カテゴリー「川場のけものたち」の30件の記事

2009年1月29日 (木)

後山のテン

20090129tenn

以前にこのブログでも紹介した、内山節さんの『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』にも登場するのだが、キツネやタヌキとならんで、テンも人をだます動物であった。

「狐七化け、狸八化け、貂(テン)九化け」とも云われ、むしろキツネやタヌキよりも怪しい存在であったようだし、福島県の一部などでは、雪崩によって死亡した人間が化けたものと考えられていたらしい。

古い文物の膨大な所蔵で知られる奈良国立博物館では、テンのミイラ化した死体が、龍の一種である“虹龍(こうりゅう)”の遺存体として所蔵されている。

テンが人々にとって不思議な存在であったことをよく示してる。

一方で、テンは、狩猟対象獣として人々の生活と密接な関係を持つものでもあったようだ。
特に、冬に顔面の毛色を白く換え、体色を夏よりも鮮やかな黄色に換えるものを“キテン”と呼んで、最高級毛皮として高値で取引されていた。
各地に残る「テン捕りは二人で行くな」という諺は、猟の成果を独り占めしたくなった猟師が、もう一人を殺しかねないというものである。

友好の森でも、後山でもテンが記録された。
川場村の人々にとってテンはどのような存在だったのだろうか。

20081206 テン(後山)
自動撮影装置

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2009年1月25日 (日)

後山のノウサギ

20090125nousagi

12月5日に後山で記録されたノウサギ。

正式和名は“ニホンノウサギ”という。
ニホンノウサギには、4つの亜種があり、隠岐諸島に生息する“オキノウサギ”、佐渡島に生息する“サドノウサギ”、そして本州には“トウホクノウサギ”と“キュウシュウノウサギ”の2種が確認されている。

キュウシュウノウサギは、基本的に雪のない地方の亜種で、冬になっても淡褐色の毛色が変わることはない。

これに対してトウホクノウサギは、夏にはキュウシュウノウサギと同じ淡褐色の毛色をしてるが、降雪が近づくと耳の先の黒毛を残して、全身が真っ白の冬毛に覆われる。
雪の中で目立たない保護色であると考えられている。
その他にも、トウホクノウサギはキュウシュウノウサギに較べて足の裏の面積が大きいのだという。
これも、雪上を走り回るための適応だと考えられている。

面白いことに、川場村では、この両亜種を見ることができる。
以前に紹介したように、ニホンカモシカも灰白色のものと、真っ黒に近いものとを見ることができる。
豪雪地帯と寡雪地帯の狭間に村があるということなのだろう。

雪の多い年には、トウホクノウサギが生息数を増やし、雪の少ない年にはキュウシュウノウサギが数を増やすというようにして、長い間バランスをとってきたのかもしれない。

20081205 キュウシュウノウサギ(後山)
自動撮影装置

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2009年1月24日 (土)

後山のタヌキ

20090123tanuki

後山での自動撮影も、やっぱり一番多く記録されたのはタヌキだ。
写真は、1月19日の記事のキツネと同じ場所で撮影された一匹だ。

これまで20年間近く川場村に通っていても、肉眼でタヌキを見ることができたのはほんの数回に過ぎない。
それが、友好の森でも、後山でもこれほど沢山記録されるとは思ってもみなかった。

川場村全体では、いったい何頭のタヌキがいるのだろうか。
人前に姿を見せることなく、多くのタヌキたちが夜な夜な散歩を愉しんでいることを想像するだけでワクワクしてしまう。

ところで、まだ子どもの頃、新潟県の知り合いの家に泊まっていると、笹熊が捕れたと言って近所の人が訪ねてきた。
見るとタヌキなのだが、笹熊だという。
よくよく聞いてみると、タヌキには毛の模様で区別される6種類がいるのだという。
だから昔の人はタヌキのことを“ムジナ”と言ったというのだ。
漢字で書けば“六品”だろうか、あるいは“六科”だろうか。

そして目の前にいる一匹は、背中に笹の葉のような模様があるから、“ムジナ”のなかでも“笹熊”と呼ばれる種類なのだという。
子ども心に、ものすごい説得力のある説明だった。

しかし、今になって、このときの話の信憑性を調べてみようとしても、どうしても類似の説明が見つからない。

一番よく目につく説明は、ムジナとはアナグマの別名であり、タヌキも混同して呼ばれる場合がある、というものだ。
川場村でも、ムジナといえばアナグマを指している。
真相を知りたいところである。

