カテゴリー「森林づくりお薦めの一冊(新書)」の34件の記事

2007年12月13日 (木)

『里山を歩こう』

20071212satoyamawoarukou 今森光彦:『里山を歩こう 』、岩波ジュニア新書、2002年初版

ジュニア向けといって侮るなかれ。岩波のジュニア新書シリーズは名著揃いである。
本書もその例に漏れない。

著者の今森氏は、東南アジア諸国を中心に世界を撮り歩く写真家であるが、決して珍しい物好きの海外信奉者ではない。
わが国の自然と人々の暮らしの接点に暖かい目を向け続け、素晴らしい写真と文章で綴られた多くの著書を上梓している。

本書も、そうした氏の著作のうちの一冊である。

書名のとおり、「里山」をキーワードに全編が綴られているが、そのバランスが見事である。

滋賀県大津市の仰木という集落を舞台に、里山の生物のこと、棚田と里山のこと、集落の伝統と里山のこと、河川と里山のこと等々が充分にして簡潔に描かれている。
そして、最終章は、里山は懐かしい風景ではなく、未来の風景であるという提言で結ばれている。つまり単に、ノスタルジーの世界ではなく、里山と、その存在を支える人々の生活や生産の姿こそが目指すべき姿であることを強調している。

悲観的なだけの農林業論でもなく、徒な楽観論でもなく、きちんとした目線で捉えられた里山を描き得るのは、著者自身の生きる姿勢の賜物だろう。

近い将来、川場を舞台にしたこんな一冊を世に出したい。

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2007年11月11日 (日)

『こんにゃくの中の日本史』

20071111konnnyakunonakanonihonsi武内孝夫:『こんにゃくの中の日本史 』、講談社現代新書、2006年初版

川場村について考える際にコンニャクを外すことはできない。
生糸生産が次第に衰えを見せる中で、この村の人々の生活を支えたのがコンニャク栽培だったからだ。コンニャク栽培の導入によって、村の消滅を回避したと言っても過言ではない。
現在では、そのコンニャク生産も、中国産などの安価なコンニャクの流入によって非常に厳しい状況下にあるが、それでも村の中には、まだまだ頑張っているコンニャク生産者が少なくない。

本書は、わが国におけるコンニャク栽培の歴史をコンパクトにまとめた一冊である。

コンニャクといえば、食用が真っ先に思い浮かぶし、現在においては、まさにそのとおりであるが、糊としての利用を代表として様々な工業原料としてもコンニャクは利用されてきた。第二次世界大戦下では、風船爆弾の主要材料として利用された歴史もある。さらに遡ると、帯の惹句にあるように、桜田門外の変の資金源として、換金作物であるコンニャクが一役買ったことなど、興味深いエピソードが数多く紹介されている。

森林には必ず所有者や管理者、そして利用者がいる。彼らの営みによって森林が現在に伝えられていることを忘れることはできない。そして、そうした人々の多くは農家であった。
川場の森林(やま)づくりを進める際に、川場の農業生産に考えを及ぼすことを欠いては決してうまくいくものではない。

川場の農業をより深く知るための好著である。

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2007年11月 8日 (木)

『杉線香の話』

20071108sugisennkounohanasi 柏順子:『杉線香の話-片隅に残る伝統産業』、筑波書林、1980年初版

地方に出かけると、できるだけ小さな本屋を覗くようにしている。
大手の取り次ぎを通さないような小さな版元が出版した、地域限定の本が書架に並んでいることが多いからだ。書き手もまた地域の人であることが多いし、書かれた内容も地域限定で、ネット上を検索しても見つからない本が多い。
玉石混淆であることも確かだが、売れ線を狙わない丁寧なつくりの本が見つかるのもこうした中からだ。
本書も、まさにそういった一冊だ。

「杉線香」というのは、なにも特殊な線香ではない。仏前に供える、ごくごく一般的な線香のことである。
線香は杉の葉に香料などを混ぜてつくられる。

本書には、線香の製造方法から、製造業者の技術伝承の系譜、原材料である杉の葉の収集方法から加工方法、そして、この産業の将来展望に至る広範な内容が盛り込まれている。

わが国の木材産業の斜陽化には様々な背景があるが、均角の木材のみが市場性を保ち、それ以外の多様な利用方法が、代替材に圧されたことも大きな理由となっている。
身の回りを見渡すと、実に様々なところに樹木に由来する物が使用されているにもかかわらず、わが国の林業家の多くは柱材生産に固執する。

「バイオマス利用」などとわざわざ洒落た言葉を使う必要などない。
わが国では、もともと木を余すところなく使ってきたのだ。
森林(やま)づくりを進めるにあたって、古くから伝えられてきた森林のめぐみを利用する知恵から学ぶべきことは多い。

