るのは、著者自身の生きる姿勢の賜物だろう。
近い将来、川場を舞台にしたこんな一冊を世に出したい。
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