20081204 後山で記録されたタヌキ
自動撮影装置

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2009年1月19日 (月)

ホンドキツネ

20090119kitune

友好の森に続いて、後山でもホンドキツネが確認された。

ホンドキツネは本州、四国、九州に生息し、北海道に住むキタキツネとともにアカギツネの亜種である。
このアカギツネは、北半球のほぼ全域に生息すると云われているが、生息環境の悪化に伴って個体数を減らしているといわれている。

日本人にとって、キツネといえば稲荷神社を思い起こすだろう。
“社(やしろ)”とは、集落の共同穀物倉のことで、穀物に害するものといえば湿気とネズミである。
湿気を避けるために高床式の建築様式が用いられ、ネズミを寄せ付けないために“ネズミ返し”が設けられた。
そして、社の入口にはネズミの天敵であるキツネが祀られたそうだ。
いなり寿司も、キツネの大好物である油揚げをネズミの形に仕上げたお供え物が原型だと伝えられている。

この穀物倉は、集落の人々にとって、まさに生活を支える大切な場所であったので、冬でも緑の葉をつける常緑樹が目印として植栽され、神を鎮守した。
穀物=“土”の恵みを“木”が守る場所として、古くは“杜”という文字があてられていたのだ。
時代とともに、神を表す“示”が“木”と置き換えられ、現在も用いられている“社”となったようだ。

“杜”は“もり”である。
農民が守り育てた“杜”の歴史を知ることも、森林(やま)づくりにヒントをくれそうだ。

20081117 ホンドキツネ(後山)
自動撮影装置

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後山のニホンカモシカ

20090119kamosika2_2
20090119kamosika_2

後山の山中の6カ所に自動撮影装置を設置して、昨年の11月7日より野生動物の生息確認調査を行っている。

写真のニホンカモシカの他、タヌキ、ホンドキツネ、テン、ノウサギが記録された。
なかでも、圧倒的に多く記録されたのはニホンカモシカとタヌキである。

ニホンカモシカは、基本的には単独か、雌と子どもの組み合わせで行動している。
また、比較的明瞭なテリトリー(なわばり)をもっていて、その中に他の個体が侵入すると追い払う行動も見せる。
そのため、ある地域における個体数の増大は、地域内の個体密度が高まるのではなく、生息域の拡大となって現れることが一般的であるようだ。

ところが、後山の場合、明らかに別の個体が数多く撮影されており、生息密度がかなり高いように思われる。
後山の調査はまだ2ヶ月あまりなので、手応え程度の情報しか得られていないため、はっきりとした答えを出すのは時期尚早である。

かつては“霊獣”とか“幻の動物”などと言われ、国の特別天然記念物にも指定されているカモシカだが、最近では個体数を増やしつつあるのが全国的な傾向のようだ。
川場村ではどうなのだろうか。
遭遇の回数など、経験的には全国と同様の傾向にあるように思えるが、もう少し調査を続行したい。

写真上:20081111(自動撮影装置・後山) 写真下:20081212(自動撮影装置・後山)

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2009年1月 7日 (水)

自動撮影の記録(友好の森)

20090107jidousatuei

2008年12月6日から22日までの間に、友好の森で記録されたのは写真の4種類。
タヌキ(左上)、ノウサギ(右上)、テン(左下)、ニホンジカ(右下)だ。

8月上旬から稼働させている自動撮影装置だが、ノウサギが初めて記録されたのが10月に入ってからで、その後はすっかり常連になっている。
動物の種類毎に季節変動があるのだろうか。
これからの本格的な冬期間と、その後の春から夏にかけての記録が揃えば、ある程度の傾向を見ることができると思う。

雪が苦手なニホンジカとイノシシの動きも注意していきたい。

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2008年12月23日 (火)

牙かけ

20081223inosisinosainn 写真は、先月末に大学生たちと見つけたイノシシの“牙かけ”跡。

イノシシは、常に水が溜まってぐちゃぐちゃの泥地で転げ回り、躰に泥を塗りたくる性質を持っている。
泥を塗るのと同時に、皮膚についた寄生虫を落としたりという効果もあると考えられている。
この行動を“ヌタうち”という。

“ヌタうち”をしたイノシシは、泥だらけの躰で松の木のもとに出かけ、幹の根元を牙でバリバリゴリゴリとひっかく。
傷ついた箇所から滲み出る松ヤニを躰に塗りつけるためだ。