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2007年10月23日 (火)

『自然を感じるこころ』

20071023sizennwokannjirukokoro 野田研一:『自然を感じるこころ -ネイチャーライティング入門』、ちくまプリマー新書、2007年初版

わが国におけるネイチャーライティング研究の第一人者である著者の手による一冊。

ネイチャーライティングとは、「1.自然に関する科学的情報、2.自然に対する個人的な反応、3.自然に関する思想的・哲学的解釈(本文より抜粋)」を基本要素としてもつノンフィクション形式のエッセイの総称である。

『シートン動物記』や『ファーブル昆虫記』などに代表されるように、あるがままの自然の姿を謙虚に映し、それに心情を乗せて描かれた文学作品は、多くの人々の自然に対する理解を深めるとともに心を動かす。
結果として、悲壮な運動論ではなく、厭世的でもない自然保護の実践者を生み出すこととなる。

わが国においては、担い手に恵まれないネイチャーライティングの重要性と楽しさを伝える好著である。

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2007年10月 2日 (火)

『木造建築を見直す』

20071002mokuzoukenntikuwominaosu 坂本功:『木造建築を見直す』、岩波新書、2000年初版

わが国における森林の保全を考える際には、やはり林業を見つめる必要がある。
木材価格が低迷する昨今にあって、「林業」を森林を活用した総合産業であるというように拡大解釈すべきであるとするむきもある。
しかし、やはり林業の本体は木材生産にある。木材は我々の生活の衣食住全てにわたる局面で驚くほど多様な利用をされてもいるが、やはり、質的にも量的にも、建築用材としての利用が中心である。

川場での森林づくり活動も人工林の管理・保全を目的とした活動を多く含んでいるので、木材の生産を常に視野に入れておく必要がある。自分たちが管理にたずさわった森林から生み出された木材がどのように流通し、利用に供されるのかを知っておくことは、森林づくりの方向性を決める上で極めて重要なことだ。

1995年1月17日に阪神・淡路地方をマグニチュード7.3という途方もない地震が襲った。死者6,434名、行方不明者3名、負傷者43,792名という甚大な被害をもたらすものであった。
そして、この震災は林業・木材界にも看過できない影を落とすことになった。「木造建築は震災に弱い」という風評被害とさえいえるイメージの流布である。
木造建築は本当に震災に弱いのであろうか。だとしたら、地震大国であるわが国になぜ木造建築が根付いたのであろうか。

本書では、木造建築の有利性・不利性を偏らずに説いたうえで、木造建築に明るい希望を提示している。
木造建築という文化について、もう一歩深く知るための好著である。

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2007年9月16日 (日)

『遭難のしかた教えます』

20070916sounannnosikataosiemasu 丸山晴弘:『遭難のしかた教えます―安全登山のための辛口レクチャー (NEW YAMA BOOKS) 』、山と渓谷社、1999年初版

森林(やま)づくり、森林ボランティア、林業体験、何れにしても危険と隣り合わせの活動である。
このページでも『危険感受性をみがく』『市民の森林づくり』を紹介し、森林に関わる活動が決して安全なものではないことを強調してきた。

ところが、林業の世界は、安全に対する配慮に欠けるとことがある。もちろん、林業・木材製造業労働災害防止協会等によって種々の努力も重ねられつつはある。それでも、他の分野に比べると見劣りがする。

わが国における森林づくりは、山岳地形地における活動であることや、刃物などの危険物を使用する活動であることなどから、危険性を強く孕んだ活動であることを再確認することが大切だ。

森林づくりは、スキーやキャンプ、登山など、他の活動と同じアクティビティを含んでいる。そのため、そうした種々の活動の安全を確保することを企図した出版物からも学ぶことが多い。

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2007年9月15日 (土)

『地球温暖化を考える』

20070915chikyuuonndannkawokanngaeru 宇沢弘文:『地球温暖化を考える』、岩波新書、1995年初版

以前このページで紹介した『社会的共通資本』の著者である宇沢氏の著作。

1992年にブラジルのリオで開催された地球サミットでクローズアップされた問題が、本書の表題ともなっている「地球温暖化」問題だ。
二酸化炭素は、それまで無害の排出ガスとして社会に認知されてきた。むしろ如何に排出ガスを二酸化炭素にするかという観点で様々な技術開発が為されてきたと言っても過言ではない。
それが、一夜にして悪者になった。

森林(やま)づくりには、ローカルな視点が極めて重要であり、このページでも、その点を重視してきた。
もちろんローカルな視点の重要性を撤回するつもりはないが、やはりグローバルな視点も必要である。