“牙かけ”と呼ばれるこの行為は、ダニなどを落とすばかりではなく、泥と松ヤニで体毛を固めるためだと云われている。

ベテランの猟師は、この“牙かけ”跡を見ただけで獲物の大きさや年齢、体重などをぴたりと当てるという。

写真のアカマツは、長年に亘って“牙かけ”が行われたのかもしれない。
既に枯死し、ヤニは出なくなっていた。
こうして立ち枯れた樹木にはカミキリムシなどの仲間が取り付くだろうし、フクロウやムササビの巣がつくられるかもしれない。
やがて倒伏してからは、クワガタやカブトムシが産卵に訪れるだろう。

“牙かけ”も森林(やま)のサイクルの一つである。

20081130 イノシシの牙かけ跡(中野地区)
RICOH GR DIGITALⅡ

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2008年12月18日 (木)

中間発表

20081218shuukei   

村内に仕掛けた自動撮影装置の内、ある1台による記録の中間発表。
それぞれの画像は《自動撮影の記録》からご覧戴きたい。
多数のカットの中から、種レベルの同定ができたものだけを集計した。

8月9日から12月5日にかけてのほぼ4ヶ月間に記録することができた哺乳動物は、上の図中に示した10種類。
個体識別はむずかしいので、個体数は不明である。
総カット数は121。
最も多く記録されたのがタヌキで56カット。
イノシシの22カット、テンの11カットがこれに続く。
1度しか記録されなかったのが、アナグマとホンドリスだ。

まだ4ヶ月にしかならないため、本当に参考程度の数値だが、こうして見ると、どの動物も夜行性であることが分かる。

喰う側の動物も、喰われる側の動物も夜間に行動している。
夜行性の動物はおろか、モグラでさえも太陽の光がなければクル病などになってしまい生きていくことはできない。
それなのに夜間に活動するというのは、喰われる側の動物にしてみれば、敵のいない時間を狙っての活動なのだろうし、喰う側の動物にとっては、獲物のいない時間に狩りをしてもしかたがないので夜間に動くことになるのだろう。

しかし、それならば昼間に活動しても同じことのように思う。
とすると、野生動物どうしの喰う・喰われるが関係するのではなく、それ以外の、例えば人間を避けて夜行性を示しているのかもしれない。

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2008年12月15日 (月)

ついにワンコが…

20081215inu

自動撮影装置に怖れていた残念なものが写ってしまった。

遠くに小さく写っていたので見逃してしまいそうだったが、拡大してみたらワンコが…
全身が白くて、耳と胴回り、それと尾っぽの付け根が茶色い野生動物なんかいない。

少し前にネコが写ったときに、「写ってほしくない」などと書いたのがいけなかったのだろうか。

もちろん、犬が嫌いなわけではない。
けれども、川場の森林(やま)では出遭いたくない。

心ないハンターが捨てたものだろうか。
迷犬だろうか。
それとも、放し飼いの犬がはるばる散歩に来たのだろうか。
真相は闇の中だが、何れにしても無責任な飼い主に罪がある。

20081203 犬(自動撮影装置)

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2008年12月12日 (金)

自動撮影の記録

20081212jidousatuei

11月29日から12月5日の7日間で4種類の哺乳動物が記録された。
テン(左上)、ニホンジカ(右上)、イノシシ(左下)、トウホクノウサギ(右下)だ。

ニホンジカは、以前に記録されたものとは明らかに別個体だ。
以前のものは角が三又に分かれた雄の成獣だったが、今回記録されたものは、まだ角が枝分かれしない、いわゆる“ごぼう角”をもった亜成獣だ。

イノシシは、以前に記録されたものと同一個体だろうか。立派な体躯の雄の成獣だ。
やはり泥浴びの後、松ヤニを躰に塗りつけてきたようで、鎧のように固まった体毛が見える。

テンもウサギも、美しい冬毛を見せてくれている。

これからいよいよ本格的な冬季に入るが、彼らはどのような姿を見せてくれるだろうか。
後山に設置した自動撮影装置にも、着実に記録がたまりつつある。
彼らの存在を確認し、生態を見定めた上で森林(やま)をまもる術を考えていきたい。

明晩からまた川場入りだ。

20081129~20081205 自動撮影(中野地区)

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