「地球温暖化」というきわめてグローバルな問題の発生のメカニズムの分析と、「温暖化防止」に向けた具体的な提言が本書ではなされている。
「地球温暖化防止」に向けたアクションは、これまで経済の枠組みから除外されてきたが、社会の形成と発展に必要な様々な事象を社会的に認知することの重要性が強調されている。

森林(やま)づくりの持つ意味は、樹木が炭素を固定するからなどという狭隘なものではない。
森林を護り、林業を振興することの意味を矮小化してはならない。

本書も、我々の森林づくりに大きなヒントを与えてくれる。

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2007年8月31日 (金)

『自然保護という思想』

20070831sizennhogotoiusisou_3 沼田眞:『自然保護という思想』、岩波新書、1994年初版

著者は植物生態学の大家であり、わが国の自然保護活動や環境教育活動を常にリードし続けた碩学である。
日本自然保護協会の中核的なメンバーでもあり続け、日本環境教育学会の設立にも尽力し、ハンズオン型の博物館の草分けでもある千葉県立中央博物館の設立にもおいても中心人物であった。

本書では、そうした著者が自らの人生を回顧しながら「自然保護という思想」について俯瞰している。
「自然保護」から「環境保全」へとキーワードが変化する過程を簡明に整理し、そうした概念のシフトの功罪を明確に指摘している。

本書が上梓されてから既に10年以上が経過し、著者自身も世を去り、自然保護や環境教育もその姿を変えつつある。
およそあらゆる仕事がそうであるように、真っ白なキャンパスに絵を描くのではなく、既に先人たちが描いた絵に加筆修正を施す作業が必要である。社会のあり方に変革を促すような息の長い仕事については、とくにそうした作業を避けることはできない。

「自然保護」という思想・概念の辿ってきた歴史を知ることは、私たちの森林(やま)づくりにもしっかりとした柱を立てることになる。

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2007年8月16日 (木)

『木場ことば集』

20070816kibakotobashuu 宮原省久:『木場ことば集』、東京木材市場株式会社、1969年初版、2006年復刻

「角兵衛」「花魁」「粋物」「三味線」「太鼓」…等々等々。
これだけ聞いて何のことか分かる通人はまずいない。
何れも、かつて東京深川木場で木材の取引をする業者の間で使われてきた業界用語である。
深川の木場も江東区新木場に移転してからもう長いので、木材業者の間でも意味が通じない言葉が多いという。

本書は、深川木場時代から木材流通の要として機能してきた東京木材市場株式会社の創立50周年を記念して刊行され、その後同社の創立90周年を記念して復刻刊行された稀少書である。収録された用語は132語に及ぶ。

木材は、林木を育成し、伐倒し、搬出し、加工しなければ利用に供することはできない。そうした中で、流通・加工過程に関わった人々が仕事を円滑に、そして効率よく進めるために育んできた「ことば」が本書では紹介されている。
血の通わぬお役所言葉などではない、活きた「ことば」を通じて我々が学ぶことは多い。

森林(やま)づくりの目標、あるいは成果の一つとして、木材の利用を忘れることはできない。特に人工林を育てる作業に関わる場合、育てられた樹木がどのように姿を変え、どのように利用に供されるのかを知らなければ森林(やま)を育てることはできない。

残念ながら本書は少部数発行の非売品であるので入手は困難だろが、それでも紹介したい一冊だ。

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2007年8月 4日 (土)

『なぜイノシシは増え、コウノトリは減ったのか?』

20070804nazeinosisihahuekounotori_3 平田剛支:『なぜイノシシは増え、コウノトリは減ったのか 』、平凡社新書、2007年初版

2006年はツキノワグマの受難の年であった。
環境省のレッドデータリストに記載されながら、推測生息数の半数以上の頭数が捕殺された。
巷には「環境に優しい」人々があふれ、国民総出で「地球に優しく」している「経済大国」の姿である。

もちろん、農山村住民が熊と鉢合わせをして襲われてしまったり、農作物への多大な被害があったりと、看過できない問題が発生していることも事実である。
しかしなぜ、これまでの長い歴史の中で、若干の衝突はありながらも共存してきた熊と人間が今になって折り合いのつかない状況に置かれてしまったのだろうか。このことに思いを至らせない限り、豊かな自然を回復することはできないだろう。

本書では、様々な生物の生息環境を護り、復元する活動が紹介されている。
つい先日、わが国では46年ぶりにコウノトリの自然繁殖が確認されたが、この取組についても本書では1章を割いて報告している。

森林(やま)づくりは、一朝一夕には成されない大仕事である。
野生生物との共存を視野に入れない森林(やま)づくりは画竜点睛を欠く。

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